軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

起死回生の作戦

「まず、率直な意見を聞きたいでござる。バルカ傭兵団から見て、現在のオリエント国はどのように映ったでござるか?」

「……じゃあ、遠慮なく。正直、もうかなり危ないんじゃないですか? 街の外の壁は【壁建築】で直していましたけど、街の中も相当荒れてますよね」

「うむ。やはり、隠し通せるものでもないでござるか。実をいうと、オリエント国は非常に切迫した状態なのでござるよ。むしろ、今までよくもっていたといえるくらいのありさまでござるから」

「いいんですか? 今日来たばかりの人間にそんなことを言っても」

「まあ、かまわないでござるよ。小国家群に住む者なら、説明されなくともオリエント国の惨状は肌で感じているのでござる」

月の石の話をしているときには目を輝かせていたオリエントの人たち。

だが、バナージが国の状況について述べ始めると、みんな顔色が暗くなってしまった。

どうやら相当にやばい状況らしい。

そして、それを隠すだけの気力もなくなっているみたいだ。

大丈夫なんだろうか?

いくらここに戦いにきたとはいえ、バルカ傭兵団は数が少ない。

唯一の味方となるここの人たちがこんなありさまでは勝てる戦いも勝てなくなるんじゃないかと思ってしまう。

「本来、オリエント国は戦いには向かない国でござるからな。ものづくりの名手が多いことが一番の取柄だった。けれど、それが戦によって職人たちも戦わざるを得なくなり、そして多くの造り手を失ったのでござる」

「……じゃあ、今後どうするかの考えもない感じなんですか?」

「普通ならば、どうしようもないでござる。けれど、あきらめるわけにはいかない。そこで、アルフォンス殿、ご助力願いたい。ぜひ、手伝っていただきたい戦いがあるのでござる」

「もちろん、そのつもりです。戦うために来たんですからね。といっても、内容にもよるでしょうけど」

「かたじけない。では、説明させていただく。これまでオリエント国は襲い来る外敵に対して常に守勢に立たされていたのでござる。けれど、それではもうどうしようもない。そこで、起死回生の一手として攻めに転じるのでござる」

うん。

守ってばかりだといつまでたっても勝てない。

それは間違いないと思う。

バナージの言うことはもっともだ。

ただ、どこを攻めるんだろうか?

自国を守るだけでも大変な状況だったら、もし仮にどこかを攻め落としてもそこを維持できないんじゃないだろうかと思ってしまう。

「攻める場所は決まっているのでござるよ。材木所でござる」

「……え? 材木所って木を切って置いているところってこと? どこかの街を攻めるとかじゃないの?」

「そのとおりでござる。言い間違えたわけでも、おかしくなったわけでもないでござるよ、アルフォンス殿。材木所で間違いないのでござる」

本気、なんだろうか?

いや、この場で別に嘘を言う必要なんかないんだろうけど、それでも心配してしまう。

あまりの状況に頭がおかしくなってしまったんじゃないだろうか。

「その顔は拙者の言うことに疑問を持っているでござるな。ま、当然でござるな。ただ、これを見てほしいのでござる。拙者らの目的はこの木材を手に入れることにあるのでござるよ」

そう言って、バナージが近くにいた人から木の棒を受け取り、こちらに手渡してきた。

きれいに切られていて、木目もきれいな木材だ。

多分、高級品なんだと思う。

しっかりとした硬さと重さがあり、受け取った手にしっかりとした重みを感じる。

けれど、この木を手に入れてどうするつもりなんだろうか。

まさか、今更ほかの場所を攻撃して木を奪い、それを職人が加工して売ろうとでも考えているんだろうか。

さすがにそれは悠長すぎると思うけど。

「ん? あれ? なんだこれ。この木は魔力を吸い取るのか? 魔力を吸収して、柔らかくなってる?」

「ほう。すごいでござるな、アルフォンス殿。その木に魔力を流し込むのは難しいといわれているのでござるよ。それをいとも簡単にやってのけるとは」

「まあ、魔力の使い方は結構訓練してますから。で? こいつは、魔力を取り込むとぐねっと曲がる木ってことであってるんですか?」

「そのとおりでござるよ。それは柔魔木と呼ばれる木から切り出した木材なのでござるよ。とある川の中州のような場所にだけ生えている特殊な木で、それを伐採して保管している材木所から柔魔木を奪い取るのが目的の戦いなのでござる」

「ふーん。木を持って帰るだけでいいってことですか?」

「然り。今回の戦いの目的は土地ではなく柔魔木そのものでござるからな。それだけが狙いであり、そのための戦力を求めているのでござるよ」

なるほど。

ずいぶんと暗い顔をしていたから、何も考えがないんじゃないかと心配していたけど、そんな心配は必要なかったみたいだ。

きちんと考えがあってのことなんだろう。

なら、バルカ傭兵団も参加してもいいかもしれない。

バナージの話を聞きながら、報酬さえ出るならその材木所攻略の戦いに行くことを心の中で決めたのだった。