軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二属性の可能性

「……質問してもいいですか、ベン? 吸氷石の中にいたのは氷精ですか?」

「ああ、そのようだね。氷を司る精霊のようだ。いいものを手に入れたよ」

「それはよかった。あ、ところでこの精霊を使役し終えた吸氷石はもう用済みってことですよね? なら、こいつは俺が回収させてもらいますよ」

「ん? ああ、もちろんかまわないよ。最初からその約束だったからね。でも、空になった吸氷石でも役に立つのかい?」

「ええ。空になろうが吸氷石には変わりないですからね。これがあれば、冬に凍死する心配が減りますから十分役に立つんですよ」

ベンジャミンの精霊使役を見て、しばしの間、言葉を発せなかった。

が、少ししてそんなことを話ながら、目の前の吸氷石を魔法鞄へと放り込んだ。

空になった吸氷石を俺が回収しているところを見ても、ベンジャミンはあまり惜しそうにはしていない。

やはり、吸氷石の中にいた精霊が目的だったということなんだろうか。

そばにいたラムダなどは、大国の王子が行った精霊使役という行為に興奮していた。

どうやら、ラムダのような一般人でも尋常ならざることが行われたというのが分かったのだろう。

精霊とは何か、そんなことを理解していないにもかかわらず、すごいすごいと言っている。

意味を分かって言っているのか、大げさな反応をしているのか分からないがほかの傭兵も似たような反応をしていた。

たしかに、ベンジャミンのしたことはすごいと思う。

精霊の使役。

それは俺にはできないことだ。

だが、精霊契約ができる人は知っている。

だから、その力のすごさは理解できるつもりでいる。

カイル兄さんがそうだ。

木精という精霊と契約していると聞いている。

たしか、世界樹と言われるような太古の巨木と話をして精霊を契約したのだとか。

そして、その力を使って大軍相手に戦って勝利したこともある。

さらに、カイル兄さん以外にもフォンターナ家の流れを組む貴族や騎士であれば、【氷精召喚】という上位の魔法が使えるはずだ。

こちらは契約しているわけではないのだけれど、かつてのフォンターナ家の当主が氷精と契約していて、その力を魔法にした。

そのおかげで、精霊契約できない人間であっても、フォンターナ家の当主級の力があれば精霊の力を行使できる。

だけど、本当に精霊の力というのはそれほどすごいものなのだろうか。

いや、すごくないとは思わない。

が、白竜に勝てると言えるほどに強いのだろうかという疑問が俺にはあった。

少なくとも、ラムダのように無邪気に褒めることができないでいた。

氷精が白竜に勝てるかどうか。

多分、相当難しいんじゃないだろうか。

白竜の強さも、ベンジャミンが使役した精霊の強さも知らないが、俺はそう思った。

だが、ベンジャミンの自信満々の様子が気になる。

まるで、勝てると確信しているような……。

「もしかして、ほかにも精霊を使役しているんですか? 氷精以外にも」

「……へえ。どうしてそう思うんだい、アル? もし、俺がほかの精霊を使役しているとして、どんな精霊だと思うのかな?」

「さあ、なんでしょうね。そうだな……。まあ、土の精霊はいるんじゃないですか?」

「ふふ。まあ、それは実際に見てのお楽しみだよ」

氷精以外の可能性。

それがあるなら、一番考えられるのは土ではないだろうか。

俺がそう言ったとき、反応を見せたのはイアンだった。

俺やベンジャミンと一緒にここまでやってきたアトモスの戦士イアン。

彼の故郷であるアトモスの里で採掘されていたのが、まさしく精霊石と呼ばれる魔石であり、彼らの言い方をすれば大地の精霊を宿す石となるのだから。

つまりは、精霊石は大地の精霊が含まれている可能性がある。

俺には精霊を感じることができないが、もしかしたらベンジャミンにはできるのかもしれない。

つまり、ブリリア魔導国がアトモスの里をアトモスの戦士たちから奪い取り、占領して精霊石を大量に採掘していたときに、第一王子であるベンジャミンはそこから精霊を手に入れていた可能性はないだろうか。

王族ならば小さな精霊石ではなく、大きなものも手に入れられたに違いない。

つまり、ベンジャミンは土と氷の二つの精霊を使役しているかもしれない。

二属性の精霊の使役。

そんなことができるものなのかは知らないが、もしできれば使い勝手は違ってくるだろう。

少なくとも氷精だけの時よりも手札は増える。

吸氷石というものがなくとも、霊峰に来さえすれば氷精という精霊を使役できると考えていたのだろうか。

やっぱり底が見えないな。

精霊を使役できると知った今でも彼の強さが想像できない。

が、それでも体一つで竜を打倒できると考えている愚か者というわけではなさそうだ。

自信満々のその姿を見て、もしかすると本当に竜に勝てるのかもしれないなと思わされる。

そんなふうにベンジャミンのことを見ながら、いよいよその白竜のもとへと向かうことになったのだった。