軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

空へ

「よーし、新しく神界でも作るか」

「……おい、坊主。いきなり何を言い出すんだ?」

「何って神界を作ろうかって話だよ。いや、神様はいないから天界って言ったほうがいいのかな?」

「……すまん。久々に坊主が何を言っているのか全く分からん。天界っていうのは、つまりあれか? 神界のように空に浮かぶ島でも作ろうっていうのか?」

「そうそう。正解だよ、おっさん」

「できるわけないだろう。って、言いたいところだけど、坊主が何も考えなくそんなことを言い出すとは思わないが。できるのか?」

「たぶんね。これを見てくれ、おっさん。神アイシャが住む神界は空に浮いていた。それを現地で調べてみたところ、面白いものが見つかったんだよ」

「……なんだこれ? 宙に浮いているのか?」

「正解だ。これは浮遊石というらしい。この石は宙に浮く性質があるんだよ」

新しく教会のトップに立つことになったパウロ教皇はアイシャの要望通り、神界に教会関係者が住むことを放棄した。

それ自体は俺が口を挟むことではない。

が、俺は個人的に神界に住んでみたいと密かに考えていた。

それは決して天空の楽園と呼ばれるような幻想的な場所に憧れたわけではない。

もっと端的に、現実的な問題として、防衛力を重視したためだ。

空に浮かぶ土地は非常に攻撃しにくい場所であると言える。

たとえどれほど地上で壁を作ったとしても、空に浮かぶ場所にはかなわないだろう。

とくに、飛行船からの魔導兵器落としという城塞都市殺しの戦法を自分で作ってしまった以上、今まで通りバルカニアでのほほんとしているわけにはいかなかったのだ。

なので、先日神界に行った際に、天空に浮かぶ土地を徹底的に調べ尽くした。

そして、見つけたのだ。

浮遊石という存在を。

神界という土地の底面側に命綱をつけて降りていった。

どうやって浮いているのかという疑問を解消するためにだ。

空飛ぶ土地の底は軽石のような小さな穴が無数に開いた特殊な石で固められて保持されていた。

それこそが浮遊石でお椀のように地面の土を受け止めながら宙に浮いていたのだ。

「へー、神界っていうのはそんなことになっているのか。で、坊主はその浮遊石を自分の魔力で作り出せるってことか」

「そういうこと。【記憶保存】でしっかりと浮遊石を記憶してきたからな。今、おっさんに見せたそれも俺が魔力で作ったものだよ。しっかりと宙に浮いているだろ?」

「ああ、こんなものが世の中にはあるんだな。で、これを使って新しくどこかの土地を空にあげようってわけか」

「どこかっていうか、バルカニアを、だけどな」

「……は? なんだと、坊主。バルカニアを空に浮かべるのか?」

「そうだよ、おっさん。というか、当たり前だろ。迷宮核でもなければ浮遊石を使って空に上げても土地を維持できないし」

「いやいやいや。待ってくれよ、坊主。お前、ここまで頑張って育ててきたこの土地を地上から切り離すのか? いろんな商売も軌道に乗ってきているってのに」

「別に良いでしょ。アトモスフィアは土の状態を割と自由に変えられるしな。バルカニアを空に上げて、作物を育ちやすい土地に設定しておけば自給自足はできるだろうし」

「本気で言っているのか?」

「本気だよ、おっさん。悪いけど、これは決定事項だ。けど、そうだな。空に浮かぶ土地に住みたくないって住人がいるんなら、引越し費用は俺が持とう。他の土地に移住させてやるから安心してくれ」

「はぁ。どうやら坊主の気持ちは固そうだな。わかったよ。他の人にもそれを伝えて、準備を進めないとな。けど、失敗は許されないぞ? 宙に浮かんだ瞬間に落ちてきましたとかだと、笑い話にもならないからな」

おっさんに天界づくりの構想を話して、他の者たちにも説明していく。

そして、住民たちにも告知を行った。

ちなみに神界で見つけたのは浮遊石だけではなく、水石というのもある。

どうやらこれは魔力を込めると水が出てくる石のようで、空にある神界に清らかな水が溢れていた理由だそうだ。

これがあれば、バルカニアを空に浮かべても水不足になることはないだろう。

そして、告知を行ってしばらくし、年も暮れるかという時期になり、いよいよ天界構想が実行されることになった。

バルカニアにあるアトモスフィアという迷宮核には俺やヴァルキリーがひたすら魔力を充填し続け、準備を整えておいた。

そのアトモスフィアに手を当てて、バルカニアの土地に魔力を送っていく。

すでに8km四方という巨大な城壁都市となっているバルカニアをすべて浮かべるように、その下の地面深くの土を浮遊石に変換する。

かなり厚めの岩盤のような大きさの浮遊石が地下に出現し、それによって地面が動き始める。

不思議な感覚だった。

ゆっくりと、ゆっくりと、地面が持ち上がり、浮かんでいく。

こうして、バルカニアは空へと浮かんでいったのだった。