軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ワルキューレと卵

「うーん。誕生直後の食べるものって、あんまり関係ないのかな?」

「どうでしょうか。現状では検証不足です。引き続き、さまざまなものを与えてみて情報を集めることを推奨します」

「アイの言うとおりかも。これだけじゃ、情報を確定するのは無理か。わかった。次生まれてくる子たちには、いろんなものを試していってみよう」

新バルカ街にある俺の家。

そこにある厩舎にて、ワルキューレたちを見ながらアイと話していた。

厩舎にはワルキューレたちがいる。

真っ赤な毛並みの俺の使役獣だが、生まれてしばらくするとあっという間に大人になってしまっていた。

相変わらず成長が早い。

人間ならば十年たっても子ども扱いされるのに、たった十日ほどで大人になれるのだから。

そんな成獣となったワルキューレだが、最初に俺が孵化したワルキューレと比べると体つきがちょっとだけ小さいみたいだ。

これは、俺ではなくワルキューレ自身が使役獣の卵に魔力を与えたからなのかもしれない。

アイが言うにはヴァルキリーもそうだったみたいで、アルス兄さんが自分の魔力で育てたものよりもヴァルキリーの魔力だけで孵化した個体は小さめになるらしい。

まあ、それでも騎乗できるし角があれば魔法は使えるので、天空王国では卵の孵化はほとんどヴァルキリー任せになっているとのことだ。

やっぱり、俺とアルス兄さんの魔力はそっくりなんだろう。

普通はどんなにそっくりな家族でも、その人の魔力によって生まれてくる使役獣は全然違うものになるはず。

ただ、俺とアルス兄さんは似ていても違うとはっきり言える。

それはきっとノルンの影響があるんだろう。

魔剣ノルンと血の契約を行ったことで、俺は血を操ることができるようになった。

その影響が生まれてくる使役獣に違いを与えているんだと思う。

そして、そんな俺から産まれたワルキューレだが、どうやら【共有】はしっかりと持っているみたいだ。

【共有】を持つヴァルキリーと同じく、群れ全体で魔力などを共有することができているっぽい。

今回新しく生まれたワルキューレも名付けをしていないのにも関わらず、魔法が使えるのがその証拠だ。

が、ワルキューレの【共有】はヴァルキリーの【共有】とはつながっていないらしい。

あくまでもワルキューレの中だけで魔力を【共有】しているのであって、ヴァルキリーからは切り離されている。

まあ、そんなことは今までも分かっていたけど。

もしも、ヴァルキリーとつながっているんなら、今までもワルキューレはあのカイザーヴァルキリーから魔力を【共有】して使えていただろうから。

もしそうなら、俺とは比べ物にならないくらい数多くの魔法を使えていなければおかしい。

けど、ワルキューレはそこまで魔法を多用できたりはしていなかった。

現状のワルキューレはその後、もう数頭生まれた結果、その数頭で魔力を【共有】しているらしいことが分かった。

なので、俺が初代ワルキューレに名付けして使えるようになった魔法は使えるみたいだ。

アルス兄さん由来の【整地】や【土壌改良】、【壁建築】なんかも使えるし、多分、俺の魔法の【いただきます】なんかも使っていると思う。

そして、成獣になった次世代ワルキューレたちも使役獣の卵を産めるみたいだ。

たった十日ほどで大きく成長したワルキューレがポロンと卵を産み落としている。

これは多分、黄金鶏の【産卵】と同じなのだと思う。

だが、なぜそれが使えるようになったのかはいまいちわからない。

生まれた直後に卵を食べたのが理由かと思って、新しく孵化した次のちびワルキューレにはあえて卵を食べさせないようにしてみた。

しかし、そいつも成獣となり卵を産み落としている。

ということは、すでにワルキューレの中では卵を産める【産卵】が【共有】でもされているんだろうか?

そうだったら、今後生まれてくるワルキューレは全部使役獣の卵を産めることを意味するが果たしてどうなのか。

まあ、どうしてそうなっているのかはわからないが、使役獣の卵を増やせるということはありがたい話だ。

だって、東方には黄金鶏なんてかわった生き物はいないんだし。

これさえあれば、今後もワルキューレの数を増やしていくことができる。

「ヴァルキリーの数は増やさないのですか、アルフォンス様?」

「え、どういうこと、アイ? ワルキューレじゃなくて、ヴァルキリーを増やすのか?」

「はい。ワルキューレは使役獣の卵に魔力を与えても、孵化するまでの期間が長く、二年ほど時間がかかります。たいして、ヴァルキリーであれば魔力を与えればそれよりももっと早く孵化させることが可能です。ワルキューレに【産卵】をさせ、その卵でヴァルキリーの数を増やすという選択肢も考慮に入れてもいいかと思います」

「え、けど、ここにいるヴァルキリーたちは全部角なしだよ? 角なしは魔法が使えないけど、孵化させられるのか?」

「問題ないでしょう。ヴァルキリーは角を失うことで確かに魔法行使が不可能となります。けれど、その身に存在する魔力が消滅するわけではありません。使役獣の卵があれば、角なしヴァルキリーの魔力で新たなヴァルキリーを増やすことが可能です」

「まじか。知らなかったよ」

「もっとも、その方法でヴァルキリーの数を増やすのであれば、生まれたヴァルキリーはすぐに角切りをしてください」

「あ、そうなの? 角ありヴァルキリーがいれば無茶苦茶心強いのに」

「駄目です。メメント大戦により天空王国以外で角ありヴァルキリーの所有は禁止されています」

メメント大戦か。

そういえば、ここ数年続いていた西での動乱が最近になってようやく終わったみたいだ。

フォンターナ連合王国には属していなかったメメント家という大貴族との間で戦争になっていたという。

実は、この事件のことはあんまり知らないんだよな。

なんだかんだで、こっちでの生活が楽しくて、向こうの出来事に疎くなっていた。

でも、アイの話ぶりからはヴァルキリーが関係しているみたいだし、ちょっと詳しく話を聞いておこうか。

俺は大雪山の向こう側で起こった大戦についてアイに訊ねたのだった。