軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

改宗による影響

『相変わらずすごいことをしているでござるな。まさかそのような方法でバルカ教の信者を獲得するとは考えもしなかったでござるよ』

オリエント国の首都にある俺の屋敷で、魔導通信器を使って会話をする。

その話し相手は未だブリリア魔導国にいるバナージだ。

今のオリエント国やバルカ傭兵団、そしてバルカ教会の現状について説明したところ、そんなふうにため息交じりで言ってきた。

『けれど、その方法では他国が文句を言ってくるのではないでござるか? 自国内の土地の支配をバルカ教会が認めるようなものではござらんか。本来、自分たちの支配地だった場所が奪われる形になるのでは、面白く思わないではないでござるかな?』

「実はそうでもないんだよね。確かに、グルーガリア国やほかの国も最初は文句を言ってきたんだ。けど、各地の独自勢力の者たちがバルカ教に改宗した結果、どうなったかというと、もとの国に帰属する形で落ち着いていってるんだよ」

『どういうことでござるか? 街などを壁で囲って自らのものとした者たちが、ふたたび国に帰属することなどあるのでござるか?』

「ああ。バルカ教に改宗して信者になるってことは、儀式を受けるってことでもあるからな。あれにはいろいろ制限がつくから、今までどおりにはいかないんだよ」

たとえば、といって以前改宗しにきたメルビーの街のビングという男の話をバナージに聞かせてやる。

ビングはもともと力自慢で戦場でもそれなりに活躍していたらしい。

それがある時、魔法を手に入れた。

他者から【命名】で名付けられ、魔法を手に入れたビングはその力を自分の下につく者たちにも名付けをすることで与えたのだ。

その結果、以前までよりもさらに魔力量が増え、名付けした連中と徒党を組んでメルビーの街を支配するに至った。

だが、それは力による支配だった。

もともとあったメルビーの街を力によって奪い、壁を作って立てこもり、国からの要請も無視することで街を自分のものとしただけなのだ。

力自慢の自分のもとに集まった部下は、当たり前だが頭がいいとは言えなかった。

結局のところ、メルビーの街はビング一党に占拠されていただけにすぎないのだ。

もちろん、地の人間がビングたちを支持していた面も確かにあるのだろうけれど。

ビングの部下たちは喜んでいた。

自分たちの頭が街を手に入れて、その街で大きな顔をして歩き、うまいものを食い、遊ぶことができたからだ。

しかし、ビングは喜んでばかりもいられなかった。

まともな街の運営も出来ず、各地が不況に陥った状態で、先行きは暗いことがわかっていたからだ。

その意味では、ビングはまだ頭が悪いとはいえなかったのだろう。

だから、自分の状況を把握し、そしてほかの自分たちと似たような町や村を占拠していた独自勢力がつぶされていっていると知り、危機感を持った。

なんとかして、生き延びねばならない。

そのための奇策として考えたのが、バルカ教への改宗だ。

バルカ教の信者となることで、バルカ傭兵団から襲われなくなるどころか味方してもらえるかもしれない。

というか、バルカ教会から自分たちを街の真なる支配者であると認めてもらえるという淡い希望もあったのだろう。

だが、ビングたちは知らなかった。

バルカ教会には不思議な儀式があるということを。

ハンナやほかのバルカ教会を任せる者に持たせている赤黒い魔石を核にした俺の血でできた法具があった。

バルカ教に改宗したビングはそれに触れて誓いをたてたのだ。

これからはバルカ教の教えに従って生きる、と。

もちろん、それは普通の儀式ではなく、強制力を与える実行力のあるものだ。

赤黒い魔石を使い、俺の血を与えたそれは相手からの血を受け取りつつも、その儀式を受けた者の体にたいして俺の血を入れる。

そうすることで、そいつが誓いを破れば心の臓に激痛を与えるという効果があった。

その誓いの際にはハンナたちから内容についてきちんと説明がなされている。

バルカ教の教えや法を守る。

裁判では嘘偽りなく答える。

そして、街の中ではみだりに魔法を使わない、などがあった。

魔法については【身体強化】などはいいが、勝手に土地を変化させるようなことは混乱を招くということもあり、【道路敷設】や【線路敷設】のほか、【壁建築】なども禁止されている。

つまり、今まではメルビーの街が攻撃された際、新たに壁を作り守りをさらに固めるなどができたが、それも出来なくなってしまったのだ。

それだけではない。

バルカ教の教えを守るというのがある。

これは、細かな規則ではないが、社会秩序を守るための大まかな決まりがあった。

そのなかには、人を殺したり傷つけてはいけないや、他人の物を奪うな、壊すななどの当たり前のことが記されている。

ビングやその配下は改宗すると決めた時、それらの決まりは知っていた。

儀式を受けると聞いたときにも説明を受けた。

だが、それはあくまでも口約束程度にしか思っていなかったのだろう。

まさか、その誓いを破ったら、即座に胸が痛み、呼吸すらもまともにできない状況になるとは考えもしていなかったのだ。

バルカ教へと改宗すると言った独自勢力は、バルカ教の教えを守らなければならない。

人としては当たり前のことばかりだ。

だが、それは今までどおりに好き勝手にできることを意味していない。

こうして、改宗した独自勢力の首領たちは抵抗する術を失い、もとの国による支配に取り込まれることとなった。

グルーガリアなどがバルカ教会の信者獲得を認めているのも、こういう利益があるからこそというわけだ。

ちなみにビングのような独自勢力が行う最適解は、金目の物を全て持ち出し、バルカ教に改宗した直後に資産全てをエンに換えた状態でオリエント国に移住することだろう。

街の支配はできなくなるが、金だけは残せるからな。

最初は自分たちがおいしい思いをできなくなることを嫌がってそうしない連中も多かったが、状況を知り、抵抗できないと悟った者のなかにはそうする者も出てきている。

意外とこれでうちに銀貨が流れてくるので、こっちもおいしいし積極的にオリエント国に流れてきてほしいくらいだ。

こうして、オリエント国を中心に、各地でさらに勢力図の変動がおき始めていたのだった。