軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結婚のために

「えー、アル様、結婚するんですか?」

「結婚っていうか婚約かな? ブリリア魔導国の慣習だと男性の結婚する年齢はだいたい十五歳以降ってのが多いみたいだから。だから、十二歳の俺が結婚はできないよ」

「でも、婚約するってことは結婚と一緒なんじゃないですか、アルフォンス様? おめでとうございます。お相手はどういう方なのでしょうか?」

「さあ? まだわかんないかな。バナージはソーマ教国が小国家群に手を伸ばしてきた時にこっちに援軍を出せる軍を持つ相手を最低条件に探しているはずだ。それに合う貴族家で結婚できる年齢の女性がいるところを探して検討するんじゃないかな」

「な、なんというか、落ち着いてますね。普通、相手のことがもっと気にならないですか?」

「そうかな? こういうのは別に普通のことだと思うけど」

俺が結婚についてバナージに承諾をした。

それを聞いたミーティアやハンナが驚きながらあれこれと言ってくる。

ハンナにも言ったが、俺の結婚はまだ先の話になりそうだ。

今のところは婚約を結ぶという形で話が進みそうだからだ。

確かに厳密には正式な結婚とは違うが、婚約も十分大きな意味を持っている。

それは、援軍を出す根拠になる点だ。

なんの関係もない相手には普通援軍を要請もできないし、軍を出すこともできない。

が、婚約でもいいからつながりがあれば、それも可能になる。

いざというときにお互いが戦力を送り合えるという状況が成立していれば、向こうの派閥的にも助かるのだろう。

派閥間での争いが発展した際には国外からも軍が来るのだから。

そして、それはこちらも同じだ。

現状では一番気を付けなければならないのはソーマ教国が小国家群に来る可能性だが、それ以外にもこの婚約は価値がある。

それは、小国家群の中での勢力争いについてだ。

これまでは外交力で武力の弱い面を補ってオリエント国は存在してきたが、大国であるブリリア魔導国の中の力ある貴族家からいつでも援軍が来る可能性があるとなれば、それだけで攻められにくくなるということだ。

バナージが俺の婚姻について頑張ってくれるのは、別に俺と知り合いだからというだけではない。

バナージにとっても国を守るために意味があるからに他ならないのだ。

「まあ、そういうわけであと数年もしたら俺の結婚式を挙げることになるからよろしく頼むよ、ハンナ」

「……え? 私がアルフォンス様の結婚式で何かするんですか?」

「そりゃそうでしょ。この話は軍事協定の意味もあれば、バルカ教会の布教にも関係しているんだから。結婚相手の条件にはバルカ教会のことを領地内で布教可能にするようにっていうのもあるんだぞ。だったら、そのバルカ教会で結婚式をしないでどうするんだって話だろ」

「いや、でも、私なんかがアルフォンス様の結婚に関わっていいんですか? だって、相手は歴史ある貴族の方なんでしょう? 無理ですよ、そんなの。緊張しすぎて死んじゃいますよ」

「何言ってんだ。このバルカ教会のことはハンナに任せるようになってんだろうが。そんなんでどうするんだよ。それに、今も結婚式は時々やってんだから、その時もいつもどおりにやればいいだけだって」

「そんなわけにはいきませんよ。私が相手に礼儀知らずだって思われたら、それだけでアルフォンス様の信用にも関わってくるんですからね。それに、着るものとかもどうしましょうか。今着ている服なんて庶民向けだって笑われちゃいますよ」

「……分かった。じゃあ、今から準備をしていこう。ハンナはこれから毎日アイに礼儀作法を教わりなおしだな。ブリリア魔導国とオリエント国の作法を両方とも習って、どっちの視点からでも高評価を得られるように準備すること。いいな?」

「ええ!? そんなの難しすぎますよ」

「大丈夫だ。時間はある。幸いあと三年はあるんだし、毎日やってれば十分間に合うよ。あと、着るものとか装飾品も今から用意していこうか」

確かにハンナのいうことは一理あると思った。

結婚式はバルカ教会で行うのは絶対条件だが、それが理由で相手の評価を下げるわけにはいかない。

むしろ、俺の結婚式で相手の評価を上げる必要があるくらいだ。

そのためにはいまから準備していく必要があるかもしれない。

というか、三年という準備期間は短いくらいかもしれないな。

教会だけじゃない。

結婚相手は貴族だ。

家族だけで来るわけではないだろう。

どのくらいになるかは分からないが、付き人や護衛の兵が一緒に来る。

そうしたら、泊るところなども気を付けないといけない。

どんなに結婚式場の教会での礼儀作法に気をつけていても、宿泊する場所で失礼があったらおしまいだからだ。

そうなると、ハンナ以外にも礼儀作法を習わせて、どんな貴賓が来ても受け入れできるようにしておく必要がある。

調度品も貴族に認められるものを揃えないといけないだろう。

ローラにも相談しようか。

高級娼婦としての経験と議員としての活動経験があるローラなら、オリエント国らしさを出しつつも他国の人間を迎え入れるときに注意すべき点についても詳しいだろうしな。

思ったよりも忙しくなりそうだ。

こうして、俺の結婚に備えて新バルカ街では結構な数の人間に客をもてなす技術向上を行う講義を開くことになったのだった。