軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22話

古い本の香りのするその部屋は、中に入ってみれば思いの外広かった。そしてアズール様が明かりをつけると、本棚が壁一面にあるのが見える。

「ここは、なんなのですか?」

そう尋ねると、アズール様は本棚の方へと歩いていき、その中から一冊の本を取り出すと私の元へと帰ってきた。

「ここは我がシュルトンの王族が管理する歴史の書庫だ。気になることがあったのだ。これを見てもらえるか」

「これは……シュルトンの歴史書ですか? かなり、古いようですが」

「建国当初のことが書いてある。読んでほしい個所があるのだ」

アズール様はそう言うと本を開き、そしてぺらぺらとめくっていくと私に差し出した。

「ここだ」

一体何が書かれているのだろうかと思い目を走らせる。

「え?」

私は目を凝らすと、前後を読み進め、それからぱらぱらとページをめくっていく。

「シュルトンでは雨を呼び、大地を守るための祭事が行われていたとある。だがいつしかそれは歴史から消え、今では祭事を行うことはない。ただ、その名残として雨祭があるくらいなのだ」

私はうなずくと同時に、不思議に思った。

「ここ、見てください」

「あぁ」

“祭事では、乙女が雨を乞い祈りを捧げる。さすれば天は応え雨をもたらし、魔物を退ける聖なる花を咲かせる”。

その文面を見て私はアズール様を見上げる。

アズール様は眉間にしわを寄せ、考え込むように顎に手を置く。

「歴史書はかなり昔に読んだだけだったので忘れていたのだ。だが、先ほどの花と君の存在とがきっかけとなり思い出したのだ」

「……これは、どういうことなのでしょうか」

私とアズール様は歴史書をぺらぺらとめくりながら、何か手掛かりはないかと調べることになった。

他の本もアズール様は調べ始め、私も調べていく。

二人でしばらくの間本とにらめっこのように過ごした時であった。

アズール様が勢いよく立ち上がると、私に本を開いて指さした。

「シャルロッテ嬢! ここを見てくれ」

指さされているところを読み、私は驚いた。

そこに乗っていたのは、シュルトンで大災害が起こったという事実であった。

そして、その災害がきっかけとなり祭事が途切れてしまったとの記述もある。

一体何が起こったのか、私とアズール様がさらにそれについて調べるていくと隣国の王がシュルトンを訪問したということが分かった。

そしてその隣国の王と揉め、一人の王族が命を失ったという、一文を見つけたのである。その後シュルトンは大災害に見舞われ、その王族はシュルトンの復興を手伝う代わりに、一人の少女を妻として迎えたと書かれている。

何が起こったのかは分からない。

関連しているのかもわからない。

ただし、その隣国というのは、リベラ王国のことであった。

大災害によってシュルトンの人口も減り、大地に異変が起こり始めたことや魔物が頻繁に渓谷から入ってくるようになったことも載っており、歴史の分岐点があったことは間違いがないだろう。

シュルトンの王族が一人死に、大災害が起きた。そして大災害後にリベラの王族は一人の少女を妻として迎え入れ連れて帰っている。

偶然なのか必然なのか。

「もしかしたら、シャルロッテ嬢はこの嫁いだ女性の血を引いているのではないだろうか」

アズール様の言葉に、私はうなずく。

そうかもしれない。

ただ、あまりにも情報が少ないために、本当にそうなのかどうかの確証はない。

アズール様は本を閉じると、大きくため息をついてからソファへとぐっと倒れるようにして座った。

そして、呟くように口を開いた。

「……渓谷の魔物の森との境目、そこに美しい虹の霧が現れたのだ。そして、それからは魔物が入ってくる数がぐっと減ったのだ。そればかりか、渓谷を通り抜ける前に嫌そうに魔物の森の方へと逃げ帰っていくようになった」

「それは」

どうして? そう思った時、アズール様が私を見て言った。

「シャルロッテ嬢、君が来てからなのだ。それから雨が降るようになり渓谷に花が咲くようになった。そして雨と花は光を放ち虹の霧を生み出す。それらは魔物を退ける壁のようになったのだ」

その言葉に、私は心臓が何故かうるさく脈打っていくのを感じた。

緊張しているのか、それとも不安なのかは分からないけれど、どこかそわそわとするようなその感覚に、私が戸惑いいを見せていると、アズール様が言った。

「不思議なものだな。ただ俺は、君が来てくれて本当に良かったと思っている」

アズール様は優しい微笑みを浮かべ、私の元へと立ち上がりやってくると、私の手を握る。

「君は我が国シュルトンに幸福をもたらす女神のようだな」

アズール様の大きな手に、手を握ってもらうと、なんだか幸せな気持ちになる。

私は笑みを返した。

「私もこの国に来れて幸せです。ふふふ。きっと神様がここへお帰り。お前の場所はここだよと、導いてくれたのでしょうね」

そう言うと、アズール様は笑い、私のことをぎゅっと抱きしめた。

「そうだといいなぁと思うよ」

「ふふふ。はい」

温かなアズール様に抱きしめられることが、当たり前になりつつあるなと、私はそう思ったのであった。