軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔弓オリエント

「その柔魔木を確保し、武器を作り、オリエント国は戦力を強化する。それこそが、我々の生き残る最後の手段でござる」

ふーん。

武器、ね。

この柔魔木というのが珍しいのはわかる。

けれど、こいつを材木所から奪ってくるくらいで瀕死の国を救うほどの武器になるのかな?

「どんな武器がこいつから出来上がるんですか?」

「ふっふっふ。みたいでござるか、アルフォンス殿?」

「ええ。お願いします」

「いいでござるよ。ともに戦おうという仲間でござるからな。特別に見せるでござるよ。こいつでござる」

バナージが少し興奮しながら近くの机の上にあるものに手をかける。

上にかぶせていた布をどけると、そこには手で抱えられるくらいの大きさの木でできたなにかがあった。

あれはなんだろう?

「なんだ、これ? 弓のごっついやつみたいな感じですね」

バナージが見せてきたのは弓のような弧を描いた木の部分と、そこに直角につながった棒の部分でできたものだった。

武器だって言っていたし、これで矢でも飛ばすんだろうか?

「これは、柔魔木で作った弩でござるよ、アルフォンス殿」

「弩?」

「そうでござる。弩というのはただの弓よりも強力な攻撃ができる武器でござる。ただ、欠点もあって弓のように単純ではないために壊れた時の修理が大変だったり、矢を飛ばすまでの準備に時間がかかるのでござるよ」

「へー。じゃあ、弓でいいんじゃないの?」

「そうでござるな。であるので、これまではこの弩は開発の研究をされたことがあってもそこまで普及することはなかったのでござる。だが、この柔魔木と、そして魔石があれば話が違ってくるのでござる。よく見てほしい。この弩の持ち手の部分には魔石がはめ込んでいるでござろう? これは、我々が使えるようになった【魔石生成】という魔法から作り出したものでござるよ」

あ、本当だ。

確かに魔石がはめ込まれている。

それに、その魔石の表面には何かが描きこまれていた。

「これって、魔法陣? ってことは、この弩は魔道具ってことになるのかな?」

「そのとおりでござるよ。アルフォンス殿はブリリア魔導国に留学していたのでござったな。あそこでは魔道具が多く作られていて技術が発展しているでござる。此度、拙者らもその魔法陣技術を活用して、こうして新しく魔弓を開発したのでござるよ」

「……魔弓? 弩なのに?」

「魔弓でござる。魔弓オリエント。それがその弩の名前でござる。この国の未来をかけた魔法の武具でござる。かっこいいでござろう?」

なんだそりゃ。

ややこしくならないんだろうか?

まあ、作った連中がどういうふうに名付けてもいいんだろうけど。

その魔弓オリエントを手に持ってまじまじと観察する。

前のほうに弓のように弦がついた部分がある。

そして、持ち手の棒の部分には魔法陣が描かれた魔石がはめ込まれていて、多分ここに魔力を流し込んで起動するんだろう。

ブリリア魔導国ではこういう魔法陣を使った製品が多くあった。

けど、あれは魔法陣技術の優れたあの国だからで、バリアントやこの小国家群では見かける機会が少なかった。

それは多分、単純にブリリア魔導国以外では手に入れる機会が少なくて高価だったからでもあるんだろう。

けど、その技術を使ってオリエント国で作られたこの魔弓は、アルス兄さんによってもたらされた【魔石生成】という魔法があったからこそ完成したんだろう。

あれは魔石を作り出すことができる。

魔力さえあれば数を揃えられる魔石をいくつも使って、魔法陣を試し書きして研究でもしたんだろう。

「先ほど、アルフォンス殿は簡単に柔魔木に魔力を流し込んでいたでござるな。けれど、本来その木に魔力を流し込むのは難しいといわれているでござる。現に拙者や他の者はできないのでござるよ」

「ああ、そういえばそんなことを言っていましたね」

「うむ。そこで、魔石を利用して魔弓を作り上げたのでござるよ。魔法陣によって、魔石に魔力を流し込むと柔魔木に変化が起こるようにしたのでござる。本来ならば硬い柔魔木に高い柔軟性が発現する。そして、その柔らかくなった状態でこのように矢をつがえて引く。そうしてから発射することで、従来の弓よりもはるかに強力な攻撃が可能になるのでござる」

「なるほど。柔魔木がすっごく曲がるからこそ、思いっきり引いてやれば反動が強くなるのか」

「そうでござる。そして、これは扱いが簡単という特徴もあるのでござるよ。弓は使いこなすようになるまでに長い訓練期間が必要でござるが、こいつならばその日のうちにでも使いこなせるはずでござる。柔魔木さえあれば、即効性のある戦力強化が望めるというわけでござるよ」

そういうことか。

どうやら、オリエント国としては強力な武器を用意することで、戦力不足になっている現状をなんとかしようとしているらしい。

確かに、今から剣の訓練をしていくよりはいいのかもしれない。

魔石に魔力を注げばいいだけだし、それも【魔力注入】という魔法があるんだから名付けさえしていれば誰でもできる。

うん。

遠距離攻撃できるようになるっていうのは確かにすごい強みになるはずだ。

ということは、材木所から柔魔木を手に入れるという計画は本当にこの国をかけた戦いになりそうだ。

魔弓をあれこれ観察した後、いよいよその戦いの計画についての説明を受けていったのだった。