軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

159:塔攻略の依頼

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《インファイト》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

ライオン共との戦いを続け、90頭目の群れまでを撃破した。

敵のHPが低いため一戦一戦はそれほど時間もかからず、中々効率は良いように思える。

尤も、一度崩れれば俺たちでも危険であることや、ここまでの移動時間を考えると、一概には言えないのだが。

ともあれ、このライオン共の相手が中々いい具合に経験を積めることは事実。

目的を達するにはもうしばし時間がかかりそうであるし、遠慮なく敵を倒していくこととしよう。

「何だか、アルファシアで猿と蜂と蟻の群れを相手にしてた時を思い出しますね……」

「あっちは延々と出てくるから面倒だったが、こっちはきっちりと数が決まっているだろ?」

「エンドレスで戦い続けることに変わりはないんですけど」

半眼でこちらを見上げてくる緋真の頭に軽くチョップを落としつつ、インベントリの溜まり具合を確かめる。

緋真が口にした、アルファシアの関所近くの稼ぎ場では、大量の素材によってインベントリを圧迫されることとなった。

とはいえ、あれは三種の魔物を相手にしていたことで、種類ごとにスタックされるインベントリが埋められてしまっただけの話だ。

今回はこのライオン共一種類だけ。上位種が出現することもあるようだが、基本的にはグルーラントレーヴェで構成されている。

こいつらの素材だけならばスタックもし易いだろうし、インベントリに困ることは無いだろう。

「次で100ですけど……どう変わりますかね?」

「カイザーレーヴェが出てくるか、或いはまだアルグマインレーヴェが出てくるのか……戦ってみればわかる話だ」

素材の回収を終わらせて、先へと進む。

できれば次でカイザーレーヴェが出現して欲しい所ではあるが、戦い始めてからまだ1時間ほどしか経っていない。

あの女王蟻と戦った時のことを考えると、もうしばらく時間がかかりそうな予感はしていた。

と――ふと耳元で響いた音に、俺は足を止める。フレンドチャットの着信音だ。

どうやら、ようやく結論が出たらしい。小さく息を吐き出しつつ、俺は通話開始のボタンを押した。

「よう、アルトリウスか。話がついたのか?」

『お疲れ様です、クオンさん。ええ、その予想の通り、他のクランとの調整ができました』

声の主は、予想した通りアルトリウスだった。

どうやら、聖火の塔の攻略について、結論が出たらしい。

――まあ、おおよその予想はしていたのだが。

「それで、俺たちはどうすればいい?」

『北東の聖火の塔、攻略をお願いします。今すぐに、という訳ではありませんが……こちらに戻ってくるまでには』

「そりゃまあ、ここまでの距離を往復するのも面倒だし、攻略してから帰るのは構わんがな。しかし、いいのか? 他クランとの調整はともかく、一度攻略した塔がもう一度悪魔に奪われるということは無いのか?」

