軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

321:決戦の前に

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『伯爵級悪魔ゼオンガレオスを倒し、アドミス聖王国北の都市アファルドを解放しました。以降、石碑の効果を使用できます』

敵を倒し切ったことを確認し、深く息を吐き出す。

戦いを優位に進められていたことは間違いなく事実だ。だが、今回の戦いは本当に紙一重であったことも、また否定はできないだろう。

もしもあのまま、ゼオンガレオスを好きに暴れさせていたとしたら、果たして勝てていたかどうか。

時間をかければ勝てていたかもしれないが、その間にプレイヤー側の被害は甚大なものとなっていただろう。

限界まで被害を抑えることができた理由は、最早疑問を抱く余地もない。

「パルジファル、今回はお前さんがMVPだな」

「っ……いえ、皆に支えられたからこそです」

「生中な連中では支えられても崩れていただろうさ。あれに勝ったのは間違いなくお前さんの功績だよ」

荒い呼吸を整えているパルジファルに声をかければ、彼女は恐縮した様子で頭を下げてきた。

これは決してお世辞などではなく、本心から思っている言葉である。

彼女がゼオンガレオスを引き付けていたからこそ、俺たちはあの膨大な体力を削り取ることができたのだ。

俺もそれなりにダメージを与えていたとは思うが、彼女の功績には及ぶべくもないだろう。

『――アドミス聖王国八大都市の解放に成功しました』

「お?」

「これは……」

これまでの都市で聞き慣れた、都市解放のアナウンスではない。

となると、ここで伝えてくるのは、その先の情報となるだろう。

即ち――聖都シャンドラに構える、公爵級悪魔ディーンクラッドとの戦いについてだ。

『全ての都市解放完了により、条件を達成しました。ワールドクエスト《人よ、祈りと共に輝きを示せ》が開始されます』

「ワールドクエスト……!」

「クエスト内容が更新されていますね」

パルジファルの言う通り、メニューからクエストの情報を確認してみれば、そこには新たなワールドクエストの情報が記載されていた。

目標は公爵級悪魔ディーンクラッドの討伐、期間は想定されていた通り、残り少ない。

どうやら、このクエスト自体はその期間が過ぎれば失敗の扱いとなってしまうらしい。

まあ以前の話を聞く限りでは、この期間はあくまでも奴が十全な力を取り戻すまでの時間だったはず。

その間の討伐に失敗すれば、完全な状態の奴を迎撃するクエストになるということだろう。

果たして、その状態で勝ち目があるのかどうかは分からないが――今回のクエストで倒し切ってしまえば済む話だ。

そのために、俺たちはここまで積み重ねてきたのだから。

「……まあ、この条件なら予定は変わらんな。とりあえず、石碑の解放をするか」

俺たちは予定通り、明日ディーンクラッドへと挑む。

泣いても笑っても、それが最初で最後のチャンスだ。

必ずや奴を仕留める――その決意と共に、俺は石碑の解放へと向かったのだった。

* * * * *

「……珍しいな。お前が、こうして話をしようなんて」

「そうでしょうか? 時々、内緒話はしていたと思いますけど」

「余人を排して、ってのはこれが初めてだと思うがな」

都市を解放し、俺たちは本拠地としている南の都市へと戻った。

最早準備は完了しており、後は残りの時間で少しでも強化するか、或いは英気を養うかと考えていた所である。

アルトリウスが一対一で話をしようと持ち掛けてきたのは、そんな折であった。

例の件については、こちらには緋真やアリスが一緒にいたし、アルトリウスについてはそもそも一人で行動している所を見た覚えがない。

今ではある程度腹の内を曝け出してはいるが、秘密主義であることに変わりはないだろう。

そんな俺の指摘に対し、アルトリウスは苦笑と共に声を上げた。

「中々、難しい立場なんです。しがらみと言うか……」

「今となっては、納得できる話だ。爺さんの言いつけ、って奴か?」

「言いつけ、ですか……どちらかというと、使命と表現した方が正しいと思います」

俺の問いに対し、アルトリウスは中々に固い表現で返答した。

使命か。確かに、コイツの背負っているものは使命と表現して差し支えないだろう。

俺たちの住まう世界と、このゲームの世界の真実。そして、俺たちの未来について。

一人に背負わせるには、あまりにも重すぎる使命だ。

「僕は……生まれた時から、奴らと戦うことを運命づけられていました。それが、僕たち一族の使命であると」

「そう、お前の爺さんに言われたのか?」

「お爺様は、むしろ申し訳なさそうにしていましたけどね。あんなものを生んでしまったことを」

確かに、MALICEが生まれたことの間接的な原因は逢ヶ崎竜一郎にあるだろう。

マレウス・チェンバレンを止めることができていれば、このような事態にはなっていないのだから。

だが、アルトリウスの声の中には、己が祖父に対する恨みの念は無い。むしろ、強い敬意を抱いている様子であった。

「僕自身、戦い続ける運命にあると……そう、覚悟していました。だからこそ……僕にとって貴方は英雄なんです、クオンさん」

「あん? ……俺たちの世界での、戦いのことか?」

「僕が戦場に出るよりも早く、貴方と貴方のお爺様は、戦いを終わらせてくれた。僕らの世界に、平和をもたらしてくれた。貴方は、紛れもなく救世の英雄だ」

「止めろ、柄でもない」

「はは、そう言うと思っていました」

顔を顰める俺に対し、アルトリウスは朗らかに笑う。

どうやら、今の呼称を繰り返すつもりは無いようだが、考えを変える気も待たないらしい。

確かに、アルトリウスの立場からすれば、俺は戦場に出る機会を失わせた存在となるのだろう。

しかしながら、彼はそれに対して感謝の意を示していた。

「いずれ限界が来ることは分かっていました。けれど、束の間の平穏と、この戦いに向けた準備。それができただけでも、僕たちにとっては大きな前進でした」

「……成程な」

彼が俺たちに対してどう思っているかはともかくとして、俺たちが《 払暁の光(デイブレイク) 》を倒したことは、移住計画においても大きな意味があったということだろう。

全くもって、因果とはどのように繋がっているか分からないものだ。

「そして……貴方という存在があったからこそ、僕は覚悟を決めることができた。人類の未来を背負うなんて、そんな大それたことを……胸を張って言えるようになりました」

「人の未来のため、か」

「僕はそうあるべく生まれ、育ち……そして、貴方を知って決意を抱いた。必ず悪魔を排し、僕らの生きる未来を手に入れる」

最初にアルトリウスを見た時、こいつは戦う人間であると直感的に理解した。

だが、これほどまでに強い決意を抱いていたとは、俺も考えてはいなかった。

窓際の席に座り、逆光を浴びながら、アルトリウスは淡く笑う。燃えるような輝きを、その瞳の内に宿して。

「だから……僕は改めて、貴方にお願いしたい。僕の英雄よ」

芝居がかった調子で、アルトリウスはそう口にする。

英雄という唾棄すべき言葉は――しかし、今ばかりは、すんなりと受け入れることができた。

この男に認められるのであれば、それも悪くないと……そう思えてしまったのだ。

「どうか、僕と共に戦って下さい。僕たちの生きる、未来のために」

そう言って、アルトリウスは手を差し出す。

これまでの秘密主義をすべて捨てた、本心からの言葉。

虚飾など何もない、本当のアルトリウスを前にして――俺もまた、笑みと共にその手を取った。

「勿論だ、 戦友(とも) よ」

アルトリウスは大きく目を見開き――そして、破顔する。

互いに握手を交わし、決意を固める。明日の戦い、必ずや人類に勝利をもたらそう、と。