軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強化兵

「どうだ、エルビス? 魔石を埋め込んだ傭兵たちは」

「面白いことになっていますよ、アルフォンス様。さすがです。まさか、あのような方法で魔力が増えるとは思いませんでした。これならば、さらにバルカ傭兵団は強くなっていくでしょう。戦えば戦うほどに強い兵が増えていきますよ」

冬になったが、吸氷石の像のおかげで寒さが和らいでいる新バルカ街。

そこにいたエルビスと話し込む。

俺が行ったアルフォンス式強化術の様子を一緒に観察しながら話していた。

ブリリア魔導国の魔導迷宮にて手に入れることができる赤黒い魔石。

こいつは迷宮内では魔導兵というさまざまな金属でできた自立型の鎧として出現する魔物の核になっているが、そこに俺の血を与えて鮮血兵ノルンを作り出すこともできる。

そんな魔石に俺の血を入れた状態で、バルカ傭兵団の傭兵の体の中に埋め込むことにした。

少しでも傭兵たちの魔力量を上げることができないかと思ってのことだった。

どうやら、それは成功したみたいだ。

しかも、思っていたのとは少し違う効果もあった。

というのは、戦うほどに魔力をあげられることが期待できるようになったからだ。

アイへの報告のためにも情報をまとめていく。

まず、もっとも心配だったのは体の中に入れた魔石が消えてしまわないかという点についてだ。

赤黒い魔石もただ人体に入れた場合には消失してしまうらしいということが分かった。

これはつまり、魔石に魔力をたくさん込めて肉体に埋め込んでも、総魔力量の上昇にはつながらないということだ。

だが、ノルンが入っている俺の血が含まれた魔石に限っては、そうはならなかった。

もしかしたら、もともとそいつらの体の中にノルンが入り込んでいたのがよかったのかもしれない。

バルカ教会における儀式では、儀式を受ける対象の体の中に俺の血を送り込んで誓いを破った者には罰を与える。

つまり、以前からノルンという存在が傭兵たちの体の中にいるということだ。

そんなノルンの入った魔石だからこそ、うまく適合して体に馴染むのかもしれない。

実際、一度魔石を入れた後に、しばらくしてから取り出してみようとすると、魔石からその周囲に広がるように細かな血管が広がっているのが確認された。

魔石だけのときには見られないその現象は間違いなく俺の血が作用しているのだと思う。

で、うまく魔石が体に定着したが、それが魔力量の上昇につながるのかという点が問題になる。

ただ単に体の中に魔力のこもった魔石があるだけでは意味がないのだ。

一番重要なのは総魔力量が上がる、つまり位階の上昇が起こるかどうかというところにあるのだ。

名付けによって手に入れた魔法は、全員が同じ数の魔法を使えるわけではない。

ある一定の魔力量を越えなければ、上位に位置する消費魔力量の多い魔法は使えないからだ。

ある領域に到達すれば、一瞬でその魔法の呪文と効果が理解できるのだが、その域に達していない場合はどれだけ説明を受けたとしても使えない。

つまり、強化術として重要なのは、体に取り込んだ魔石に魔力を込めることで、位階が上がる効果が期待できるかどうかだった。

アルス兄さんが行ったバルカ式強化術はこれができていたからこそ位階の高い兵を揃えることができたのだ。

そして、俺のアルフォンス式強化術もこれができていたようだ。

胸の中央に魔石を埋め込み、胸部から手足に広がるように血管が広がった傭兵たちの中に、今までは使えなかった魔法を使えるようになった者が見られたからだ。

一人や二人というわけではないので、間違いなく位階の上昇効果があるのだと思う。

が、予想外の効果というのはそれだけではなかった点だ。

その強化術を行った者たちの中に、俺と同じように吸血で魔力量を増やすことができるようになったというのが、面白い実験結果として現れたのだ。

最初はただの偶然だった。

今回の実験するときに、体のどこに魔石を移植するのがいいのかというのも確認するために、あちこちに分けて試していたのだ。

基本的には胴体部分に魔石を埋めこんでいたのだが、手や足などの四肢にも魔石を埋めこんだ者がいた。

そんな連中の中で、手のひらなどに魔石を埋めこんだ者が、手から血を吸えるらしいことが判明したのだ。

そいつは傭兵団の中でも衛生兵として、訓練で傷ついた他の傭兵の手当などをする機会が多かった。

その手当の時に手のひらに血がつくことがあった。

普通ならば手が汚れるだけで終わる。

が、そうはならなかった。

いつの間にか、血で汚れていた手のひらから付着していた血が無くなっていたというのだ。

その話を聞いて、すぐに検証した結果、体表部に俺の血が含まれた魔石が表出している状態の者は、そこから血を取り込めることが分かったのだ。

これは魔剣の一種に近いと言えるかもしれない。

俺ならば自分の血でできた魔剣で相手を切ることで、相手の血を吸い込むが、その魔剣の代わりとなって魔石が血を吸い取るのだ。

もちろん、その血を吸い取る行為は魔力を取り込むことにもつながっていた。

つまり、手のひらに魔石を埋めこんだ者は、他者の血で魔力を得られることを意味していた。

そして、それは魔石から広がる血管を通して自分の肉体と深くつながっているので、自己の総魔力量を成長させることもできる。

すなわち、俺と同じ吸血ができるということだ。

もっとも、だからといって血でできた魔剣を出したり、寿命が延びたりはしないだろうとノルンは言っているのだけれど。

「十分でしょう。寿命など関係ありませんよ、アルフォンス様。この強化術があれば、戦場に出て血を浴びるほどに魔力量を伸ばせることになります。最強の軍が出来上がりますよ」

「そうだな。とりあえず、ヴァンデンブルグ家からもっと魔石が手に入らないか頼んでおくよ。なるべく多くの兵を強化しよう」

最初は子どもの魔力量について調べていたけれど、いつの間にか兵への転用になっちゃっていたな。

まあ、いいか。

母体と胎児の魔力量の関係も重要だし、そっちも今後人相手でもしっかりと調べていくことにしよう。

今は、この強化術をできる限りの傭兵たちに使って強化を行っていこう。

俺とエルビスは使える限りの魔石を使って、何人もの強化兵を生み出していったのだった。