軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガリウスの危惧

「アルフォンス殿、クリスティナ殿と金儲けに精を出すのはいいが、魔道具についてはそろそろなんとかしたほうがいいのではござらんか?」

俺とクリスティナがここ最近続いている魔道具相場の暴落に備えて準備をしているときだった。

ガリウスが声をかけてくる。

「なんとかしたほうがいいってどういうこと? 取引されている値段がおかしいのは俺もわかっているけど、だからといってすべての品の値段をこっちが決めるわけにもいかないと思うけど」

「それはそうでござろうな。事実、この新バルカ街から売り出された魔道具は以前までとそう変わらぬ値段で販売されているにもかかわらず転売を繰り返して高い値付けがされてしまっているのでござる」

そうだ。

もともと、この新バルカ街では魔道具を作ってバナージに卸していた。

オリエント国における魔道具の開発はバナージが主体であり、すべての流通を任せるために俺は作った魔道具すべてをバナージにだけ売っていた。

だが、最近はそれもかわった。

アイが講義をして、その講義をバナージが受けたからだ。

あの講義をきっかけにして、バナージが土鍋型魔道具などの制作者ではないことが知られるようになったのだ。

そして、その本当の製作は新バルカ街で行われているということを隠す必要もなくなった。

なので、うちで作った魔道具はバナージ経由にはせずに直売することになったというわけだ。

ちなみにそれでバナージの評価が下がったりしたというわけではない。

もともと、本当にバナージが作っているのかという疑問を持たれていたというのもあるし、当時から議員でもあったバナージが名義を貸すような行為はそこまで珍しいものでもないからだ。

むしろ、魔道具開発技術を持つ俺たちといち早く関係を結んでいたということで、先見の明がある、などと言われることもあるらしい。

そんなわけで、今は新バルカ街で製造した魔道具を自分たちで売るようになったのだが、その魔道具の値段はそこまで高値には設定していない。

バナージが実際に販売価格としていた時の値段設定を参考に値付けしているからだ。

だが、そうなると現在の暴騰している魔道具相場とは乖離していることにもなる。

そのため、うちで販売した魔道具はすぐに買い取られた後、その後、別の場所で高値で取引されているという状況だ。

あんまり面白い状況ではないと思う。

だって、新バルカ街で作った魔道具の販売価格よりも数倍から数十倍でやり取りされているんだから。

当然、その金額は製作者側であるこちらには一切入ってこない。

転売した者の懐に大金が転がり込むということになっているのだから、面白くないのは当たり前だろう。

しかし、だからといって、こっちが販売する際にもっと高い値段設定にするのはどうなんだろうかというのもあった。

なにせ、そう遠くないうちに値崩れを起こしてしまうのだ。

暴騰したからといって急激な値上げをしたあげく、暴落して元の値段以下に下げて販売するようになったのでは信用にも関わる気がする。

それならば、終始一貫して同じ値段設定にしていたほうがいい、のではないかと思って値段はそこまで変えていないがそれが良いのかどうかは微妙なところだ。

また、逆に販売を一時見合わせるなどの停止状態にするのもまずいらしい。

アイいわく、市場の流動性が損なわれるからだそうだ。

今は魔道具を買いたい人と売りたい人が両者ともに多いからこそ、高騰しつつも取引されている。

が、魔道具の供給量が減ってしまえば、いくら買いたいと思っている人が多くても買うことができなくなる。

そうなると、価格の上昇が止まって一気に暴落に転落する可能性が考えられるのだそうだ。

というわけで、もう少し暴落は先延ばしにしたいこちらとしては販売をやめるというわけにもいかないという状況だ。

「というか、そうか。相場が暴落した後に土地購入することばかり考えていたけど、魔道具の値段も考慮すべきだな。もしかしたら、今の値段ですら売れなくなるかも」

「そうなる可能性はあるかもしれないでござる。しかし、それよりも魔道具の品質における信用が地に落ちるほうが気になるのでござるよ」

「どういうこと?」

「ふむ。拙者が言いたいのは、最近特に多い魔道具もどきについてでござる。実際にはなんの機能もしないそれらしい模様が描きこまれただけの品が魔道具と称されて高値で取引されている。それはアルフォンス殿も知る事実でござるな?」

「そうだね。全部がそうじゃないけど、そういう品が一部であることは確かだ」

「普通ならばそのような品は見向きもされないはずでござる。けれど、現実には非常に高額で取引されているでござる。これは、今は持っているだけで値段が上がると思われているからで、そうではなくなればどうか。一瞬にして無価値になったそれを見て、魔道具すべての評価が地に落ちることになる気が拙者には思えるのでござるよ」

なるほど。

ガリウスの言いたいことが分かってきた。

ようするに熱狂中はいいが、それが収まり、逆に魔道具が厳しい目で見られることになるかもしれないということだろう。

それはもしかしたら、魔道具というだけで「胡散臭い品」として認識されてしまう可能性もあるということだ。

今は魔道具は持っているだけで値段が上がる金の生る木として認識されつつある。

が、それが反転して魔道具はいかに危ない商品で、それを買おうとするのは強欲で身を滅ぼす行為である、なんて言われたりするのかもしれない。

もしそんなことになればどうだろうか。

今、俺たちが作っているまともな魔道具ですら一切購入されない冬の時代がくるかもしれない。

ガリウスの危惧しているのはそういうことなのだろう。

さすがにそうなることは俺にとっても損だ。

なんだかんだと言って、俺たちバルカ傭兵団が常に動かせる戦力を保有できているのも魔道具の製造販売での利益があるからなのだから。

今後も継続して利益が出続けていってもらわなければ困る。

なにか手を打ったほうがいいのかもしれない。

ガリウスの話を聞いて、土地購入だけではなく、魔道具の信用についても対策を打つ必要があることに気づかされたのだった。