軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

475:連戦の影響

こちらへと迫りくる魔物――スレイヴビーストの群れ。

多種多様な姿ではあるのだが、今のところ見覚えのあるものばかりであるのがせめてもの救いだ。

ある程度性質を理解している相手であるならば、例え数がいたところでそこまで苦戦するようなことは無い。

「緋真!」

「はい、物理耐性はこっちで受け持ちます!」

相変わらず物理攻撃に対して高い耐性を持つ魔物が残っているため、そちらは攻撃に魔法を付与している緋真に任せる。

こちらは、残る敵を正面から蹴散らすまでだ。

「《練命剣》、【煌命閃】」

黒く染まり切った餓狼丸の刀身にHPを注ぎ込み、黄金の輝きに染め上げる。

その威力は、恐らく公爵級の悪魔にすら通じるレベルの威力となっているだろう。

群れがこちらへと接敵するその直前、俺は強い踏み込みと共に刃を大きく振り抜いた。

斬法――剛の型、扇渉・親骨。

大きく広がった生命力の一閃は、俺へと向けて一斉に食らいつこうとした、大型の猫のような魔物を纏めて両断する。

【アダマンエッジ】によって更なる攻撃力を得た餓狼丸の、吸収限界まで強化された状態での一撃だ。

大型の魔物でもない限り、【煌命閃】の一撃に耐えられるはずもない。

正しく血の雨と呼ぶにふさわしい情景の中、俺は返す刀と共に再び前へと踏み出す。

「《奪命剣》、【咆風呪】!」

逆向きに振るった刃からは、先程とは異なり黒い風が溢れ出す。

大きく広がった《奪命剣》の一撃は、群れをまともに飲み込んで、その生命力を削り取った。

(こっちの効果には《 再生者(リジェネレイター) 》は乗らんのだったな)

《奪命剣》による回復には、《回復特性》の効果は乗るものの、《 再生者(リジェネレイター) 》は効果を及ぼさない。

こちらは自動回復系のスキルにのみ影響を及ぼすスキルなのだから、当然ではあるが。

とはいえ、餓狼丸の攻撃力が上がり切っている現状、《奪命剣》によって与えられるダメージ量は大きく、当然ながら回復量も多い。

《練命剣》で消費したHPの回復など、容易い状況だ。

「ここまで削ればスキルは要らんか、と」

斬法――柔の型、散刃。

崩れ落ちた魔物たちの隙間に潜り込むようにしながら、自ら倒れ込みつつ刃を振るう。

倒れそうになる体を前に進む勢いで保ちつつ、その動きに合わせて刃を振るうのだ。

【咆風呪】で削られた魔物たちは、既に軽く撫でてやるだけで絶命するほどに弱っている。

軽く急所を斬り裂いてやれば、それだけで魔物たちはバタバタと倒れ伏していった。

(バラバラに襲ってくればこんなことにはならんだろうに、わざわざ正面から群れで襲い掛かってくるからな……率いる奴がいないと、本当に馬鹿だなこいつら)

