軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バイデンの町からの救援要請

「救援要請? どこからだ、アイ?」

「バイデンの町です、アルフォンス様。町の長であるバイデン様から救援の要請が来ていますがいかがいたしますか?」

「いくよ。出撃できる準備をさせてくれ。オリエント国国防長官としてではなく、バルカ傭兵団として動こう」

「かしこまりました。準備いたします」

ガロード暦十四年。

あっという間に時間が過ぎて年越しを迎えたばかりというところで、驚くべき報告が届いた。

霊峰の麓にあるバリアントから南下してオリエント国に来るまでにある一つの町から救援要請がきたのだ。

普通はこんなときにそんなことを言ってこないだろう。

だって、基本的には暖かい時期に軍事行動というのは起こるのだから。

だが、報告をさらに詳しく聞いて合点がいった。

どうやら、小国家群にいた独立勢力の残党たちが北上したらしい。

ここ最近はオリエント国周辺の小国をはじめとしてバルカ教会の勢力が増した地域では、それまで力をつけて街などを占拠して地盤を得ていた独立勢力が急速に追い込まれていた。

バルカ教会の儀式で街中ではむやみに魔法を使えなくなってしまったりして、もともとの支配者たちによって再占拠されてしまうところが増えたからだ。

そんなふうに劣勢に立たされた独立勢力は元の支配者のもとに取り込まれたり、排除されたりしたのだが、残党というのもいたらしい。

力によって支配していた街から追い落とされ、それでもそれまでのように自分たちが上に立ちたいと考えた者は、移動をしたのだ。

バルカ教会の影響がなく、占拠しやすい街を探して。

しかし、まさかそんなに北上して、街とは言えないようなバイデンの町にまで手を伸ばすとは思いもしなかった。

だけど、案外狙いは悪くない気もする。

というか、霊峰の麓にあるバリアントの街はブリリア魔導国とも取引を行ったことがある場所だしな。

そんなバリアントから来たという俺がオリエント国にいるのだ。

いずれ、その地は重要な交通の要衝になったりするかもしれない。

まあ、そんなことを考えずに手を出しやすい場所を狙っただけなのかもしれないけれど。

「ヴァルキリーも出すぞ。騎兵中心で行く。早いところ行って、バイデンを助けとかないと報酬の交渉相手がいなくなるしな」

なるべく早く行こう。

バイデンの町からオリエント国までをわざわざ伝令を走らせて助けを求めてきたくらいだ。

おそらくは、自分たちの力では対抗できないと考えたのだろう。

そして、その伝令を出してから到着するまでには時間がかかっている。

今頃はすでに攻撃を受けているはずだ。

さっさと助けに向かうとしようか。

「俺も行くぞ、アルフォンス」

「いいのか、イアン? 子どもの面倒を見ていなくて」

「いいさ。それに、しばらく俺は戦場に出ていない。誰が相手でもいいから戦って勘を取り戻しておきたい」

「確かに。俺もそうだな。ここ数年、研究と工事ばっかりで、戦えてないし。せっかくだから、一緒に暴れようぜ」

出撃の準備を整えていると、話を聞いたのかイアンもやってきた。

確かにイアンの言うとおりで、しばらく戦いの場に出ていないから実戦勘が無くなっていたりするかもしれないな。

今回は俺とイアンと、あとはヴァルキリーに騎乗できる強化兵たちを連れていこう。

どうせなら、魔石を体に埋め込んだ例の傭兵たちもここらでしっかりと実戦投入して、血を吸う感覚でも養ってもらおう。

そう考えて、百頭ほどの騎兵部隊がバルカ傭兵団からバイデンの町へと救援に向かったのだった。

※ ※ ※

「おお、やってるな」

「防衛している、のか?」

「みたいだね。バイデンの町の一部を壁で囲んで、そこで籠城しているんじゃないかな? だから救援を出したんだろうね」

ヴァルキリーに騎乗して、ひたすら駆け続ける。

もちろん、俺は小型の吸氷石を持っているので、冬時期であるにも関わらずに寒さを無視してここまで来ることができた。

ほとんど疲れもなく、バイデンの町へと到着した。

さすがに白犬人が住んでいたエルメラルダと呼ばれる霊峰の中の一つの山にも近いだけあって、九頭竜平野と言われる小国家群と比べても雪が多い。

正直、こんなところで町を襲う連中も相当頭がおかしいんじゃないかと思った。

が、なりふり構っていられないのかもしれない。

それまで占拠していた街を追い出されていきついた先の山の中。

しかも、冬が到来している。

普通に考えたら食べるものにも困るはずだ。

だからこそ、普通の取引ではなく、町を襲って食料を手に入れてしまおうと考えたのかもしれない。

だが、バイデンの町もそれなりに対処していたようだ。

このへんも魔法を使える奴が増えてきていたのだろう。

町の中の一角を壁で囲って防衛していたのだ。

独立勢力残党たちはそれまで壁で囲まれた街の中にいる側だったので、壁の外から攻撃を行う機会は少なかったのだろう。

かつては自分たちが守りに使っていた壁が思った以上に分厚くて抜けないからか、壁の攻略に手間取っている。

「どうする、アルフォンス? すぐに攻撃するか?」

「それもいいけど、バイデンは生きているんだろうな? とりあえず、こっちが救援に来たことを知らしてから攻撃しようか」

「どうやって知らせる? 壁の中にいるなら連絡が取れないだろう?」

「……矢文でも送るか。俺が柔魔木の弓で壁を越えるように矢を放って、それに手紙を括りつけておいて連絡を取ってみるよ。それをやってから、外にいる残党連中を始末しようか」

そう言って、魔法鞄から柔魔木の弓を取り出す。

その弓に魔力を込めながら、弓を弾き絞りつつ、俺の騎乗しているワルキューレが走り始めた。

真っ赤な毛並みのワルキューレは白い雪景色によく目立つ。

そんな赤のワルキューレが壁に急接近し矢を高く放ち、それを合図に白の騎兵たちが残党連中に猛攻をかけた。

こうして、山間の小さな町で冬の戦闘が始まったのだった。