軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

霊峰の魔物

「面白そうな話ですね。いいですよ。ベンに協力しましょう」

「アル君。ヴァンデンブルグ家のことも考えてください」

「大丈夫だよ、リズ。俺は見届け人として行動するつもりだから」

「見届け人、ですか?」

「そう。ベンを霊峰に連れていく。だけど、それは水先案内人としてだ。霊峰に住む魔物と戦うのはベンに任せて、その戦いぶりを見届ける。どんな戦いぶりかを観察して報告する役目に徹するよ」

ブリリア魔導国の第一王子のベンジャミン。

彼が持ってきた話は俺の興味を引いた。

王となるために魔物と戦い、それによって王にふさわしい力を示して王位につく。

エリザベスの言っていたような御伽噺の主人公みたいじゃないか。

それを見てみたい。

まあ、それによってベンジャミンが王になったら結局のところエリザベスの実家のヴァンデンブルグ家は困るのかもしれないが、それはもうしょうがない。

別に俺がそこまで彼女の実家のために動かなければならないわけでもないしな。

それに、完全に損をするわけでもないだろう。

第一王子が王になるための手伝いをヴァンデンブルグ家の縁者が行ったとなれば、けっしてむげにはされないと思う。

そう説明すると、エリザベスも理解を示してくれた。

「では、アルは俺とともに戦ってくれはしないというわけか。残念だね」

「まあ、近寄ってくる魔物の露払いくらいはしますよ。どうせ、霊峰に入ってしまえばそこら中から襲ってくると思いますし。けど、どうするんですか? 俺が倒したことがある氷熊や四手氷猿をベンが倒したくらいじゃ、格付けには使えませんよね?」

「確かにそうだね。倒された数が少なく、毛皮もほとんど流通していないからそれらの魔物の遺骸であっても価値がないわけではないんだが、さすがに王位にふさわしいとは言えないかもしれないな。できれば、伝説に出るような大物であればうれしいのだけれど」

「伝説、ですか? ブリリア魔導国にある伝説で霊峰の魔物にかかわるものとかってなにかあるんですか?」

「伝説と言えば雪の山に住む死の女王は子どもでもしっている話じゃないかな。実在するかは分からないけれど。ただ、誰しもが想像する最強の魔物と言えば竜だろう。竜退治をしたとなれば王位は間違いないんだけど、いないかな?」

「雪の女王と竜ですか。どうなんだろう。アイ、いるか? 霊峰にいる大物の魔物の情報ってないかな?」

魔物と戦うのはベンジャミンで、俺は案内に専念する。

そう言ったのは、目の前の男の強さがそれでわかるかもしれないと思ったからだ。

ブリリア魔導国次期王候補筆頭の強さが俺にはいまだに測りかねている。

だったら、それを魔物との戦いで見極めてしまおうという考えだ。

さすがに魔物と戦っている姿を見ればある程度分かるだろう。

だが、どんな魔物と戦うことにするかが問題だった。

氷熊や四手氷猿でも評価はされるだろう。

そもそもが霊峰という場所に行くだけでもすごいのだから。

万年雪が溶けることない極寒の世界だ。

そこに冬の時期に入り込んで帰ってくるだけでも偉業と呼べる。

しかも、そんな環境で魔物と戦い勝利し、戦果を得られる者がどれほどいるのかという話だ。

が、普通ならば賞賛されるべき事でも、二番煎じとなってしまえばその価値は減じてしまうのも仕方がない。

少なくとも王位にふさわしい偉業であるかどうかは微妙なところだろう。

なので、二番煎じにはならない偉業を達成する必要がベンジャミンにはある。

そのための相手だが、できれば竜が望ましいという。

だが、いるのだろうか?

あの雪と死の世界に。

「霊峰に竜は実在していますよ、アルフォンス様」

その疑問に即答したのはアイだ。

俺が呼び掛けてすぐに縁側から入ってきたアイ。

お盆に乗せた暖かいお茶が入った湯飲みを俺たちに配膳しながら、そう答えた。

「それは本当ですか、美しきお嬢様よ」

「はい。事実でございます、ベンジャミン・ド・カルナック・ブリリア殿下。霊峰には白竜の姿が確認されています。膨大な魔力を持ち、雪と氷を操る竜で、おそらく討伐は困難でしょう」

「白竜、ですか? それほどに強いのですね。だが、素晴らしい情報です。アル、お願いだ。ぜひ白竜のもとへと案内してほしい」

「アイ。その白竜ってやつのいる場所には物理的に行けるのか? 案内可能な場所なんだろうな?」

「はい。エルメラルダからさらに先にいくつもの山を越えた先に住んでいます。ヴァルキリーであれば到達自体は可能であると考えられます」

「わかった。ありがとう。なら、行きますか、ベン? 霊峰でも移動可能なヴァルキリーの貸し出しとそこに行くまでの食事や暖を取るなんてものの費用もひっくるめて、さらに白竜との戦いを見届けることになるとかなりの費用を請求することになりますが」

「かまわないよ。いくらでも払おう。それで戦を回避して王位につくことができるのならね」

「分かりました。報酬が支払われるのであれば問題ありません。傭兵として頼まれた仕事はきっちりこなしますよ」

白竜なんていたんだな。

アイが危険と断言する魔物ってどれだけ強いかわからないが、ベンジャミンはその白竜こそが王位の証明に役立つと考えたようだ。

そして、そこへ行くという。

面白い。

俺はその仕事を引き受けることにしたのだった。