軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23話

セオドア様がこのシュルトン王国へと来ることが決まり、隣国の王族の来日に私とアズール様は準備に追われていた。

リベラ王国はシュルトン王国の友好国であり、今後も関わりが続いていく国である。

だからこそ、たとえセオドア様が他国へと婿入りする事になっても、現段階では歓待しなければならない。

私はセオドア様の好みを把握しているので、準備はそう難しいものではなかったのだけれど、やはりシュルトンはリベラとは違い、物を揃えるというだけでも一苦労であった。

私はそれと同時に街の人々に、畑を作ってみてはどうかと布教する運動を始めた。

アズール様とも話をし、シュルトンの土地を無料で貸す代わりにもし収穫があればその利益の2割を国に納めるようにとしたのである。

本当に利益は出るのか、そうした人々からの質問が集まり、私はシュルトンの広場にて庭で育てた野菜たちを並べ、話をすることにした。

シュルトンには屈強な騎士ばかりがそろう国である。そして魔物に最も近い国だからこそなのか、屈強な人々が暮らす国でもあった。

リベラ王国の首都と比べると、明らかに筋骨隆々な男性と女性が多い国なのである。

最初こそ違和感を抱かなかった私だったけれど、会う人会う人体格がよくそして力が強いということに気付いた瞬間の衝撃は結構なものであった。

「上手くいくでしょうか」

今は物流があり国は安定している。けれどもしも他国に魔物はもう出てこない、シュルトンと国交しなくても問題はないなどというようなことになれば、シュルトンは生き残っていけるかは分からない。

だからこそ、自国の生産性を高めたい。

私は、シュルトンが自国だと、自分が違和感なく思っていることに、内心驚く。

「どうしたのだ?」

アズール様は一緒に野菜を並べてくれながら私の表情を見て首をかしげる。

私は笑みを浮かべると首を横に振る。

「いいえ、なんでもないのです。ふふふ。さ、準備です! 私、頑張りますね」

「あぁ」

シュルトン王国の未来の為に、私とアズール様は野菜を一緒に並べていきそして準備が整うと、騎士達によって一時封鎖していた入り口を解放した。

すると、たくさんの人々が広場へとやってくる。

私とアズール様は壇上に上がると、人々からの視線を受けるのだが、何やら人々の視線がキラキラとして見えるので私は不思議に思った。

すると、男性に肩車されている小さな男の子が声をあげた。

「女神様だ! シュルトンの女神様が見えるよ!」

その声を皮切りに、うずうずしていたように人々が声を上げ始めた。

「シュルトンの女神に感謝を!」

「我らが女神様! シュルトンに太陽と雨をもたらしてくださった女神様に感謝を!」

「女神様! 女神様!」

「あぁぁぁ。お目にかかれるとはなんという幸運! 女神様!」

「女神様万歳! 女神様万歳!」

人々の声はどんどんと大きくなり、皆があげる声に圧倒されてしまう。

一体どういう事なのだろうかと思いアズール様を見ると困ったように頭を掻き、それから声をあげた。

「皆、鎮まれ」

低い声が、これだけの人がいると言うのによく響き、皆が声を鎮める。

私が驚いていると、アズール様が歯を見せて笑い皆に言った。

「高まる気持ちは分かる。俺も、女神が婚約者となり幸せだ!」

鎮めるのかと思いきや、煽るようなその発言、そしてこぶしを突き上げるそのポーズに私が驚いていると、皆がアズール様に触発されるようにこぶしを突き上げるものだから、シュルトン王国はある意味まとまりのある素晴らしい国だなと笑ってしまった。

「アズール様ったら」

私が笑い声をあげた瞬間、空からは美しいキラキラとした雨が降り始め、まるでその場を祝福しているかのようであった。

その光景に、今まで騒いでいた人々は驚き、空を見上げる。

私は今が話を始めるチャンスだなと思うと、声をあげた。

「皆様、しっかりと挨拶も出来ておりませんでしたが、この度アズール様の婚約者となりましたシャルロッテ・マローと申します。今回はお集まりいただきありがとうございます。私の話を聞いていただけるでしょうか?」

美しいきらめく雨の中、私がそう声をあげると、皆から歓声が上がり、そしてまた静まり返る。

私はあまりの勢いに、少し心臓がドキドキとしながら、アズール様に視線を向けた。

「私が話してもよろしいですか?」

元々、会場が話をする雰囲気であれば私が話をする予定となっていた。

アズール様が頷いたのを見て、私は皆に向かってトルトという比較的育てやすい野菜を見せながら言った。

「こちらのトルト、私が育てましたの」

こんなに大勢の目の前で話をするのは初めてだなと思いながらも、何故か緊張はしなかった。

それよりも皆に協力をしてもらいたい、このシュルトンを一緒に盛り上げてもらいたいと言う思いが強く、私は話し続けた。

人々は私の話を真剣に聞いてくれた。そして、私は言葉を続ける。

「このシュルトンを他国の援助がなくても自立し、そして栄えた国にしたいのです。不毛の王国ではなく肥沃の王国にしたいのです! その為には皆様の力が必要です。どうか、協力していただけないでしょうか」

私の言葉に、アズール様が続けて言った。

「細かな計画はこちらで話し合い書面にまとめてある。賛同するものはサインをしてほしい」

シュルトンは国交が豊かであるからこそ、文字の普及率が高い国である。それもまたこの国の強みだなと思っており、私はシュルトンがどうすれば栄えていくのか、まだまだ伸びしろがあると感じている。

「疑問や質問などは、そちらにある箱に入れてください。まとめて皆に分かるように提示していきたいと思います」

「この国が変わる時が来たのだ」

私とアズール様の声に、声が次々に上がり始めた。

「了解です! 我らはアズール様のおかげでこれまで魔物に殺されることなく生きてきたのです!」

「アズール様が言うのであれば、我らは従います!」

好意的な意見があればもちろんそれに反する意見もある。

「ですが、肥沃な土地に、本当になるのですか?」

その声に、皆が静まり返る。

不毛な土地で生きてきた。これまで不毛な土地が肥沃になるなど想像もしていなかった。

無理ではないか。

皆が心のどこかでそう思っているのであろう。だからこそ、私は取ってきた野菜たちを、ここに並べたのである。

「不毛な土地で、このように美しい野菜が育ちますか?」

どこかで買ってきた物ではないか、そんな疑問を持つ者がいるのも当然である。

私は笑顔を浮かべると、騎士達に壇上にトルトの苗木を次々に運んできてもらう。

トルトは誰でも簡単に育てられる植物である。ただし、そんなトルトであってもシュルトンの不毛の大地では育つことが出来なかった。

だからこそ、トルトの苗木を私は用意したのだ。

「このトルトを各自で育ててみてくださいませ。トルトは太陽の光と水さえしっかりと与えれば簡単に育てることのできる植物です。どうです? これを育ててみて、出来ると思ったら協力してもらえませんか?」

まずは一歩、このトルトの苗木を育ててもらうことで一歩を踏み出してほしい。

私がそう提案すると、一人、また一人と手が上がった。

「育ててみたいです!」

「俺も!」

声は次々にあがり、その場に用意していたトルトはすべてなくなった。

ここから、トルトが育つまでの間、私達はどう畑を分けるか、どのように進めていくかを王城で話し合っていく予定である。

現在皆仕事がある。それは分かっている為、あくまでも最初は仕事の合間に出来る、育てやすい物をと考えられている。

今まさにシュルトンが変わる時である。

私とアズール様は盛り上がる民を見つめながら、手を握り合い、これからの未来に笑みを浮かべたのであった。