軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160:響き渡る咆哮

三体並んだ大型の獅子、アルグマインレーヴェ。

こいつら――というよりもこのライオンの種族どもの厄介な点は、互いに隙を埋めるように連携をこなす点だ。

単体の魔物としては、正直それほど強くはない。このアルグマインレーヴェすら、苦戦するような相手ではなかった。

だが、これが二頭以上が同時に相手になると話は変わってくる。

どうやらこのライオン共は、数が多ければ多いほど互いのステータスを向上させる能力を持っているようだ。

振り下ろされた前足を回避しつつ、全体の動きを見極めながら舌打ちする。

「厄介と言うべきか、他に変な能力を持っていなくて良かったと言うべきか……」

鬣を靡かせながら突っ込んできた一頭を回避し、強く地を蹴る。

瞬間、もう一頭の開いた大口が、俺が一瞬前までいた場所で噛み合わされた。

アレに食らいつかれたらそれまでだ、絶対に捕まるわけにはいかない。

波状攻撃とまでは言わないが、さらに追撃として放たれる最後の一頭の爪。

そして、最初に攻撃を行ってきた一頭は、すぐさまこちらに追撃を行うために移動を開始している。

この連携が何とも厄介だ。数の利というものをよく理解し、それを生かした行動を取ってくる。

だが――

歩法――陽炎。

歩法にて相手を幻惑し、打点をずらす。

背後から襲い掛かってきたアルグマインレーヴェの攻撃は紙一重で回避し、俺はそれと共に右手で小太刀を抜き放った。

「――《練命剣》」

逆手に持った小太刀は黄金の光を纏い、その刃を擦れ違ったアルグマインレーヴェの足へと突き立てる。

堅い感触ではあったが、刃は見事に根元まで突き刺さり――俺は、刃を手放して再び餓狼丸へ右手を添えた。

「グァ……ッ!」

「これで起点はできたな――っと!」

足を傷つけられれば、当然動きは鈍る。

ただ浅い傷程度では意味がなかったが、刃が深々と突き刺さっていれば流石に堪えるだろう。

一匹でも動きが鈍れば、他の二匹はフォローに回る必要が出てくる。その状況であれば、対処もしやすいというものだ。

こちらが追撃するのを防ぐためか、突っ込んできた一頭を横へと跳躍して回避する。

相変わらず動きが速く、構えていなければ迎撃は難しいが――その後の追撃は無い。

「成程、そう動くか」

どうやら、傷を負った一頭をフォローすることを優先したらしい。であれば、距離の開いたもう一頭を攻撃するまでだ。

俺は即座に反転して、後方で足を止めたアルグマインレーヴェへと接近する。

歩法――縮地。

「『生奪』!」

「――――ッ!?」

振り返った瞬間に俺が眼前に迫っていたからだろう、アルグマインレーヴェは驚愕した様子で僅かに硬直する。

背後からは止めようと接近してくるもう一頭の気配を感じるため、あまり足を止めることはできない。

であれば、この交錯は一瞬で済ませるまでだ。

斬法――剛の型、鐘楼。

篭手を蹴り上げる神速の斬り上げ。その一撃にて、正面のアルグマインレーヴェの右目を斬り裂く。

そのまま失墜へと繋げたい所ではあるが、それを放っている内に後ろのライオンに追いつかれてしまうだろう。

残念だがここは諦め、俺はアルグマインレーヴェの横へと移動する。

すぐ傍を移動したため、後ろから迫ってきていた方は衝突を避けるために足を止めたようだ。

そして、目を潰されたアルグマインレーヴェは視界の半分を潰され、こちらも動きが鈍った状態だ。

「――『生奪』」

斬法――柔の型、射抜。

ならばと、その胴に切っ先を向け、思い切り刃を突き入れる。その一撃で、アルグマインレーヴェのHPは目に見えて減少することとなった。

強靭な筋肉を貫通して臓腑を抉った刃に、捻りを加えて引き抜く。

噴出する血を横目にアルグマインレーヴェの横を通り過ぎ、刃を構えながら後ろを確認して――こちらへと向かってくる足にダメージを追ったライオンの姿を目にした。

どうやらこちらのフォローのために無理を押して動いたようだが――

「時間切れだ」

にやりと笑いながらそう告げた直後、横からの突進を受けたアルグマインレーヴェは、弾き飛ばされて横倒しに倒れることとなった。

それを行ったのは他でもない、グルーラントレーヴェを倒し終えてこちらへと向かってきたセイランだ。

突進を受けた雄ライオンへと、セイランは容赦なくその剛腕を振り下ろす。

腹へと一撃を受けたアルグマインレーヴェは悲鳴にも似た呻き声を上げ――その首筋に、セイランの背中の上から跳躍したアリスが刃を突き立てた。

「……よい、しょっと」

そして体重をかけ、強引に首を引き裂く。

夥しい量の血が溢れるが、驚いたことにまだアルグマインレーヴェのHPは尽きていないようだ。

だが、もがくように動いているアルグマインレーヴェももう限界に近いだろう。そちらは放置しても問題はない。

「《術理装填》、《スペルチャージ》【フレイムストライク】」

「光よッ!」

そして、もう一体の無傷だったアルグマインレーヴェに対し、緋真とルミナが襲い掛かる。

二人の炎と光を宿す刀は空中に尾を引きながら、俺に注意を向けていたアルグマインレーヴェへと叩き付けられた。

