軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

私は、アズール様と手を繋いで歩きながら考える。

政治的に見れば、私のこの能力を他国に知られないように、隠し、早々に結婚し、王国に縛り付けるべきだ。

私でもわかる簡単なこと。

けれど、アズール様はわたしのことを第一に考えてくれている……。

本当は、城の外に出ずに過ごしていた方が安全であるし、面倒もないはずだ。

それなのに、わざわざアズール様は私が一人でも出歩けるようにと、考えてくれたのだ。

きっと、私の世界を広げようとしてくれているのだと思う。

優しすぎる人だ。

「アズール様。ご無理はされないでくださいね」

「もちろん。だが、困ったことがあるんだ」

「え?」

アズール様がにっと笑って言った。

「シエルと外では手を繋げないってことだな。変な噂が立ってしまうからな!」

「まぁ! ふふふふふ」

確かに外でつないでしまったら、男同士で……。

私は、ちょっとそわそわしながらアズール様の手をぎゅっと握る。

「あの、でも、人のいないところなら、いいですか?」

「う……」

アズール様がよろめき、私は驚く。

「くそ。男装しているのに、可愛い。どうしたものか。いいか、シャルロッテ嬢。絶対に外でそんな可愛いことを言ってはダメだぞ!」

「か、可愛い? えっと、あの……」

「うう。その仕草も可愛い。ダメだ! シャルロッテ嬢、いや、シエル! 男の振舞を学ぶのだ! 可愛さは出してはダメだ!」

「は、はい!」

「……すまない。やはりどう考えても可愛い。……もしもの時は、私が提案しておいてあれなのだが、やめる道もあるやもしれん」

「期待に添えるように、頑張ります!」

アズール様の表情がころころ変わって私は笑ってしまいそうになるのをぐっと堪える。

アズール様に可愛いと言われるのは嬉しい。

これまでこんな風にほめて貰った経験があまりないので、照れてしまいそうだ。

「さぁ、男っぽく! 頑張って練習だ!」

「はい!」

私はアズール様と一緒に外へと出て、男の子っぽく振舞う練習をすることにする。

二人で歩きながら、アズール様に内またにならないように言われ、胸を張って歩く練習をする。

「いいか。言葉遣いも、あまり可愛らしくならないように」

「はい。わかりました!」

「乱雑な言葉遣いは……無理そうだな」

「すみません」

「いや、丁寧に喋る男もいる。私の弟のダリルのようにな。うむ。あんな感じのイメージで行こう」

「わかりました!」

私はアズール様の横を歩いていると、街の人々がこちらの様子に気付く。だが、私達を優しく見守ってくれている。

それが、ちょっとばかり恥ずかしい。

「シエル。さぁ、今度は食べ方だな。いいか。こう、ガッと食べるんだ」

「はい!」

アズール様が串焼きを買うと、私に手渡す。

私はアズール様の真似をしてガブリと食べた。

「ふわっ。美味しい」

「シエル……だめだ。可愛さが、出ているぞ」

「ハッ! あ、すみません。頑張ります!」

アズール様の厳しい指導の元、私は頑張って男らしく振舞えるように勉強をしたのであった。

そして、時は、最初へと戻る。

「アズール様との練習の成果! 見せるぞ!」

私は、街へと一人で一歩を踏み出したのであった。

そんな私の一人でお出かけに当たって、街の警備は増え、そして街に暮らす皆にアズール様が連絡をし、手をまわしていることなど私は全く知らなかった。

出来るだけ胸を張って歩く。

内またにならないようにする。

そしてニコリと微笑むのではなく、ニッと笑う。

完璧だ。

私はそう思いながら、一人で道を歩いていると、道に落ちていた落ち葉を掬い上げるように風が吹き抜けていった。

私はその風を感じ、息をつく。

それから周囲を見回した。

街の人々の生活がそこにはあり、皆がそれぞれで時間を過ごしていく。

私は、その景色を眺めながら、ただ道を歩いていく。

話し声、箒で掃く音、洗濯物を干す香り、にぎやかな通り。

街に来たのは初めてではないのに、不思議な感覚だった。

「あぁ。だから、アズール様は私に一人で街を歩いてほしかったのね」

誰かに気を遣うのではなく、誰のために動くのでもなく。

私が、私の為に歩き、私の目線で、私の生きたいところへと進む。

アズール様はきっと、こうした誰にも左右されない時間を、私に味わってほしかったのではないだろうか。

私は、ベンチに腰掛けて、ただ、ぼーっと街を見つめる。

こんな風に、何も考えずに風を感じ、空を見上げて雲が流れる様を見るのは、いつぶりだろうか。

「自由……か」

そう呟いた時、私の座るベンチの隣に、一人の男の人がドスンと座り、大きくため息をついた。

「暑い……シュルトンの雲はどこに行ったんだ」

「え?」

「ん?」

美しい金色の髪と瞳を持った男性は、鋭い視線でこちらを睨みつけると、ほっとするように息をついた。

「男か。女かと思った」

私はびくりとする。

見知らぬ、異国の雰囲気を纏う男性に、私は驚きながらも早々に距離を取って立ち去ろうと思った。

のだけれど。

「待て。おい小僧。お前、シュルトンの人間か?」

「は……はい」

声をかけられ、引き留められるなど、思ってもみなかったのであった。