軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新・流星

「来たか」

「遅くなりました、団長。ウォルター分隊、到着しました」

「よし。これで、ここにいるのはだいたい二百だな。それじゃ、そろそろ攻めるぞ」

オリエント国の北東に位置するぺリア国。

そのぺリア国にあるという小さな街に俺はやってきていた。

その街はパージ街というらしい。

そこにはすでに、接近しつつあるこちらを把握して、それを迎え撃とうと向こうの本隊が動き始めていた。

村を襲った連中が偵察で、このパージ街にいる本隊だが、その数は千ほどになるようだ。

対して、俺たちはあとから追い付いてきたウォルターなどを含めて二百ほど。

数の上ではだいぶ少ないが、それよりも問題は別のことにある。

「どういう作戦でいくんですか、団長? 相手のほうが数が多いうえに、あの壁に囲まれた街に籠られたら厄介ですよ」

ウォルターが言う横で、ゼンや他の者も頷いている。

ここにいる傭兵たちも今まで戦いに出た経験がある奴もそれなりにいるのだろう。

その経験上、身にしみてわかっていることがある。

それは、壁の中に立て籠もる相手を崩すのは相当な手間がかかるということだ。

攻城戦というのは攻め手が不利だ。

ただでさえ壁という守りがある上に、数も相手のほうが多いのだから当然だろう。

そして、この攻城戦は基本的に傭兵としての経験がある奴のほうが嫌がる傾向にある。

というのも、相手の守りを崩すために最初に前線に出ることになる奴ほど被害が大きくなるのが分かっているからだ。

高い壁に取りつくと、弓矢などの攻撃のほかにも、壁の上から熱湯や熱した油なんかをぶちまけられる。

それを物量で押し切って攻略するというのは、危険なんてものではないだろう。

だが、金で雇われた傭兵はえてしてそういう危険な役目を任されることが多い。

この場についてきたバルカ傭兵団の面々も、ここにきて相手の守りを目にしたからか、少し気分が落ちているように感じた。

「大丈夫だ。最初に俺とイアンが出る。お前らは、俺たちが崩したところを狙え」

だが、それをあえて無視する。

もしかしたら、相手を攻略する方法を全員に説明して理解を得て、気分を盛り上げてから攻撃に出たほうがいいのかもしれない。

が、そんな説明は一切なく、俺に続けとだけを伝えた。

説明すればいいのかもしれない。

だが、やるべきことだけを告げた。

結局のところ、いくら口で説明したところで無駄だからだ。

だから、実際に行動で示す。

傭兵たちにとって、俺が信じてついていくだけの力を持っていると証明し続けることが何より大切なのだから。

「いくぞ、イアン」

「おう」

なので、すぐに行動に出た。

俺の言葉を受けてイアンが動き出す。

アトモスの戦士であるイアンがヴァルキリーに騎乗した状態で、守りを固めて待ち構えているパージ街へと向かって行った。

そして、俺はその場で攻撃態勢に入る。

魔法鞄の中から取り出したのは弓だ。

グルーガリア国で手に入れた柔魔木の弓。

流星と呼ばれた男が使っていた特殊な弓だ。

その弓に魔力を通し、弓を構える。

その動きは流星から奪った血で得た流星の動きを完璧に再現している。

だが、今までの再現よりもさらにその上をいく。

これまでも、流星の真似事はしてきた。

だが、今までは俺と流星には決定的な違いがあったのだ。

それは、俺の体がまだ子どもだということだ。

魔力を流動させて力を上手く使ってはいたが、それでも素の状態での筋肉量は流星には劣っていたのだろう。

そのため、流星の弓の腕を再現しようとしても不完全なものになっていたのだ。

しかし、今は違う。

体の中の、胸にともった炎へと魔力を注ぐ。

【慈愛の炎】だ。

この炎に魔力を注ぐことで、その炎の熱をさらに熱くさせ、全身へといきわたらせる。

こうすることで、子どもの俺でも力を大幅に上げられる。

そのあがり幅は【身体強化】よりもさらにすごく、巨人化していない状態の筋肉もりもりのイアンとも互角に渡り合えるほどになるのだ。

そんな、今まで出せなかった圧倒的な力と肉体強化以外に使用する弓矢そのものへと送る魔力を使い分けて、【流星】を発動した。

先行して走るイアンの上を、大きく弧を描くようにして一本の矢が飛翔する。

ちなみに、この矢も特別製だ。

今までは普通の木の矢を使っていたのだが、この筋力向上状態で使うために特別に金属製の矢をガリウスに作ってもらっていたのだ。

普通ならばたいした飛距離が出なくなってしまう重量の金属の矢が、空を切り裂きながらグングンと加速し続ける。

そして、それがパージ街の壁へと到達した。

街全体を囲む壁には通行のために門が設置されている。

その門の上部の壁へとぶつかった金属の矢が、大きな音をたてて壁を破壊する。

【流星】は柔魔木の弓と魔力を使っただけでも地面を大きくえぐるほどの攻撃力がある。

そこに、イアン級の筋力と金属の矢を使用したことで、さらに攻撃力が跳ね上がった。

パージ街の壁全体が大きく揺れたのではないかと思うほどの光景。

そして、それから一瞬の間をおいて、壁に使用されているレンガや土が弾けた。

まるで、子どもが遊びで作った土の山に木の棒を力いっぱい振って土ごと吹き飛ばしたような光景が俺たちの目に映る。

バァンという音をたてて、レンガや土が空を舞い、矢が着弾した場所から広がっていくようにして壁が吹き飛んでいく。

もちろん、通行用の門などひとたまりもなかった。

外敵を防ぐために存在する壁が一撃のもとに崩壊する。

そこに、イアンが飛び込んだ。

ヴァルキリーから飛び降りたイアンが、即座に巨人化し、同じく巨大化した自在剣を振るって崩れた壁から街へと入り込む。

「行け。突入しろ」

あっという間に崩れた壁を見て、さすがにあぜんとしていたのかゼンやウォルターたちもその場で固まっていたので、指示を出す。

その俺の声を聴いて、ハッとなって動き出す傭兵たち。

イアンが街の奥へと入り込んで暴れているのを見ながら、すぐにその後を追うようにして、ほかの傭兵たちも街へと向かったのだった。