俺たちを襲ってくる悪魔たちの中には、現状デーモンナイトのような指揮能力を持つ悪魔は含まれていない。

当然ながら、爵位持ちの悪魔など影も形も無かった。

戦力的には少々不満ではあるのだが、ひっきりなしに追加が来るため退屈はしていない。

仲間たちはそこそこ節約に気を使いながら戦っていたが、俺はそれもあまり気にせず、常に効率的にスキルを回しながら魔物の群れを屠っている状況だ。

「あらかた片付いたが……ルミナ、追加はどうだ!」

「先ほどと同じく、来ています! 二方向から、量は変わりません!」

「やっぱり逐次投入なんだな。どっちかというと自動的な防御なのかね、これは」

どんな理由で、このような迎撃を行っているのかははっきりしていない。

予想はできるが、確証を得るための情報源が無い状況だ。

戦う分には問題ないのだが、どうもすっきりしない不透明な状況に不満は溜まる。

「ふぅ……普通のパーティなら、追加が来る前に捌き切れず、どんどん敵戦力が増えて押し潰されているでしょうね」

「そんなもんか? そこまで強い悪魔も魔物もいないだろう?」

「そりゃ、私達は攻撃力特化のフルアタッカーですし。私達ぐらい戦えるプレイヤーは皆無ではないでしょうけど、パーティ全員がそうであるところなんて他にないですよ」

呆れを交えた緋真の言葉に、成程と頷く。

このレベルの魔物を処理できるプレイヤーはそれなりにいるだろう。

しかしながら、それだけの攻撃能力を持ったプレイヤーが六人集まって、更に戦線を維持できるかと問われれば、それは確かに難しいと言わざるを得ない。

囮となる役や回復役はどうしても必要だろうし、それらが加われば殲滅速度は落ちる。

そして、相手の戦力追加に追いつけなくなり、押し潰されることになるというわけだ。

「できるんだから問題はないがな」

「ま、そうですね」

俺の言葉に、緋真は苦笑と共に頷く。

普通はできないのかもしれないが、俺たちにはそれができている。

であれば、この場は俺たちにとって都合のいい狩場だ。

敵の方から集まってきてくれるのであれば、こちらから探して回る手間が省けるというものである。

「さて、今度は群れ二つ。少し気合を入れて――」

残る敵を片付けて次の群れを出迎えよう――そう考えた瞬間、俺の耳元に電子音が響いた。

これは、フレンド機能による通話の通知だ。

視界の端に映っている連絡元はアルトリウス。

どうやら、何かしら状況に動きがあったということのようだ。

「連絡が来た。残党は適当に処理しておけ」

「近くにいる奴ぐらいは片付けてくださいよ?」

若干文句を言いながらも残敵の掃討に走り出した緋真を見送り、俺はアルトリウスとの通話を開始する。

流石に、コイツやエレノアからの連絡を無視するわけにはいかない。

わざわざ連絡を寄越したということは、それだけ重要な話ということなのだから。

「もしもし? どうした、アルトリウス?」

『はい、恐らく戦闘中だと思いますので、手短に話をしたいと思いますが……クオンさん、今は悪魔領を北上していますよね?』

「ああ、よく分かったな。と言っても、後から後から敵が追加されるようになったんで、そこで留まって狩りをしている状況だが」

『やっぱりですか。悪魔側の警戒ラインを踏み越えたようですね』

どうやら、アルトリウスはある程度状況を把握しているらしい。

まあ、把握していなかったらこんな連絡などしては来ないだろうが。

『仕組みは確定していませんが、悪魔は警戒ラインを敷いています。そこを超えたプレイヤーに対し、自動で戦力を送り込むようになっているようです』

「自動か。道理で適当すぎる戦力の割り当て方だと思ったぞ」

『近くにいる悪魔が勝手に集まってくるだけですからね。もっと北まで踏み込めばデーモンナイト等も出てくるかもしれませんが……流石に、それはリスクが高いですね』

アルトリウスの言葉に、軽く肩を竦める。

戦えないことは無いと思うが、そこまで行けば流石に苦戦する戦力となってくるだろう。

それはつまり、俺たちでも処理しきれないような物量による攻撃だ。流石に、俺たちもそこまで踏み込むつもりはない。

「で、俺たちに何か用事があるのか?」

『はい、できればそこに留まって、しばらく戦い続けてほしいです』

「……その心は?」

『クオンさんたちが長く留まり続けているせいか、周囲の監視が手薄になっています。今なら、隠密特化の斥候を潜り込ませることができるかもしれない』

今まで謎に包まれていた、悪魔領の状況。

その情報を手に入れることはこれまで殆どできていなかったが、今ならばそれが可能かもしれないということか。

それは俺にとっても朗報だ。これまで北の状況はほとんど手に入らなかったため動きづらかったが、それならば多少は方針を定めやすくなるかもしれない。

「了解した、しばらくはここで狩りを続ける。ただし――」

『ええ、情報のことは任せてください。よろしくお願いしますね』

それだけ告げると、アルトリウスはさっさと通話を終了した。

それとほぼ同時にこちらに寄ってきた猫の魔物を斬り伏せつつ、俺は小さく笑みを浮かべる。

さて、どこまで情報が割れるかは不明。状況を好転させられるほどの情報を掴めるか、それとも絶望の事実があるだけか。

何にせよ、知らなければ何の対策も立てられない。その先については、アルトリウスに期待することとしよう。