軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな腕輪

「ただいま、ミー」

「おかえりなさーい、アル様。わー、その子たちどうしたんですか?」

「犬人っていう魔物だ。大雪山にあるエルメラルダってところから手に入れてきたんだ。今日からここで飼育するから、できたらミーも面倒を見てあげて」

「分かりましたー。にゃんにゃん。ほらほらー、私も耳があるの。よろしくね、エルちゃんたち」

バイデンの町からさらに移動し、新バルカ街まで戻ってきた。

エルメラルダからバイデンの町までは白犬人たちをヴァルキリーで取り囲んで移動していたが、そこからは荷車に詰めての移動だ。

これは、あんまり魔物を捕まえたことを見せないための配慮だ。

どんな貨幣を作るにせよ、そのきっかけとなるのが白犬人のような魔物だというのを知られないほうがいいだろうからな。

中の様子が見えない馬車のような形で白犬人を運び込んだ新バルカ街で、そいつらを出迎えてくれたミーティアに見せる。

すると、魔物相手だというのにミーティアが非常に喜んでいた。

【にゃんにゃん】と呪文を唱えて自分の頭にも耳を出すことで、二本の脚で直立している犬人たちに自分と同じだと見せていた。

魔物と同じっていいのかそれは?

そう思ったが、犬人たちの顔も心なしかほっとしているようだ。

ここまではヴァルキリーや兵たちににらまれながらの移動だったからな。

到底同じには見えないけれど、頭に獣耳がある人に迎えられて親近感でもわいたのかもしれない。

ひとまずは、そんな犬人たちの心をつかんだミーティアに世話を任せることにした。

エルちゃんたち、と急に呼び名が決められた犬人がミーティアに連れられていく。

「おかえりでござる。アイ殿に言われて腕輪を新しく作っておいたでござるよ」

「ああ、ありがとう、ガリウス。量産は出来そう?」

「問題ないでござるよ。基本的には今までにあった技術を使っているだけでござる。ただ、バルカ教会に入信した信者というのはもうすでに多いでござるから、全員分にいきわたるまでにはちょっと時間がかかるでござるよ」

「そうか。なるべく急いだほうがいいみたいだから、なんとか頑張ってくれないか? 俺のほうからもオリエント魔導組合を通して新しい腕輪作成を頼んでおくよ。で、それが実物だよな。見せてもらおうか」

白犬人改め、エルちゃんたちをミーティアに引き渡したのを見て、今度はガリウスが話しかけてきた。

その手には腕輪型魔道具を持っている。

新しく機能を取り付けた新腕輪だ。

バイデンの町から新バルカ街に戻ってくるまでに試作品を作るようにお願いしておいたのだ。

こういうときにアイがいるというのは本当に助かる。

俺のそばで新しい形の貨幣について話していたアイとは別の体のアイが新バルカ街にはいる。

そのアイがガリウスへと直接伝えて腕輪作成をさせていたのだ。

ただ、その中でもガリウスがちょっと工夫を見せたようだ。

アイからお金のやり取りができるようにするための新しい腕輪だと聞いて、東方仕様にしてくれたのだ。

天空王国仕様の場合は素材に精霊石を用いているために、半透明のガラス板を出現させてそこに残高などの情報を見られるようにできる。

が、ここではそれが難しいために、ほかの方法で金額表示ができるようにしてくれた。

これは、オリエント国で開発された技術だ。

魔道具相場の暴騰が始まった初期くらいのころだろうか。

これがいったいなんの役に立つのかと思った魔道具が当時ではかなり高額の値が付いたということがあった。

それは、ただ単にピカピカと光るだけの魔道具だった。

光が出るというのは面白いとは思うけれど、周囲を光らせたいならば【照明】という生活魔法がある。

ぶっちゃけ、なんの役にも立たないだろうと思いながらも、その魔道具が取引されたという話を聞いていた。

だけど、やっぱりそれは技術者にとっては面白い魔道具に見えていたのかもしれない。

ガリウスは新腕輪にその魔道具の技術を採用したのだ。

腕輪の表面を光らせる。

ただそれだけだが、光る範囲を細かく分け、それをたくさん配置することで面白い仕組みを作り出した。

点描とかいうだったっけ?

小さな光の点をいくつも用いることで、腕輪表面に数字を表示させることに成功したのだ。

天空王国のようにガラス板が出現して情報が記載されたりはしないけれど、ガリウス製のこの腕輪には数字が表示されるようになった。

さらに、その表示された数値を上下させるようにもできる工夫まで取り入れている。

ガリウスが言うには、この腕輪で取引するなら双方が受け取りと支払いの金額を表示させてやり取りするようにしたらどうかというものだった。

たしかに、それなら数字さえ読めれば金額がどれだけ動いたか一目で分かる。

というか、もしその表示がなければ商取引は全く見えない状態でやらなければならないところだった。

アイが機能をつかさどっているので間違いはないと思いたいが、使うほうにとっては表示があったほうが断然扱いやすいだろうし、信用もできると思う。

「いいね、これ。表示が数字に限定されているから、文字が読めない人でも逆にわかりやすいかもしれない。使いやすくていい腕輪だと思うよ。ありがとう、ガリウス」

本当にいい腕をしている。

というか、腕だけじゃなくて発想も素晴らしい。

ガリウスと知り合えたことは、俺にとっても本当に幸運だったと思う。

こうして、わずかな期間で腕輪を金銭取引対応型へと変えることができるようになったのだった。