軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盲点

「フォンターナ連合王国はフォンターナ王国を中心としていくつかの国があります。フォンターナ王を中心としつつも、天空王やドーレン王などといった複数の王が存在する統治体制をとっています。けれど、そこには与しない勢力もまた存在しました。それが、大貴族と呼ばれていたメメント家です」

西で起こったメメント大戦。

そのことについて、アイに話を聞いていく。

まずは、全体の簡単なおさらいとでもいうのか、フォンターナ連合王国について話し始めた。

だけど、さすがにその程度のことは知っている。

「昔はドーレン王国だけだったんだよね? それが、ドーレン王家の力が弱まって、各貴族が独自に動き出した。で、長いこと国が乱れていたけど、フォンターナ家が新たな王家となって国を作り、そして連合王国を作った。それの一番大きな役割をはたしたのが、アルス兄さんたちだったんだよね?」

「そのとおりです。その結果、バルカ家当主のアルス・バルカ様は天空王となり、天空王国を作りました。ただ、アルス・バルカ様はご自分の国を持った途端にそれ以外の仕事をすべて放り出したのです。そのため、地上では残された者たちによる統治が行われることとなりました」

どうやら、アイの目から見てもアルス兄さんの行動は仕事を放りだしたということになるらしい。

まあ、そうだろう。

いきなり鎖国なんてして、外界との接触を断ったんだから。

普通ならばそんなことをしたら、主家であるフォンターナ王家から怒られるはずだ。

最悪、軍を差し向けられてもおかしくはない。

が、もちろんそうはなっていない。

フォンターナ連合王国を建国するまでの過程でアルス兄さんの働きが大きかったからだ。

むしろ、そんな大きな存在が隠居したと喜んでいる者も結構いたらしい。

「たしか、それで内部での主導権争いが激しくなったんだっけ?」

「そのような意見もあります。とくに、ドーレン王家に忠誠を誓った貴族家や騎士家は内部での争いも頻発していました。そのため、フォンターナ連合王国ではひとまず内部の統制をとることを優先していたのですが、そこでメメント家に動きがあったのです」

「メメント家か。俺はその家の者と誰とも会ったことないけど、確か強い風の魔法を持っている貴族家だよね。領地はドーレン王都よりも東の大雪山寄りのところにあったんじゃなかったっけ?」

「そのとおりです。メメント家の当主級の魔法は【竜巻】というもので、複数人で呪文を唱えることで威力を増す効果があります。おもに拠点攻撃などで多大な戦果を上げることができると評価されている魔法です」

「みたいだね。けど、それは昔の話じゃないの? メメント家は一度ドーレン王都を占領したことがあったけど、そこから追い出されてからは勢力が弱まったはずだ。それで、当主級の数は減っちゃって、その分だけ【竜巻】も強さを失うことになるんじゃないの?」

「はい。ですので、フォンターナ連合王国はゆっくりと領地を奪い取っていけばいいと考えていました。ですが、そこから一気に反撃があったのです。いくつもの貴族領がメメント家に攻撃を受けて、そして大きな被害が出ることとなりました」

へえ。

どうやったんだろうか。

けど、確かにメメント家がフォンターナ連合王国のどこかの領地に攻撃を仕掛けたという話は結構前に聞いた気がする。

もしも、メメント家が本当に弱くなっていたんだったら、その時にすぐつぶされていたはずだ。

だけど、そうはならなかった。

ということは、よっぽどうまく戦ったのか、それとも強さを取り戻す何らかの方法があったのか……。

「って、そうだった。この話はヴァルキリーのことから始まったんだね。ってことは、もしかしてメメント家の強さの秘訣にヴァルキリーが関わってきているってことになるのか」

「そのとおりです。メメント家はヴァルキリーの量産に成功したのです。王都を占領していた際に黄金鶏を手に入れていたのが原因ではないかと言われています」

そうか。

黄金鶏があったか。

ヴァルキリーをはじめとした使役獣は全て貴重だ。

だが、そのなかで一番どの使役獣が重要になるかと言えば黄金鶏以外にはいないと思う。

だって、黄金鶏がいなければ使役獣の卵は増えないんだから。

これは、アルス兄さんが何年も何年も研究させて、結局はついに【産卵】の魔法を持つ使役獣を生み出せなかったことからもわかる。

まあ、アルス兄さんはそれを解決できなかった代わりに、黄金鶏を手に入れたことで使役獣の卵を安定的に入手できるようになったみたいだけど。

だけど、それはアルス兄さんだけじゃなかったということなんだろう。

もともとはドーレン王都の近くに領地を持つ貴族が黄金鶏という不思議な使役獣を持っていたんだ。

そして、使役獣の卵を各地に売っても、絶対に卵を産む黄金鶏だけはよそには出さなかった。

それをメメント家は王都を占領していた時に手にしていた。

で、王都から追い出されたときにも黄金鶏だけはしっかり持って帰った、と。

なるほどな。

多分、黄金鶏は最初そんなに多くは持ち帰れなかったのかもしれない。

けれど、しばらくは時間をかけて使役獣の卵を増やし、そして、そこから黄金鶏の数を増やしていったんだろう。

フォンターナ連合王国に反撃するために、戦で使える騎乗型の使役獣を手に入れるために。

そして、そこで気が付いたのかもしれない。

ヴァルキリーがたとえ角なしであっても使役獣の卵から増やせるということに。

これは、言われてみればすごく簡単な話のように思える。

角を切って魔法を使えなくしても、ヴァルキリーの体にはヴァルキリーの魔力がある。

だから、【魔力注入】という魔法を使えなくとも、ヴァルキリーの体に常に使役獣の卵を引っ付けておけば、その魔力を卵が勝手に吸い取ってくれるのだ。

人間だってそうだ。

【魔力注入】という魔法があれば便利だけど、別になくても使役獣の卵は孵化させられるのだから。

だけど、今までは誰もそのことに気が付かなかった。

というのも、これはヴァルキリーや黄金鶏が例外だったからだ。

使役獣の卵は吸い取った魔力によって生まれてくる使役獣が違ってしまう。

そして、普通は使役獣に卵を産ませようとしてもうまくいかないのだ。

たとえば、においをたどる能力がすごい追尾鳥だが、こいつに使役獣の卵を与えても追尾鳥が生まれてくるわけではない。

追尾鳥だけじゃなく、ほかのどんな使役獣だってそうなのだ。

あくまでも、ヴァルキリーのように使役獣の魔力だけで同じ種の使役獣を増やせるほうがおかしいのだから。

だからこそ、それまでも角切りヴァルキリーは商人たちにも売りに出されていたのに、他で量産されることはなかった。

だが、メメント家は黄金鶏というもっともかわった使役獣をその目で見たことで、今まで誰もが考え付かなかったことを試してしまったのだろう。

角がなく、魔法を使えないヴァルキリーに使役獣の卵を与えて孵化させてみるということを。

そして、それは成功してしまった。

当然、生まれてくるのは角ありだ。

こうして、かつて覇権に手が届き、けれど大きく勢力を落としてしまったメメント家は新たな力を手に入れたわけだ。

そこらの当主級などよりもはるかに強く、多種多様な魔法を使えるうえに、人間の言うことには何でも従う最強の使役獣を手に入れて、ふたたび大きく動き出したのだった。