軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

信用

「結局のところ信用がものをいうと思うわ」

「信用? それは魔道具のってことか、クリスティナ?」

「ええっと、そうね。魔道具全般の信用というよりは、オリエント国製の魔道具の信用、ということになるかしら?」

職人であるガリウスは、今の状況をよく思っていない。

それは、いずれ自分たちが作る魔道具が変な目で見られて評価されなくなるのではないかという心配をしているからだ。

そして、その話を商人であるクリスティナにすると、彼女もそれに同意した。

「オリエント国のって、どういうこと?」

「うーん。私も今回の件に乗ってしまった側だから自分でこんなことをいうのはちょっとどうかと思うのだけどね。けど、アルフォンス君やガリウスさんの話を聞いて、ちょっと冷静になれたと思う。そのうえで、商人としての立場から言わせてもらうと、やっぱり儲けを継続的に出すのって信用が一番大事なのよ。で、もしも、今後魔道具の値段が急激に下がるようなことがあればオリエント国製の魔道具は信用を失うことになると思う。けれど、そうじゃない魔道具もあるの。アルフォンス君ならそれがわかるんじゃないかしら?」

「難しいなぞかけみたいだね。……でも、クリスティナの言いたいことはちょっと分かったよ。ようするに、ブリリア魔導国の魔道具はそこまで信用が落ちたりしないってことだよね」

「そのとおり。私もあちこちを行商して回った経験があるからわかるのだけど、地域による信用って本当に大きいのよ。あそこの土地で作られる品は質がいい、っていう評価は一個人の力よりはるかに大きいから。その意味で言えば、魔道具作りにかけて他の国をはるかに先に進んでいるブリリア魔導国製の魔道具は、おそらくはそこまで影響を受けないんじゃないかしら」

商人としての視点から考えを話すクリスティナの言葉をゆっくりとかみしめる。

そして、それはガリウスが危惧していた内容ともぴったり合うのではないかと思った。

今後の相場の暴落で魔道具の信用が落ちる可能性があるというガリウスの言葉には裏があったのだ。

それは、オリエント国が作る魔道具だけが評価されなくなるかもしれないということだ。

東方でこれまで魔道具と言えば、ブリリア魔導国がその主役の座を不動のものとしていた。

魔道具と言えばブリリア魔導国。

そういって、異論をはさむ者は限られているだろう。

だが、そこに本来であれば魔法陣の知識を得たオリエント国が食い込めるかもしれない。

なにせ、この国はものづくりにかけては周囲の国々からすで高い評価を得ているのだ。

しかし、今回の件でそれが一気に瓦解するかもしれない。

やはり、オリエント国と言えども魔道具を作ることなど無理だったのだ。

魔道具はブリリア魔導国のものでなければいけない。

オリエント国製の魔道具はまともに動かないぞ。

そんなふうに言われてしまうかもしれないのだ。

それは、本当の意味での儲けを手放してしまっていることを意味する。

もし、オリエント国がごく普通に魔法陣技術を手に入れて、普通に魔道具を販売できていれば、今後数十年、あるいはもっと長い期間、それで利益を上げられ続けたかもしれないからだ。

それが一時の熱狂で棒に振るどころか、逆の影響を与えなけない。

それに、もしそうなった場合、その評価は魔道具だけにとどまらないだろう。

もしかしたら、暴落とともに、これまでこの国が培ってきたものづくりの異常にうまい国という世間一般の評価すらも失ってしまうかもしれないのだ。

そうなれば非常に大きな損失と言えるだろう。

というか、この国は今までどこの国とも中立に高い技術力を通して付き合ってきたからこそ独立を維持できていたのであり、その意味では外交上でも大きな問題になる。

「信用、か。やっぱ、それがあるかないかは大きな違いなんだろうな」

「当然よ。国の力なんていってみれば信用の大きさなんだから。生まれた国が違うというだけで扱いが変わるなんて当たり前にあるわ。でも、どうするの? いくらアルフォンス君でも、この状態になった相場をどうにかできるとは思わないのだけど」

「そうなんだよね。下手に突っつくと、余計に暴落を早めるだけになりそうだし」

このまま、なにもせずに魔道具価格の暴落を待つと、オリエント国のものづくりの力そのものに疑問符が付きかねない。

それはわかったが、では、どうすればいいのかというのが問題だ。

オリエント軍を使って、無理やりこれ以上の取引を禁止したとしても問題の解決にはならないだろうからだ。

シオンの占い結果では、暴落まではまだいくらかの猶予があると出ている。

だが、それも不変のものではない。

シオンの占いは状況によっては普通に変わってしまうこともあるからだ。

占いは上手く使えば死の危険を回避することもできれば、その逆もありうるということだし。

「とはいえ、なんかやらないといけないだろうしね。しょうがないか。もう一度、職人たちにアイの講義を受けられるように手配しよう。そこで、とっておきの情報を解禁する」

「とっておきの情報? それで、信用問題が解決するの?」

「いやー、正直わかんない。けど、まあ、ブリリア魔導国には作れないオリエント国だけの魔道具にはなるから、オリエント国製の魔道具が無価値として判断されることはないはず。……そう思いたい」

ぶっちゃけ勝算があるわけではない。

が、現状できるのはこのくらいしかないのではないだろうか。

今まで何度かやったアイの講義の基礎編をはるかに上回る極秘情報を職人たちに与えて、オリエント国のものづくりの力という信用だけは低下しないように祈る。

こうして、オリエント国には新たな情報がもたらされたのだった。