軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本陣での戦い

五千ほどの数がいるぺリア軍本隊。

その中央までようやくたどり着くことができた。

六つに分かれた各八十ほどの傭兵部隊が多少数を減らしながらもぺリア軍の本陣前で合流することに成功する。

俺たちの背後をついて攻撃してきたぺリア軍本隊のさらに後方から攻撃を開始したパージ軍はそのまま継続して戦闘を行っているようだ。

が、数が千程度ということもあり、あまり強い者もいないからか押したり引いたりといった感じでここまで来ることは期待できないだろう。

また、ぺリア軍内に突入した俺たちに弓による攻撃を仕掛けていたグルーガリア兵たちはどうなったかというと、そちらにはエルビスが攻撃を行っていた。

囮兼エサ役のぺリア軍を攻撃していたエルビスだが、あいつもまた魔導通信器を持つ指揮官の一人だ。

こちらの状況を把握できているうえに、ヘイルたちの狙いも知ることとなった。

なので、引き返して来て対応してくれているというわけだ。

本来ならば、そんなエルビスを戻さないように引き付ける役割だった囮役のぺリア軍だが、それができない状況になっている。

というのも、バルカ教会側から傭兵たちが出てきたからだ。

敷地を高い壁で囲んでいて、これまでその中でたてこもっていた傭兵たちが少数とはいえ飛び出してきたことで、囮役のぺリア軍は部分的に挟撃された形になっている。

そのため、引き返してグルーガリア兵に向かうエルビスを止めることはできない。

というわけで、この場は非常に混戦状態に陥っているのだが、俺のすべきことがよりはっきり鮮明になったともいえる。

目の前にいるぺリア軍の本陣を叩き潰せば、それぞれの均衡が一気に崩れる。

そのためには短期決戦しかない。

相手が混乱から立ち直る前に決定的な打撃を与えて、状況を好転させる。

それには、なにがなんでも相手の総指揮官を倒す必要があった。

「ワルキューレ、頼む」

「キュイ」

小さな巨人とも呼べる大きさの鎧姿になった俺が、騎乗していたワルキューレから飛び降りてそう言う。

それにたいして、ワルキューレが返事をするように鳴いた。

俺と同じ赤の鎧をその体に纏ったワルキューレが、俺のもとから離れて走っていく。

ぺリア軍の兵たちはそれがなにを意味するのか分からずに警戒しているのか、様子をうかがったまま動かない。

そんなふうに相手の対応が遅れたことで、ワルキューレが仕事を果たした。

壁だ。

人間と違い、四本の脚が地面についているワルキューレ。

そのワルキューレは俺が名付けを行い、しかも、ヴァルキリーとは違って角を切ってはいない。

つまり魔法が使えるのだ。

走りながら何度も【壁建築】の魔法を使って地面に壁を生やしながら移動するワルキューレ。

俺と同じく血の鎧を筋肉のように纏っているからか、いつもよりも疾走速度が速い。

ぺリア軍の本陣を回りながら次々に壁の数を増やしていった。

「お前らは周りの騎士を押さえろ。俺が相手の頭を叩く」

決戦場だ。

邪魔がこれ以上入らないように。

本陣にいる総指揮官だけを集中的に相手できるようにワルキューレに場を整えてもらった。

そうして、ここまでたどり着いた傭兵たちに命じる。

ここに来るまでに傷を負い、体力も消耗しているであろう傭兵たちに無慈悲に命令を発した。

どれだけしんどかろうが、俺の命令は聞くしかない。

そもそも、こんな敵陣ど真ん中にまで入り込んで、おめおめと逃げられると思っている奴もいないだろう。

ここで勝つしか、生き延びる道がない。

なので、傭兵たちもその目に活力を宿して、闘志を奮い立たせた。

赤の騎兵が騎士たちへと突っ込み、そのあとに続いて傭兵たちが総指揮官を守る騎士へと仕掛ける。

そうしてできた道を通るように、俺が総指揮官に向かっていった。

これまでのワルキューレに乗った状態の騎乗突撃ではなく、自身の脚で走りよって魔剣を振り下ろす。

「覚悟!」

「させんよ」

気合一閃とばかりに声をあげて上段から振り下ろした俺の攻撃。

それをその男は盾を使って防ごうとする。

みたところ、なんの変哲もないただの盾だ。

金属製で大きめだが、体全体を覆うような大きさではなく、剣を持って戦うときに使用するための盾という感じで、片手で扱える程度のもの。

バルカ鋼でもないただの鉄の盾というのであれば、魔力のこもった魔剣であれば切り裂ける。

そう思っての攻撃だった。

だが、振り下ろす剣が当たる直前に嫌な感じがした。

なにかは分からない。

しかし、とっさに反応できたのは、普段から俺が魔力の流れを扱う訓練をしていたからかもしれない。

攻撃に用いるために体の各部の筋肉に魔力を送り、身体能力を高める。

さらには攻撃のために魔剣にも魔力を流し込んでいた。

が、相手の動きを細かく察知して、こちらも最適な動きで攻撃できるように視力も高めていたのだ。

魔力の流動によって、普段から無意識にでも行えるようになっていた攻撃前に自身の眼を魔力で強化しておく癖ともいえる動作。

それが、今回の反応につながったのだろう。

魔剣の攻撃直前に感じたのは、相手も魔力を動かしたということだった。

その男がぺリア国でどういった地位の者かは知らないが、さっき自分でも言っていたとおり歴史ある家の生まれなのだろう。

だが、それに胡坐をかいて軍の指揮を執っていたわけではなさそうだ。

ただの魔力が多いだけの力自慢の男ではなかった。

ほかの連中と違い、魔力の扱いもしっかりと鍛えているのだろう。

生まれた時からの自力だけを頼りに周囲を従えてきたのではなく、こいつもたゆまぬ努力をしてきたというわけだ。

そうして、魔力を肉体の強化だけに使うのではなく、盾に流し込んでこちらの攻撃を防ごうとしてきた。

魔術かもしれない。

ここ、東方ではフォンターナ連合王国と違い魔法を持つ貴族家という存在が存在しない。

が、そのかわりに魔術師はいる。

【流星】の使い手や【黒死蝶】の使い手、あるいはシオンのような【占い】だってそうだ。

個々人が鍛え上げた魔力で行う不思議な術。

魔法のように言葉を発して発動するというわけではなく、ただ魔力の操作のみによって発現する秘密の切り札。

それをこいつも持っていた。

だからこそ、バルカ教会を攻撃して、現れた俺を討つためにこんな作戦をとったのだろう。

俺の魔剣による攻撃は、とっさの反応で動きを変えることができたが、しかし、完全には止められなかった。

全力で盾ごと切り落とすつもりの攻撃をやめ、魔剣の軌道をずらしてなにが起こってもいいように次の動作に移れるように気を配る。

が、それを見て、相手が踏み込んできた。

俺が軌道をずらした魔剣に向かって盾をぶつけるように押し出してきたのだ。

その結果、盾が爆発した、ように感じた。

いや、違う。

爆発したのは盾ではなく、盾と触れた魔剣だった。

その爆発で、俺は体前面が吹き飛ぶような衝撃によって後方に飛ばされたのだった。