軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

土鍋製造

「ほほう。本当に魔道具を作れてしまうとは。さすがアイ殿ですな」

「どうかな、スーラ。この魔道具は売れると思うんだけど」

「……これは土鍋の魔道具ということでよいのですな? 機能はお米をおいしく炊き上げる魔道具。てっきり、わしはもっと過激な魔道具でも作ろうとしているのかと思っておりましたぞ」

俺たちが住み始めた廃村。

その一番中央にはかつてこの村の村長が住んでいたであろう家があった。

この廃村の中では一番大きな建物だ。

そこに俺たちはあがりこみ、傭兵たちは【壁建築】を使って周囲を壁で覆っていく。

また、魔力量の低い者は【レンガ生成】を使ってレンガを生み出し、家を建てる準備をしていく。

そんな作業を任せている間に、俺はアイに命じて魔道具を作らせた。

その記念すべき第一弾の魔道具が米を炊き上げる土鍋の魔道具だった。

「売れなきゃ意味ないからね。ちなみに、バルカニアでも魔道具を最近作っているみたいなんだけど、売れ行きがいいのは日常的に使うものらしいよ。家庭で使う物ってやっぱり売れやすいんだろうね」

「確かに。このオリエントでも米はよく食べられているので、手に入れたいと思う者は多いでしょうな。ちなみに、これはどうやって使うのですかな?」

「えっとね。ここを押すと炊飯が始まるから、その前に米を研いで土鍋の中に入れた状態で印の高さまで水を入れておくんだ。それさえしておけば、あとは勝手に炊き上がりまで終わるよ。待っていればいいだけだね」

「ほほう。米を炊くには火加減に気を付けるなどいろいろありますが、そのような手間がないということですか」

「そういうことだね。ちなみに、しばらくは保温できるようにもなっているよ。ごはんを温かい状態で保てる優れものなんだ」

「ふーむ。アルス様がブリリア魔導国から魔道具を買い集めていることは知っておりましたが、まさかこのように魔道具を作る手段まで確立しているとは思いませんでした。いや、天空王国であればそれほど難しいことではないのかもしれませんな」

スーラが感心しながら魔道具を見る。

本当に使えるか試してもいいかというので、一度試食してみることにした。

俺もアイの作った魔道具がちゃんとできているか確認のために、すぐに許可して米を炊く。

結果、非常においしく炊きあがったご飯が土鍋のなかに出来上がり、それに舌鼓を打ちながら話の続きをする。

「ふむ。これならば、確かにお金を得ることができるでしょう。便利な道具ですので買い手がつくかと思います」

「そうでしょ? こんな魔道具でもあんまり出回っていないから結構な値段で売れるはずだよね。いい稼ぎになると思うんだ」

「ですが、気になる点もあります。この話はオリエント国には通しているのですかな?」

「オリエントに? いや、別に詳しくは言っていないけど」

「それはあまりよくないでしょう。魔道具という貴重なものを販売するのであれば話を通しておいたほうがよいかと思います。というよりも、しばらくは販売先をバナージ殿のみにしたほうがいいかと思います」

「なんで? 高く買い取ってくれる人に売れば儲けも大きくなるんじゃないの? バナージ殿だけに限定して売るなら値段はそこまで高くならないかもしれないんじゃない?」

「そういう欠点もあるでしょう。ですが、魔道具の、とくに魔法陣の技術というのは一般には知られていないもののはずです。それを狙ってくる者がどれほど現れるかわかりません。あるいは権力を持つ者がこの村を狙ってくる可能性もあります。それらの火の粉を振り払うためにも、同じくこの国で力を持つバナージ殿と協力関係を持っておくことは大切でしょう」

ふむふむ。

たしかにそうかもしれない。

このバルカ村でしか作れないものがあったら、それを狙ってくる勢力が現れる可能性がある。

それも一つや二つでは収まらないかもしれない。

そんなのを一つ一つ自分たちで対応するくらいならバナージに任せてしまったほうがいいというスーラの意見は一理ある。

バルカ村で魔道具を作って、それをバナージに預けて販売させる。

ただ、それだと当初の目的であった商人を集めることができなくなりそうだな。

「いえ、それでいいのではないでしょうか。最初は小さな一歩でいいのですよ、アルフォンス様。何事も小さなことからコツコツといきましょう。それに、バナージ殿と協力関係を結ぶのにはもう一つ理由があります。それはブリリア魔導国との関係です」

「ブリリア魔導国の? なにか関係あるの?」

「もちろんです。アルフォンス様はブリリア魔導国の貴族院に留学されておったのでしょう? そして、そのアルフォンス様が拠点とするバルカ村で魔道具が作り始められて小国家群でそれが広がったとしたら、ブリリア魔導国はどう思うでしょう? きっと、アルフォンス様が情報を盗んで金稼ぎを始めたと思うはずです。もしかすると、販売停止を求めてきたり、あるいはもっと強く警告を出してくるやもしれません」

「……そうかもね。ってことは、そう言われないように間にバナージ殿を挟むってこと?」

「そうです。こういうのはどうでしょうか。当面はバルカ村では魔道具を作っていることを秘匿するのです。極秘に魔道具を作り、それをバナージ殿を通して販売する。表向きは魔弓を作り上げたバナージ殿が土鍋の魔道具も作ったことにでもするのです。そうすれば、バナージ殿も名声と販売の実利を、アルフォンス様は魔道具の卸値を手にすることができる。もちろん、なにかがあったときにはバナージ殿に対応してもらうと最初に約束してということになりますが」

「いいね。めんどくさそうなことは人に押し付けようってことだね。わかった。じゃあ、最初は極秘に魔道具作りをしようか。で、バナージ殿にその販売を任せて代価を得る。魔道具を作れない不器用な奴らは商人の護衛でもさせようかな」

スーラの提案を後でクリスティナにも聞いてみたところ、賛同してくれた。

やっぱり、魔道具をいきなり売り始めるのはいろいろと危ない面があるみたいだ。

商人の立場からしても、いきなり定期的に魔道具の販売を始めたら、どこから仕入れているのか周囲に勘繰られて、大きな問題につながるかもしれないという話だった。

なので、スーラの案を採用するために俺は一度バナージのもとへと訪れて話をつけた。

バナージのほうも、いきなり俺が魔道具を作って持ってきたことに驚いていた。

どうやってこれを作ったのかを聞いてきた。

が、製法などは話さずに取引の話だけをしたところ、最終的にはスーラの提案通りの話にまとまることになった。

俺たちバルカ村の人間が魔道具を作り、それをバナージが受け取って市場に流す。

しばらくは大きな戦いもなかったので、ひたすら土鍋を作りながら、資金稼ぎにいそしんだのだった。