軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

反撃盾

「ガハッ……。っく、があ」

攻撃を盾で防がれ、そのうえ反撃を食らった。

魔剣に押し当てるように盾をぶつけてきたかと思ったら、それにより魔剣が爆発したのだ。

それだけじゃない。

俺の魔剣だけではなく、鎧そのものが爆発したのだと思う。

なぜなら、全身がくまなく痛いからだ。

ありとあらゆるところに激痛が走り、思考がまとまらない。

「はっはっは。見たか、ぺリアの兵たちよ。このギルバートがアルフォンス・バルカを討ち取ったぞ」

ギルバートとかいうらしい名前の総指揮官が大きな声でそんなことを言っていた。

ただ、その声もはっきりと聞こえない。

耳もおかしくなっているんだろう。

鼓膜も破れているんじゃないだろうか。

というか、俺の体って今どうなっているんだ?

右腕は完全に吹っ飛んだみたいで、肘から先の感覚がない。

さらに爆発のせいか、火傷をしたような痛みがあちこちからしている。

呼吸もまともにできていない。

そんな状態だから立つことすらできなかった。

きっと、周囲から見た俺はもう死にかけなんだろう。

ギルバートがあげた声を聞いて、周囲のぺリア軍が吠えるように声をあげていた。

破れた鼓膜のせいでその大きな音が頭に響いて不快だ。

そんななか、わずかだが意味を理解できる音を拾うことには成功した。

「お前のその剣と鎧、すごかったぞ。だが、それが災いしたな、アルフォンス・バルカよ。我が盾はあらゆる攻撃を防ぐ。それだけではない。相手の武器の魔力を利用して反撃もできるのだよ。誇ってよいぞ。それだけ貴様の剣の魔力がすごかったというわけだ。ここまでの威力が発揮されたのは、我が人生でも初めてであるからな」

そういうことか。

ギルバートの盾の魔術は防御技だが、反撃ができるものだった。

しかも、その反撃には相手の魔力を使う。

自分の魔力で魔術を発動するが、その威力には相手が攻撃してきた魔力によって増す性能があるんだろう。

だからだ。

今回は、ギルバートの魔術は俺と相性が悪かった。

というか、魔剣ノルンとの相性というべきだろうか。

俺の血でできている魔剣は普通の剣に魔力を流し込んでいるのではなく、魔力そのものとも言えるものだ。

だからこそ、ギルバートの【反撃盾】ともいうような魔術でばかみたいな威力を発揮してしまったのだ。

しかも、その魔剣を握っているのは同じく血でできた鎧だった。

つまり、【反撃盾】の効果が魔剣だけではなく鎧にまで波及したんだろう。

それでこんなに全身が痛いのか。

体を守り、筋肉代わりに使っていた鎧が俺を攻撃する材料となってしまった。

最悪の相性だ。

「投降しろ。貴様らのバルカ傭兵団は今日、この時をもって終わりだ。奴の死と敗北を認めるのだ」

まだ、体どころか指一つ動かせない状態の俺は地面に倒れたままだ。

そこにギルバートがなにか言っている。

もしかしたら、倒れた俺の周りをバルカ傭兵団の面々が守ってくれているのかもしれない。

もはや動くこともできない状態の俺を見捨てることなく、投降の呼びかけにも応えずに。

「ガアッ」

そんな期待には答えなくてはならない。

そう思った俺は残った力を込めて、喉の奥にたまった血を吐き出すようにして声を上げる。

意味のないうなり声だ。

だが、それでもわずか一単語だけを呟くことができるようになった。

その一言で、戦況をひっくり返す。

そのために、小さな声で、けれど力を込めてつぶやいた。

「かいふく」

呟いたのは呪文だ。

短い、ただの単語。

だが、それは劇的な効果をもたらす奇跡の技だった。

全身がむずむずするような、気持ち悪いような、けれど、暖かく包み込まれるような光に包まれる。

そうして、その光が消える一瞬ですべては元に戻っていた。

消し炭になっていたのか、吹き飛んでいたのかわからないが、右腕も元に戻っている。

呼吸も普通にできるし、全身の火傷のような痛みやかゆみもない。

目も見えるし、耳も聞こえる。

「な……、馬鹿な。信じられん。あれほどの傷が一瞬で、完全に治るのか……」

少し離れた位置で、驚愕の表情をしているギルバート。

その周りにいるぺリア軍の兵たちも同様だ。

それに対して、俺の周囲にいた傭兵たちはうれしそうな笑顔だった。

周囲をぐるりと見渡して、そんな周りの状況を確認し、そして次に自身の体をもう一度見る。

手や足に力を入れても問題ない。

力はしっかりと入るし、筋肉がほつれるような感覚もない。

が、少しして、とんでもないことに気が付いた。

「お前、絶対に許さないぞ」

「なに?」

「絶対に許さん。鞄が消し飛んでんじゃねえか。この罪は万死に値するぞ、おっさん」

体は完全に元に戻った。

だが、失われたものもある。

魔剣や鎧がふきとんだことで、これまでためた血が減少しているというのもある。

それに、血の鎧とは別に着ていた【自動調整】付きの金属鎧も壊れている。

が、そんなものはどうでもよかった。

一番の問題は魔法鞄が無くなっていたことだ。

ヴァルキリーの革と転送石を【合成】して作られた魔法鞄は貴重品どころじゃない。

あれほどの容量を持つ魔法鞄を迷宮で発見できるのは普通ないだろうし、アルス兄さんのように自分で作ることもできない。

そんな神の品ともいえるような魔法鞄が失われてしまったのだ。

そのことに激怒した俺は目の前の男を絶対に許さないと心に誓ったのだった。