軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

383:保管庫

要塞の内部を、時折遭遇する他のプレイヤーを倒しながら進む。

基本的にはプレイヤー同士が戦闘を繰り広げている場面であり、こちらはそこに横槍を入れる立場だ。

たまに俺が戦っている所に他のプレイヤーが横槍を入れてくる場面もあったのだが、精々二度程度であった。

むしろ、俺が戦っている場面を目にするとそそくさと逃げていく連中が大半だったのだ。

しかし――

「……プレイヤーの数が増えてないか?」

確かに、エリアの収縮によって活動できる範囲はかなり狭まってきている。

そのおかげでプレイヤーの密度が高まってきていることは間違いない事実であるが、ここまで一か所に集まってくるものだろうか。

窓の外を見れば、要塞の外や中庭で戦っているいくつものプレイヤーを確認することができる。

見ればわかるが、どう考えても戦っているプレイヤーの数が多い。ある程度距離は開いているが、遠距離攻撃なら互いに横槍が入れられる程度のものだ。

最早混戦と言っても差し支えない状況だろう。

(確かにこの要塞は目立つランドマークだが……ここまで集まってくるものか?)

流石に違和感が拭い切れず、眉根を寄せる。

どう考えても、自然な展開であるとは考えづらい。何かしらのイベントが発生した結果によるものか――或いは、誰かしらの意図か。

何がどうなればこのような結果になるのか、まるで想像もつかないが、少なくとも自然な展開ではないだろう。

まあ、原因は分からないが、この状況は決してつまらないものというわけではない。むしろ、俺にとっては好ましい状況でもある。

暇を潰すには実に都合のいい戦場だ。

「覚えのある連中も来ているみたいだし、な」

中庭で戦っている、銀の鎧を纏ったプレイヤーの一団を眺めながら、ぽつりと呟く。

エリアが狭まってきている現状、残っているのは有力なプレイヤーばかりだ。

コソコソと隠れているような連中もいるだろうが、そういった連中はあまり自身を強化できてはいないだろう。

メンバーが欠けている可能性もあるし、有効な戦力であるとは言い難い。

俺が狙うとしたら、戦力が揃っている連中だ。果たしてどれだけ戦力を蓄えてきているのか、是非とも己の手で確かめてみたい。

とはいえ、そのためにもまずは準備が必要なわけだが。

(急がないといけないわけだが……本当にどこにあるんだ、保管庫)