聖火の塔は、元々人間側の存在と言える建造物だ。

一度奪われた実績がある以上、もう一度奪われないという保証もない。

奪還した直後にまた奪われてしまったら、苦労が水の泡というものだ。

しかし、通話の向こう側のアルトリウスは、小さく笑みを零しながら続けた。

『どうやら、聖火の塔は悪魔たちにとっては近づくだけで苦痛を感じるもののようです。それに、聖火をあの黒い炎に変えるにもそれなりに時間が必要になる筈だ、と』

「つまり、また奪われるにしても多少の時間は稼げるわけか」

『ヴェルンリード当人が対処するのであればともかく……彼女はそのような地道な作業をするタイプには思えませんしね』

「まあ、あの性格だからな」

そういう部分は部下の悪魔に丸投げしていそうである。

しかし、そうやって再度奪われることも踏まえて塔を攻略しようということは――

「……俺たちが戻ったら、ベルゲンを攻略するつもりか?」

『ええ。と言っても、攻略作戦そのものがすぐになるわけではありませんが……まずは、前段作戦がありますので』

「そうかい。ま、戻ったら聞かせて貰うとしよう」

『では、よろしくお願いします』

アルトリウスはどこか安心したように笑い、通話を切る。

俺は軽く息を吐き出しつつ、緋真たちへと向けて口を開いた。

「アルトリウスからのお達しだ、塔を攻略しろだとよ」

「あ、やっぱりそうなったんですね」

「何て言うか、あのアルトリウスから直接依頼が飛んでくるとか、一周回って面白いわね」

大方そうなると予想していたのは緋真も同じだったらしく、特に気にした様子もなく頷いている。

一方のアリスは、有名人からの直接依頼にどこか呆れ気味の様子であった。

ともあれ、引き受けたからにはしっかりと依頼をこなすまでだ。

大方、塔の最上階には悪魔が――場合によっては爵位悪魔が待ち構えていることだろう。

ベルゲンの攻略前に、少し対悪魔の勘を取り戻しておくとしよう。

「お父様、それでは先に塔へ向かうのですか?」

「いや、それよりも先にカイザーレーヴェを探す。ライオン共を倒した数がリセットされちゃ堪らんからな」

「諦めるには惜しい数を倒してしまったしね。ここまで来たら、カイザーレーヴェを狙いたいもの……次で出てくれるのが最高なんだけど」

「どうやら、そうも行かんらしいぞ」

希望的観測を込めたアリスの言葉だったが、どうやらそれは叶わなかったらしい。

遠方からこちらへと敵意を向けてくる気配。そちらへと視線を向ければ、やはりグルーラントレーヴェの姿が。

そして――その後ろに控えるのは、巨体を持つ三体の雄ライオン。

「うわ……アルグマインレーヴェが増えるんですか」

「けど、数をこなしていくごとに敵が強化されるのであれば、この先でカイザーレーヴェが出現する可能性は高くなったわね」

「そうだな……さて、後ろが三体となると少々面倒だ」

アルグマインレーヴェは十分な強敵だ。

それらを同時に相手にすることは難しい。となれば――まずは、数を減らさなければなるまい。

「俺が三体を相手に時間を稼ぐ。速攻で雑魚共を片付けろ」

「ッ……分かりました、先生!」

一瞬絶句しかけた緋真は、しかし笑みと共に頷く。

それでいい。グルーラントレーヴェの横槍さえなくなれば、後は強敵が三体いるだけだ。

それならば、幾らでも対処のしようがある。

正面から向かってくるライオンの群れ。

そこへ向けて放たれるのは、足並みを揃えて放たれる範囲魔法だ。

それに合わせながら、今度は全員でライオンたちへと向けて突撃する。

俺は転倒したグルーラントレーヴェの間を抜けながら奥へ。俺を追い縋ろうとするライオンたちは、緋真たちの攻撃によって足止めされた。

向かう先にいるのは、三体のアルグマインレーヴェ。

歩法――間碧。

意識を集中させ、三体の魔物の全体を見据える。

その攻撃が届く範囲、全てを正確に見切り――その隙間となる場所へと体を滑り込ませた。

一斉に襲い掛かってきたアルグマインレーヴェであるが、その攻撃は空を切り、互いの巨体でこちらの姿を見失う。

「【スチールエッジ】、【スチールスキン】」

魔法を発動し、反転。そのまま近くにあったアルグマインレーヴェの尻へと刃を振るう。

だが、やはり《練命剣》を使っていない上に急所でもない場所では大したダメージも与えられない。

予想はできていたことであるため、特に気にすることも無くその場から身を躱し――岩を砕くような後ろ蹴りを回避する。

かなり防御力が上がっているとはいえ、こいつらの一撃の直撃を受ければそれまでだ。

こいつら相手には、回避を優先させなくてはならない。

「――『生奪』」

さて、それはそれとして、多少はダメージを与えなくては。

こいつらが緋真たちの方向に向かってしまっては困るのだ。

あいつらは今まさにグルーラントレーヴェを片付けている所だが、こちらに来るまでにはしばし時間がかかるだろう。

こちらの位置に気づいたアルグマインレーヴェであるが、その動きを待っているつもりは無い。

すぐさま横合いに移動した俺は、脇構えから繰り出した一閃により左手側にいたアルグマインレーヴェの脇腹を斬りつける。

痛みに呻き声を上げる雄ライオンであるが、四本足の肉食獣である以上、横方向への攻撃手段は少ない。

その場から跳躍した俺は脇腹の傷口へと足を掛けつつ、アルグマインレーヴェの背中へと駆け登った。

歩法――渡風。

ライオン共の背中を足場にして、反対側まで移動する。

その際に再発動した《練命剣》で最後の一体も斬りつけつつ、大きく跳躍した。

打法――槌脚。

無論、その際に思いきり踏みつけることも忘れないが。

そのダメージによって呻き声を上げるアルグマインレーヴェであるが、衝撃を受けたことにより動きは止まっている。

そんな巨体の傍に着地した俺は、背中を倒すように肩甲骨を押し当てた。

打法――破山。

爆ぜ割れる地面と共に衝撃が迸り、アルグマインレーヴェの体が横倒しに倒れる。

こいつらは巨体を持ってはいるが、魔法を使う訳でもなく、特殊能力は恐らく配下の強化のみ。

つまるところ、こいつらは自身の身体能力以外はあまり脅威ではないのだ。

(故に、動きづらい距離で一塊にしておくだけで行動を制限できる)

暴れればお互いを傷つけかねない距離。

そんな状況にあるからこそ、こいつらは思う存分に暴れきれずにいる。

ダメージこそあまり与えられてはいないが、注意を引くだけならこれでも十分だ。

「こっちに来るには……まだかかるか。さて、もう少しだけ付き合って貰うぞ」

破山の直撃を受けたアルグマインレーヴェだが、やはり大したダメージにはなっていないらしい。

刃を突き刺してやれば大きなダメージにはなるだろうが、こちらも足を止める訳にはいかないのだ。

いかに動きを止めていると言った所で、攻撃力の差は如何ともしがたい。

あまりHPを捧げ過ぎぬよう注意しながらも、俺は前へと踏み出した。