このライオン共は元々、防御力そのものは大したことはない。

魔法によってブーストされた二人の攻撃は、アルグマインレーヴェのHPを大きく削り取っていた。

さて――

「後はお前だな」

「ガアアアアアッ!」

斬法――柔の型、流水・浮羽。

横薙ぎに振るわれたアルグマインレーヴェの腕に刃を合わせる。

その勢いに乗って後方へと移動した俺は、相手の脇腹へと右の拳を押し当てた。

打法――寸哮。

地面が陥没するほどの衝撃が、アルグマインレーヴェの傷ついた内臓へと叩き付けられる。

既に致命傷に近い傷であったはずだが、よく耐えるものだ。

体が揺れ、穿っていた傷から更に血が噴き出す。その様を見届けながら、相手が硬直しているその隙に、大きく旋回させた一閃をアルグマインレーヴェへと叩き付けた。

「『生奪』」

斬法――剛の型、輪旋。

弧を描いた一閃は遠心力を伴って、アルグマインレーヴェの胴へと食い込む。

刃は深くその身を斬り裂き、水風船が弾けるように、中に溜まっていた血と臓物の欠片が地面へと吐き出された。

アルグマインレーヴェはぐらりと体を揺らし――けれど、大きく足を開いて体を支える。

HPはそれほど高くはなかった認識なのだが、こいつらは随分と粘るものだ。

それが仲間の為であるというのであれば、実に天晴れなものであるが――

「だが、ここまでだ――『生奪』」

八相の構えより刃を振るう。

二色の螺旋を纏う刃はライオンの首筋へと吸い込まれ、その首を半ばまで断ち斬っていた。

既に瀕死であった所に急所への一撃を受け、アルグマインレーヴェはついにその場に倒れる。

そのHPが完全に尽きていることを確認し、俺は残る二体の方へと向き直った。

アリスとセイランが攻撃を加えていた方については、既に事切れているようだ。

残る一頭については、緋真とルミナが息も吐かせぬ猛攻を叩き込んでいる。

「ほう……良い動きだな」

その連携は、俺としても目を見張るものがあった。

身軽で機動力に優れるルミナはアルグマインレーヴェの正面に陣取り、攻撃を回避しながら着実に刃を振るっている。

対し、一撃の威力が高い緋真はその隙を突いて行動、相手の足を潰しつつ、ルミナに届きそうな攻撃を打ち落としていた。

目まぐるしく立ち位置が入れ替わる二人に、アルグマインレーヴェは翻弄されたままみるみるHPを削られてゆく。

そして――

「ルミナちゃん!」

「はい、緋真姉様!」

二人は同時に刃に宿していた魔法を炸裂させ、アルグマインレーヴェの視界を奪う。

顔面を焼かれて大きく怯んだアルグマインレーヴェは、肉薄した二人の気配に気づけない。

そして、そんな隙を逃す筈もなく、二人の穿牙は確実にアルグマインレーヴェの首を穿っていた。

交差するように突き刺さった二人の刃。貫通しているその刀を握り直した二人は、そのまま強引に振り切るように刃を抜き放っていた。

両側の首筋から血煙を吐き出して、アルグマインレーヴェは崩れ落ちる。

全てのライオンをようやく片付けることに成功し、俺は深く息を吐き出した。

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《インファイト》のスキルレベルが上昇しました』

とりあえず、これでグルーラントレーヴェ100頭目の群れも戦闘終了だ。

今の所カイザーレーヴェの姿はないが、倒し続けていれば敵の陣容が変化することは分かった。

とりあえず、このまま続けていきさえすれば何かしらの変化は――

「――――ッ!?」

「なんっ!?」

――刹那、周囲に満ちた殺気に、俺と緋真は思わず眼を見開いた。

これまでの魔物の比ではない、押し潰されそうなほどの圧倒的な殺意。

それが発せられている方向へと視線を向け、俺たちは揃って息を飲んだ。

そこにいたのは、高さ3メートルにも達しようかというほどの、巨大な獅子。

威風堂々たる佇まいで俺たちを睥睨するその姿は、これまでの魔物とは格が違うという事実を如実に伝えていた。

■カイザーレーヴェ

種別:動物・魔物

レベル:48

状態:アクティブ

属性:???

戦闘位置:???

それは紛れもなく、探し求めていた魔物。

餓狼丸を次なる段階へと強化する為に必要な素材を持つ、この草原の主――覇獅子、カイザーレーヴェ。

「出やがったか……!」

「マジですか……」

俺は口元を笑みに歪め、対照的に緋真は頬を引き攣らせる。

まあ、その反応を問答している暇はない。何しろ、ここからが本番なのだ。

「全員、構えろ。全力だ、出し惜しみは無しで行け」

「……了解です、やってやりますよ」

「私、チャンスが来るまで隠れてるわよ。あれとやり合うのはごめんだわ」

覚悟を決めたらしい緋真と、珍しく固い表情をしているアリス。二人の言葉に、俺は笑みと共に頷く。

やれることを最大限にやればいい、他に求めることは何もない。

――さあ、開戦だ。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「くっ、はははははははははッ!」

地を揺らすほどの咆哮を発するカイザーレーヴェ。

その砕け散りそうなほどの威嚇に、俺は真正面から飛び込んだ。