軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

測れぬ強さ

「はじめまして。君と会うのは初めてだね、アルフォンス・バルカ卿。よろしく頼むよ」

小国家群にあるオリエント国。

そんな小さな国に大国からとんでもない客がやってきた。

ブリリア魔導国の第一王子であるベンジャミン殿下だ。

その人物が俺の前にいる。

魔導王と呼ばれた父を持ち、次代の王に一番近い位置にいる人だ。

そんなひとが、身の回りを世話する側仕え数人というほぼ単身でここまで訪れた。

いいのか?

ただでさえ新年の祝いをしなくちゃならないだろう年明けに、しかも先王の崩御直後というのにここにいて大丈夫なんだろうか。

葬儀を執り行ったりといった、しなければならないことも多そうなんだけどな。

「お初にお目にかかります、ベンジャミン殿下。お会いできて光栄です。このたびはブリリア魔導国に大変な不幸があったとお聞きしています。お悔やみ申し上げます」

「そうだね。急なことで私も驚いている。全く、今後のことを考えると頭が痛いよ」

俺がベンジャミンに挨拶をし、頭を下げた。

だが、あまり王が死んで悲しんでいるという雰囲気でもなさそうだ。

この後のことについて考えているようだ。

オリエント国首都にある俺の家。

そこにベンジャミンがいた。

この家は俺が新しく作ったものではなく、もともとあったものを買い取った家だ。

そのため、木造建築で縁側があり、外を見るときれいに整備された庭が見えるようになっているオリエント式の建物だった。

畳と呼ばれる床の上に座るベンジャミンの姿を観察する。

若い。

青年と言っていいくらいの見た目だ。

言葉遣いもあまり格式ばっておらず、どこか気安さを感じるくらいだ。

だが、これはおかしい。

本当にこの人はブリリア魔導国の第一王子なんだろうか?

第一王子ということはシャルル様よりも年上ということになる。

そうなると三十代、あるいは四十代くらいにはなっているはずだ。

が、とてもそうは見えない。

それになにより、魔力があまり感じられなかった。

ブリリア魔導国の王族の魔力はすごい。

そこらの貴族なんて目じゃない魔力量なのだ。

たとえば、初めてアルス兄さんが王族の一人であるシャルロット様に会ったときには、アルス兄さんの魔力量はシャルル様よりも下だったらしい。

当時で言えば、大貴族くらいの魔力量だったにもかかわらずだ。

そして、そのシャルロット様はそれほどの魔力量であるにもかかわらずシャルル様よりも魔力が少なかった。

で、前評判的にも第一王子であるベンジャミンはそのシャルル様よりも魔力量が多いことになる。

ようするに、そんな話を聞いていた俺の中での第一王子の魔力量と今目の前にいる男の魔力量がどうしても一致しない。

というか、目の前にいる相手からは全然魔力を感じないのだ。

女性言葉を使うシャルル様の肉体は筋骨隆々で分厚い胸板をしているが、このベンジャミンはどっちかというと優男だ。

さらりとした髪とにこやかな笑顔からはとても強そうには見えない。

だから、【威圧】を放った。

あまりにも、なんの変哲もない相手だからどうしても気になったのだ。

俺の魔力を鋭く尖らせて相手に叩きこむ。

見た目通りに、この相手が一般人であれば俺の【威圧】で呼吸困難になるか、意識を失うかもしれないな。

多少の抵抗ができるのであれば、うずくまり、胸を押さえて過呼吸状態にでもなるかもしれない。

そうでなくとも、顔の色が悪くなるだろう。

だが、そうはならなかった。

俺の魔力を受けても、顔色一つ変えていない。

柳に風、とでも言おうか。

俺の放った魔力の棘はなにひとつ相手に影響を与えることなくさらりと受け流された。

「今のは子どもの戯れとして受け取っておくよ、バルカ卿」

「おやめください、アルフォンス君。それは殿下に失礼ですよ」

ニコニコしながら俺の【威圧】を児戯であると言ってくるベンジャミン。

そして、俺の横でその光景を見ていたエリザベスが真っ青になって言ってくる。

そういえば、ブリリア魔導国の伯爵家令嬢であるエリザベスなら第一王子の顔くらい知っていて当たり前か。

というか、俺の家に来た時点で身元確認としてセバスにも聞いているから本人なのは間違いないんだけどさ。

ということは、やっぱり目の前の人物が次期王候補の筆頭である第一王子で間違いないんだろう。

分からないな。

今まであった人の中でこの人が一番実力を読めないように思う。

少なくともシャルル様は俺よりもはるかに強いということだけは分かった。

が、この人に関してはエリザベスがビビる姿をみても強いのかどうかすら判別できない。

もしかすると、強さが測れないくらいに俺と差があるのだろうか。

そうだとすると、シャルル様の競争相手というのはやはりとんでもない相手ということになるのかもしれない。

相手の実力を一切測り切れないなかで、俺はその後も微笑を浮かべるベンジャミンと話をすることとなったのだった。