しばらく要塞の内部を歩き回っているのだが、今のところ保管庫らしき場所は発見できていない。

一応、この内部については頭の中でマッピングを行っているため、行っていない場所については絞り込めてきているのだが、やはり時間がかかってしまうものだ。

とりあえずは、この近くにある未探索のエリアを確認し、見つからなかったらそのあと別のエリアを探索することとしよう。

先ほど倒したプレイヤーから適当にアイテムを回収しつつ、未探索のエリアへと進む。

正直、防具についてはもう十分すぎるほどに強化されている状態だし、あと手に入れる必要があるのは武器ぐらいなものだ。

尤も、防具についてもSランクなんてものは手に入ってはいないのだが。

「やっぱり、生産施設を使っているプレイヤーを襲いに行った方がいいのかねぇ」

あれはあれで、中々にリスクの高い行為であるのだが。

生産施設を使っている間はどうしても無防備になってしまうし、仲間を見張りに立たせていたとしても限度がある。

それでも上手いことタイミングを見つけてアイテムを作成できた奴だけが、強いアイテムを手に入れることができるのだ。

そのリスクを背負ってまで、戦闘能力で劣る生産職をパーティに引き入れるかどうか――それはそれで、難しい判断だろう。

だが少なくとも、それを実行できるものがいるとすればかなりの実力者であるし、その実力者が強い装備を手に入れればここまで生き残っている可能性は高い。

果たして、そんな存在がここまで来ているのかどうか――それもまた、楽しみの一つであると言えるだろう。

「そいつらが刀を使ってりゃいいんだが……あんまりいねぇんだよなぁ」

小さく呟き、嘆息を零す。

刀は耐久度の減少が早いというその性質上、使っているプレイヤーはあまり多くはない。

うちの門下生共はいるだろうが、あいつらは基本的に生産施設を使うというような考えには至らないだろう。

水蓮については話が別だろうが、あいつが扱っている武器は俺にとってはサブウェポンに過ぎないし、太刀を持っている可能性はかなり低い。

正直、他のプレイヤーからランクの高い太刀を手に入れられる可能性はかなり低いだろう。

難しい事実に眉根を寄せつつ、廊下の角を曲がり――そこでふと、気になるものが目に入った。

「お……?」

廊下の先にあったのは、やたらと豪華な装飾の入った扉であった。

あれを保管庫であると見るには華美なものに見えてしまうが、これまで見てきた扉とは明らかに見た目が異なる。

保管庫なのかどうかは分からないが、少なくともこれまでの部屋とは異なるものだろう。

いい加減探索にも時間をかけすぎているし、そろそろ正解に辿り着きたいものだ。

そう思いつつ扉に近づき確認するが、鍵がかかっていて入れない状態だ。

「ふむ、これはこれは……」

ひょっとするかと思い、アイテムから保管庫の鍵を取り出す。

そして物は試しにと差し込んでみれば、意外にも扉はあっさりと開いたのだった。

どうやら、ここが保管庫で間違いなかったらしい。

「武器の保管庫っていうか、宝物庫みたいな見た目だな……まあいいか」

何はともあれ、目的地に到着した。

どうやら未探索のようであるし、中のものはまとめて接収させて貰うとしよう。

思わぬ幸運に感謝しながら、俺は保管庫の扉を押し開いたのだった。

* * * * *

「はぁ……本当に、ここまで苦労させられるとは思いませんでした。流石は、師範が戦場を共にされた方ということか」

「おーいおい、こっちは仲間二人が倒れて、敗戦寸前の木っ端者だぜ? そこまで警戒しなくてもいいだろうよ」

「よく言う。あれだけ大量のプレイヤーを誘導していたというのに」

森の中、一人のプレイヤーをパーティで包囲し、水蓮は目を細めながら告げる。

彼がここまで追い詰めてきた相手はSergeant、クオンからは軍曹と呼ばれるプレイヤーであった。

水蓮は、この人物がクオンとは旧知の中であり、そして戦場を共にするほどの実力者であることを理解している。

故に、一人を相手にしても決して油断することはなく、こうして包囲しているのだ。

しかし、この絶体絶命の状況でもなお、Sergeantは不敵な表情を崩してはいなかった。

そのことに更に警戒を強めながら、水蓮は彼へと向けて告げる。

「貴方は、遠距離からの狙撃攻撃によって、多数のプレイヤーをあの場所へと誘導している。現状生き残っているプレイヤーの大半はあそこに集まってきているでしょう」

「ま、誘導のはずがお前さんらには居場所を割り出されちまったわけだがな」

そう呟き、Sergeantは肩を竦めて嘆息する。

水蓮の言葉の通り、Sergeantは魔導銃による狙撃によって、多数のプレイヤーの動きを誘導してきたのだ。

それによって、今現在多数のプレイヤーが要塞へと向かって移動している。

――そう、クオンが今現在探索している砦へと。

「……貴方は何を考えている。まさか、あの程度の雑兵で師範を倒そうなどと?」

「それで隙ができれば御の字、って所だったが……まあ、こうして見つかっちまった以上は仕方ねぇさ。後は観客席で眺めておくかね」

多数のプレイヤーをクオンにけしかけ、その隙を突くつもりであったとSergeantは告げる。

それが事実であるかどうかを見極めようと水蓮は目を細めるが、老獪な策士はその程度で真意を示すほど経験が浅いわけではない。

軽く溜め息を零し――水蓮は、改めて短刀を構え直した。

「何にせよ、貴方を討つという勝負は私の勝ちのようだ」

「何も 久遠神通流の師範代(セミマスターズ) 二人で俺に当たらんでもいいだろう?」

「二人がかりではありませんよ。どちらが先に仕留め切れるかの勝負です」

「そのようだな。どうやら、もう片方も近くに来ているようだ」

ガサガサと響く音は、幾人かがこの森の中を移動してきていることを示している。

その音の主は巌――久遠神通流の打法が師範代であった。

水蓮と巌は同じパーティではなく、それどころか顔を合わせた瞬間に戦闘を開始していたのだが、そこに横槍を入れたのがSergeantだったのである。

その瞬間に両名は一時休戦、こうしてどちらが先に犯人を仕留めるかの勝負へと置き換わっていたのだ。

「ところでお前さん、俺のことをシェラート……ソウの奴から聞いていたのか?」

「ええ。具体的な話を聞いていたわけではありませんが」

「成程、そういうことか。ま、詳しく聞いておくべきだったな」

その言葉と未だ消えることのない不敵な笑みに、水蓮は眉根を寄せて問いかけようとする。

――周囲一帯を巻き込み、巨大な爆発が発生したのは、その直後のことであった。