軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

獣人とは

「なあ、アイ。エルちゃんたち、白犬人ってほかにも見つけられないのか? 鉄を銀に変えるならもう少し数がいたほうがいいだろ? 繁殖もすぐにってわけじゃないみたいだし、ほかにも群れがいるなら連れ帰ってきたほうがよくないか?」

魔道具相場のあれこれがありつつも、普段どおり仕事をしていく。

あちこちで行っている工事の監督をしつつ、オリエントや新バルカ街での報告に目を通していた。

そのなかで、気になるのがやはりエンに関することだった。

新しく自分たちで作ったものだけに、少しの変化でも気になる。

そんなふうに毎日エンについてあれやこれやと考えていると、何度も頭に浮かぶことがあった。

それは、エルちゃんたちをもっと増やせないのかというものだ。

冬の時期に霊峰にまで赴いて連れ帰った白犬人は全部で二十四頭だ。

そいつらを新バルカ街で飼育しながら、鉄を銀に換えさせている。

それ自体はうまくいっているのだが、どうにも効率という面で言えばあまりよくはなさそうだ。

魔法を使える回数に限りがあるからである。

一頭当たりの魔力量に限りがある以上、それはどうしようもない。

アルス兄さんは初めて白犬人であるタロウを捕まえた時には、銀を作り出すのにわざわざ新しい鉄を使用したという。

炎鉱石という特殊な素材を使って作り上げた炎高炉を使い、鉄を鍛え上げる。

バルカ鋼という少し変わった模様の鋼にしてからタロウシリーズに錬銀術を使わせるという対策をしたのだ。

これは、ただの鉄鉱石からよりも鋼に鍛えてから錬銀術を使ったほうが、一度の魔術でより多くの銀を手に入れられるからという理由らしい。

多分不純物を取り除くことで、純度の高い銀が手に入るのだろう。

それを真似しようと思っても炎鉱石がない以上、炎高炉は作れない。

なんとか、硬化レンガを使ってこれまでよりも高温が出せる炉を作らせたが、どうしてもバルカニアと比べると効率的には負けていたのだ。

なので、金属の純度では勝てなさそうなので、せめてエルちゃんたちの数を増やして銀の生産速度を早められないかと思ったのだ。

「犬人は発情期というものがあります。人間のようにいつでも生殖行為を行わないため、繁殖には時期というものを考慮して行う必要があります」

「……つまり、いつでも交尾するわけじゃないから増えにくいってこと?」

「そのとおりです。そして、おそらくですが白犬人は黒犬人よりも発情期になる間隔が長いのではないかと思います。当初予定していたよりも、繁殖は遅れる可能性があります」

「え、そうなんだ。それは困ったな。いや、別に今すぐに銀を増やす必要があるわけでもないんだろうけど」

「いいえ。できれば当初の予定通りに繁殖を進めておけたほうがよかったのは事実です。エンの発行総額はもう少しあるほうが望ましいので」

あ、そうなんだ。

珍しいことにアイにとってもこれは想定外だったみたいだ。

アイの中では冬に捕まえたエルちゃんたちの数をこの秋には増やせているはずだった。

だけど、それが想定通りにいっていないという。

今のところ、一頭だけが妊娠している状態で、まだ増えていないのだ。

そのために、銀を生み出す速度も予定より遅くなってしまっていた。

バルカニアには白犬人はいるが、それはタロウから作った個体のみで、つまりはオスだけだ。

母体には黒犬人のメスを使っているらしいが、どうやら黒と白で繁殖できる時期が違うということなんだろう。

今までに分かっていなかった新たな情報で、こればかりはアイも知らなかったようだ。

(なんだ? あの犬っころの数を増やしたいのか?)

(ん? そうだよ、ノルン。っていうか、珍しいな。こういう話に食いついてくるなんて)

アイとそんなことを話し合っていると、俺の頭に思念が流れた。

ノルンからだ。

俺の血と同化しているノルンが、アイとの会話に口を出してきたということになる。

これはあんまりないことかもしれない。

ノルンにとってエルちゃんたちの繁殖なんて興味なさそうだが、どうしたんだろうか?

(あの白犬を増やしたいってのは、鉄を銀に変える技を使えるやつを増やしたいってことだろう? なら、他にも方法があるぞ)

(え、そうなの? どうするんだ?)

(さっき、そこの人形も言っていたがあの犬っころは繁殖する時期が決まっているから増やしにくい。なら、いつでも繁殖する奴とかけ合わせたらいいだけだろう)

(んー、それって黒い犬人のことを言っているのか? 確かに、バルカニアでの研究では黒犬人はもう少し繁殖期の間隔が早かったから増やしやすいみたいだけど、東方では黒犬人は見つかってないんだよ。だから難しいんじゃないかな?)

(何を言っている。別に黒い犬なんかいなくてもいいだろう。そこらの人間と繁殖させればいい)

(……は? 人間と? それこそ、何を言ってるんだ、ノルン。人間と犬人が子ども作れるわけないだろ)

(おいおい。本当に何を言っているんだ、アルフォンス。お前は自分の家に獣人の子孫の血を引く連中を囲っているだろうが。あいつらの祖先も元をたどればああいう犬猫だから、子どもくらい作ろうと思えば作れるだろうが)

ええ?

本当なのか、それは?

いや、確かに昔ノルンから聞いた話も今思い出せばそんな感じだったかもしれない。

東方世界のさらに海を渡った魔大陸と呼ばれる土地には獣人がいた。

それは二足歩行する獣だったって言っていたような気がする。

その獣人を魔大陸で見つけた者のなかには、かなり変わった思考の連中がいて、そういう二足歩行している毛むくじゃらの獣との間に子どもを作った奴がいたらしい。

そうして、獣人と人間の間に生まれた連中がさらに人間と子どもを作ってと、何度も繰り返した。

その結果、獣人との混血の子孫と呼ばれる、頭に獣耳やお尻に尻尾という、獣人の一部の特性を引き継ぐ者が出現したのだとか。

ミーティアやユーリは【獣化】の魔法を作り出したけど、あれはけっして獣人になる魔法ではなく獣人との間にできた混血の子孫に近づく魔法だということになる。

つまり、ノルンの言いたいことはこうだ。

犬人というのは魔大陸で見つかった獣人と同じようなもので、それならば人間との間に子どもができるはずだということだ。

そして、話の内容的にそいつらは錬銀術を使えるのかもしれない。

まじかよ。

まさか、あんな魔物が獣人だったとは思いもしなかった。

どうしようか。

だれか、あれと交尾したがる人間っているのだろうか?

俺は思いもしなかったことをノルンに聞かされて、しばらく固まってしまったのだった。