軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天界

「おおー、すごい。本当に空に上ったぞ」

「いや、本当に上がったって、できなかったらどうするつもりだったんだよ、坊主?」

「できなかったら、空に浮かばないってだけだろ、おっさん。いいじゃないか。成功したんだし」

「はあ。確かに空に浮かんだのはすごいとは思うがな。しかし、商売の上ではあまりいいことはないな。せっかく人の行き来が増えて商業が盛んになってきたってのに」

「空の上だと人の行き来は減るだろうからね。まあ、けど、バルカニアがあった地上部分を再活用したらいいでしょ。今は大穴が開いた状態になっているけど、近いうちに平らに均しておくよ」

「一から街の作り直しか。それなら、今度は設計段階から商業用に街を作らないか? 全くの何もない状態からなら好きなようにできるだろう?」

「いいよ。けど、まずは天界の整備からだな。ちゃんと人が住み続けることができるようにしていく必要があるしね」

段々と高度が上がっていくバルカニア。

周りを壁で囲まれた土地からさらに外側までをも浮かび上がらせているので、おおよそ10km四方の土地が空に浮かんでいる感じになるだろうか。

それが特に傾きもせずにそのまま上に上がり続け、そして、止まった。

どのくらいの高さまで上がったのだろうか?

結構上がったとは思うが、大雪山よりは低いのではないかと思う。

しかし、雲は下に見えるほどの高さまできている。

計測していないが、なんとなく3000mくらいの高さ程度ではないだろうか?

前世でもそれくらいの標高に100万人以上が住む都市はあったし、たぶん大丈夫だろう。

知らんけど。

この高さだと普通ならば寒いはずだが、今のところ天界はさほど寒さを感じない。

その理由は俺が外壁の上などにいくつも吸氷石の像を設置していたからだ。

あの像のおかげで寒さを吸収してくれている。

あれがなければ凍死していたかもしれない。

しかし、不思議なのが高山病みたいにならなかったことだろうか。

てっきり、上昇する速度を見ていて、バルカニアに残った住人がバタバタと高山病で倒れて不調を訴えることになるのではないかと危惧していたのだが、どうもそうはならなかったようだ。

浮遊石になにか秘密の効果があるのか、あるいはアトモスフィアのおかげなのかはわからない。

が、これなら何の問題もなく普通に暮らせるのではないだろうか。

もっとも、おっさんが先程から愚痴っているように、人相手に商売をしていた人たちはしばらくは生活が苦しくなる可能性もある。

今まではバルカニアは他の街と道をつなげて商売をしていたのだ。

その流れが間違いなく大きく変わってしまう。

商売上がったりになって失業する人も出てくるかもしれない。

が、空に上ったバルカニアはまだかなりの土地が余っているという面もある。

特に今年になってその面積を大きく広げたばかりだったのだ。

【土壌改良】などの魔法を使えば、小さな面積でも高収穫が見込めるので、食べていくだけなら特に問題はないだろう。

「天界は役割を絞ったほうがいいかもな。俺の城と、知識や技術の集大成である大学や図書館なんかの知的財産の集積地、ラジオ文化の発信地、バルカ銀行での造幣技術、ヴァルキリーや使役獣関係、あとはアトモスの戦士の住処って感じか。とにかく、バルカが持つ特異な技術を管理・保存する場所って役割が強いようにすることになりそうだな」

「なるほど。他から技術を盗まれるのを防ぐという意味でなら、空に上げてしまうのは確かにありだろうな。でも、肝心の問題が残っているぞ、坊主。地上との行き来はどうするんだ?」

「ああ、それなら問題ない。神アイシャに直接手ほどきを受けてきたから」

「神様に手ほどきだと?」

「ああ。神アイシャは俺が知らない古代の魔導技術についても知っていたからな。そのひとつが魔法陣だ」

「魔法陣があると地上と行き来できるようになるのか?」

「そうだな。一番簡単なやり方だと、地上と空で対応した対となる魔法陣を設置しておくと行き来ができるようになるらしい。もっとも、特別なものがいるって話だったけど」

「なんだ、その特別なものってのは? それがなきゃできないっていうなら、意味ないだろ?」

「大丈夫だよ、おっさん。普通ならばとても用意できない特別なものではあるけど、俺にとってはそうでもないからな。転送石だよ。巨大な転送石を魔法陣を作る際に使えばいいらしい。本来、そんな大きな転送石はあまり手に入らないらしいけどな。俺ならそれが作れるから問題なしだ」

「……ってことは、天界は普通に地上と行き来できるようになるのか?」

「そういうことだね」

どうやら、古代の魔導技術はかなり優れていたらしい。

アイシャから聞いた魔法陣での転移は対となるものがあれば距離が離れていても移動可能なようだ。

それは俺が作る転送石のように、土地同士で魔力的に繋がっていなければいけないということもないため、地上と空で転移ができることになるらしい。

が、それには大きな転送石が必要だった。

神界ではそのような大きな転送石が用意できなかったために、逆に迷宮核を地上と空をつなぐための道具として利用していたようだ。

本来ならば迷宮核のほうが転送石よりも貴重なのだが、苦肉の策だったらしい。

しかし、俺であれば転送石は魔力で作り出せる。

迷宮街で見つけたときの大きさよりも大きく作ろうと思えば、もっと大きく作ることも可能だった。

そして、この双方向の転送魔法陣であれば、当主級でなくとも転移することが可能になる。

神界に行くには【神界転送】という呪文が使えなければならなかったが、地上に降りるときには魔法が使えなくとも、さほどの魔力を使わずに降りられたのと同じなのかもしれない。

つまり、一般人であっても転送魔法陣を利用すれば地上と天界が行き来できるようになるだろう。

まあ、しばらくはバルカニアは空で独立させてしまおう。

そのうち、地上を再開発したら、地上とも移動できるように設定しようと思う。

こうして、俺はバルカニアを空に上げることに成功し、安全な住処を手に入れることに成功したのだった。