軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64 婚姻証明書とサイン

ヨハン・ベック伯爵にエスコートされ、王宮内の教会までの道を歩いている。廊下でも庭園での中でも、使用人たちから拍手や祝いの言葉をかけられアデライーデ達はゆっくりと進む。

「ヨハン様はグランドール様の弟君でいらっしゃったのですね」

アデライーデは皇后から贈られた貴族録に目を通した時に、ヨハンのページを見つけていた。

「ええ、私はフランツ兄様の3番目の弟になります。貴族録をご覧になったのですか?」

「はい。今まで気が付かず申し訳ありません」

「全く似てませんからね。それに去年結婚と同時に兄上から爵位を譲られたので、私自身まだこの名に慣れていません」

ヨハンは楽しげに笑う。

--確かに全く似てないから、貴族録見たときにはびっくりしたわ。

そうヨハンと話をしていたら、教会に着いた。

石造りの小さな教会は、王宮と同じく青い屋根で扉は背の高い黒い扉だった。

マリアがドレスの裾を整えると、マイヤー夫人が小さく扉をノックした。

しばらくして中から同じように小さなノックが聞こえると、マイヤー夫人は「ご入場でございます」とアデライーデ達に声をかけ、マリアと一緒に教会のドアを開けた。

祭壇の前にアルヘルムの姿が見える。

金のモールがあしらわれた黒い元帥服を着こなしたアルヘルムに向かい、一歩また一歩と進んでゆく。

アルヘルムの元に着き、ヨハンからアルヘルムへアデライーデが託された時、ヨハンがアルヘルム様と声をかけた。

「陛下よりご伝言でございます。『娘を頼む』とのことでございます」

「もとより」

そう答えたアルヘルムの腕を取り、アデライーデはアルヘルムと2人祭壇の前に向かう。

参列者はゲオルグ、フィリップのみで最前列のアルヘルム側にフィリップ。アデライーデ側にゲオルグがいた。

祭壇の前で教皇により、婚儀の始まりが告げられアルヘルムにアデライーデを娶るかとの問いかけがされる。アルヘルムがバルク国王としてフローリア帝国皇女アデライーデを娶ると宣言されると、アデライーデは同意すると宣言を受ける。

アデライーデの同意を受け、二人が婚姻証明書にサインをすると教皇によりこの婚姻が成立した事を宣言された。

アルヘルムがアデライーデのベールを上げる。

身長差のあるアデライーデを少し抱き寄せ、アデライーデは少し膝を伸ばし、誓いの口づけをすると「今より我が正妃となりました」とアルヘルムが囁いた。

「はい…」

アデライーデは頬を赤らめそう応えると、アルヘルムのさし出しだ腕をとり祭壇を降りる。

「国王陛下、正妃陛下。ご結婚おめでとうございます」と祝いの言葉をゲオルグが贈り、続けてナッサウ侍従長に促されてフィリップが同じように「父上、皇女様ご結婚おめでとうございます」と祝いの言葉を口にする。

アルヘルムの腕をとりベールを上げたアデライーデは庭園で会う時と違う人のようだった。アップした髪にお化粧をしたアデライーデは大人の女性に見えた。

フィリップは、アデライーデが家族になったのだと嬉しく思う気持ちと何か今まで感じたことの無い感情がちくりと胸をよぎったが、それが何なのかはわからなかった。

「ありがとう」

「お二人ともありがとうございます」

そう言ってパレードに向かう2人を、ゲオルグとフィリップが見送る。

アデライーデ達は、このまま貴族たちが集まる大ホールを抜けアデライーデのウェディングドレスをお披露目する。

口々にアデライーデの美しさと、アデライーデが纏う皇后から譲られたドレスやティアラの豪華さを褒めそやす。

2人は貴族達の祝辞を受けると、大ホールを抜け城下へとパレードにでかけた。婚儀を祝うように晴天のバルク城下で国民からの祝いを受け城に戻ると息つく間もなく、ドレスを着替えサッシュと勲章を身に着けた。

アデライーデのウェディングドレスとベールはドールに着付けられ、披露宴の間だけ会場に飾られるらしい。皇女降嫁と言う事で特例のことらしく、貴族女性はとても楽しみにしているからと聞いている。

披露宴が行われる先程の大ホールの扉の前でアルヘルムがアデライーデを迎えると「お疲れでしょう?途中で気分が悪くなったら、私かマイヤー夫人に言って下がるといいですよ」と気遣ってくれる。

--優しいのね。

「大丈夫ですわ。花嫁が抜けるのもお客様に失礼になりますので頑張ります」そう言って握りこぶしを作るアデライーデに、笑いながらアルヘルムは

「無理されずに…。その時は貴女の代わりにウェディングドレスが皆をもてなしますよ」と頬にキスをした。

思わぬ不意打ちのアルヘルムのキスにアデライーデが動揺していると、「貴女とはしばらく白い結婚ですが、夫婦として仲睦まじくありたいと思います」

「お…お…お手やわらかにお願いします…」

アデライーデは動揺を隠しきれない…

「貴女でも、そう言う顔をするのですね」

アルヘルムは、くっくと笑うとアデライーデに腕を回した。

「さぁ、参りましょう」