軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06 ディナーとワイン

「アデライーデ様…」

グランドールが東屋から去ったあと、そのまましばらくぼーっと庭を眺めていたアデライーデにマリアが声をかけた。

「日も暮れてまいりましたし、そろそろお部屋へ戻られませんか?」

「そうね」

「春とはいえ、日が暮れると寒くなります」

そう言っていつの間に用意したのか、あの日の朝かけてくれたストールでアデライーデを包んでくれた。マリアの心遣いが嬉しかった。

「暖かいわ… ありがとうマリア」

そう言って、二人は部屋へと戻って行った。

ーーー

朝食は心配していたマリアの言葉に従ってベッドでスープを取り、昼は暖かいからとベランダのテーブルで軽くつまめるもので食事を済ませたので、陽子さんは、初めて続き部屋についているこじんまりとしたダイニングルームで食事をした。

料理は王宮のシェフ達がしているのであろう。

ダイニングルームの扉の向こうにはかんたんなキッチンがついているようで、運ばれてきた料理をマリアが整え給仕をしてくれる。普段マリアはそこでお茶を用意しているようだ。

概ね現世の簡単なコースと同じだった。

卵とピクルスと鶏肉の3種類の前菜、コンソメスープ、香草のサラダ、肉料理の子牛のロースト。

どれも少しずつきれいに盛り付けられとても美味しい。

そして何より陽子さんが喜んだのは、肉料理の時にグラスに注がれた赤い飲み物。

ワインである!

陽子さんはイケる口。以前より飲まなくなったとはいえ、どちらかと言えば酒豪に近い。

はやる心を抑えてゆっくりとグラスを取りワインを一口、口に含む。

(おいっしいぃ)

流石王宮のワイン。普段の食事に付くワインも良いものを使っていると感心しにこにこと飲み進めているとあっという間にグラスが空になった。

マリアがそっと、お代わりを注いでくれる。

「ありがとう!」

マリアにお礼を言うと、はっと気づく。

アデライーデは、イケる口なのかしらと。

そうよ…未成年だし。飲めないのかも…。でもでも食事に当然のように出してきたわ…飲めないなら出さないだろうし、きっとこの世界では飲むのが普通なのよ。

昔のヨーロッパでは水代わりに飲んでいたって言うし…!

きっと、そう!

陽子さんは「飲んでもいい」という理由を一生懸命考える。それでもやっぱり食事時は2杯までにしよう…というところで自分に折り合いをつけた。

デザートにドライフルーツやナッツの入った一口サイズのケーキに生クリームとベリーのソースがかかったプレートが出てきた時、陽子さんはグランドールが来たときに出してもらった紅茶をリクエストした。

大変美味しかったが、大変名残惜しくその日の夕食は終わった。

夕食後、しばらくして湯浴みの用意ができましたとマリアが呼びに来た。

バスルームに入ると当然のようにマリアも入ってくる…

これは…

やっぱり。本で読んだようにお姫様は侍女に体を洗ってもらうってことよね。入浴の習慣があるのは良かったけど慣れるまで時間かかるかも。

朝、今の衣装を着るときもすべてマリアに着せてもらったけど、絶対一人で着脱できない…。

服というより、陽子さんにとっては舞台衣装や柔らかい鎧の印象に近い。

気軽にソファにゴロリ…なんて絶対できなそうだ。

プライベートなドレスとはいえ、きっとお高いんだろうなというようなドレス。シミなんてつけた日には落ち込みそうだ。

タイル張りの浴室に猫足のバスタブが置かれ横にお湯と水の大きな桶が置かれていた。脱衣室で服を脱がせてもらいバスタブに浸かっていると浴室仕様の服に着替えたマリアになすがままに全身を洗われる。

気持ちいいけど、おちつかないわね。

でも、慣れないといけないわよね。

これからずっと…かも知れないし。

髪をタオルで乾かしてもらい、爪の先までとお肌のお手入れまでしてもらい、フリフリのネグリジェを着せられる。

……慣れないといけないわよね。

思わずため息が出そうになった。

陽子さんはパジャマ派だ。一度可愛らしいネグリジェを買ったことがあるが旅館の浴衣と同じで朝起きた時はあられもない姿になっていてからずっとパジャマで過ごしている。

寝る時もお淑やかにしないと…

いや、朝チェックすればいいのよね。

一人で寝てるんだもの。

ガウンを羽織り、寝室に移動するとマリアが

「お休みになりますか?それともなにか暖かいものでもお持ちしましょうか?」と尋ねてくれた。

「そうね…ワインを持ってきてもらえるかしら…」

「…ワインでございますか?」