軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

173 メニュー会議と男達の戸惑い

「えーっ、こほん!では、今からメニュー会議を始めます!」

パチパチパチパチ!

離宮の食堂で、アデライーデとマリアとアメリーが食卓につき、レナードとミア達がその後ろに並ぶ。

アルヘルムからの手紙で、帝国でのカフェの場所が決まったと今朝知らされた。

メニューによって料理人の人選が決まるので、アデライーデにメニューを決めてほしいとアルヘルムから頼まれたのだ。

「アデライーデ様、こちらがソフィーから送られてきたスケッチブックですわ」

アメリーが差し出した大判のスケッチブックを開くと貴族の屋敷の内装と外装がスケッチされていた。ソフィーもアメリーに負けず絵が上手い。リアルな屋敷が描かれていた。

「あら…店舗じゃないの?」

「良い店舗がなくて、領地に引退なさる子爵の方のタウンハウスをご用意されたそうです。ソフィーが言うには趣味の良い手入れの行き届いたお屋敷だそうですわ」

「そうなのね。良かったわ」

「アデライーデ様、小さな夜会ができるような造りですから店舗より良いかもですわ。厨房もそれなりに大きいようですし…」

「そう?じゃ、問題ないわね」

「まずは紅茶を数種類と炭酸水を使った飲み物ですわね」

「それは外せないわ」

「お食事もされるならワインと炭酸割も必要ですわね」

いつの間にか、エミリア達もテーブルの近くに寄ってきている。

「コースではなくア・ラ・カルトの方が良いんじゃないかしら、女性は一品が多いより、色んなものをたくさん食べたいし…」

「そうですわね…」

「一皿に色々盛るのも楽しいですわね」

「秋にオープンなら、栗やスイートポテトも使いたいわね」

「バルクのお店なのですから、蜂蜜を使ったケーキも良いですわ」

「いいわね!」

「ホットケーキを看板メニューにして、季節のフルーツで見た目を変えるのもバリエーションが増えますわよ」

「サンドイッチに卵焼きを挟んだらどうかしら」

「それでしたら家族への手土産にカツサンドとかどうかしら…」

「ドーナツもいいかも…」

「お土産でしたら巣蜜も良いですわよ」

「男性も愉しめないといけませんわね」

「男性には、からあげやハニーマスタードチキンとかどうでしょう」

「フライドポテトととんかつは外せませんわね」

「オイルサーディンやアンチョビを使った薄いチーズパンとかどうでしょう。甘い物の後にはちょっと塩気がきいたものが欲しくなりますわよ」

「そうですわね!」

「アンチョビをポテトに混ぜても美味しいわよ」

「それ…パイに詰めたらどうでしょう?」

「いいわね! あ、もうすぐたい焼き器ができてくるわ」

「なんですの?それは…」

「お魚の形に焼けるお菓子の型なのよ」

「海のあるバルクっぽくて良いですわね」

「バルクっぽいと言えば、海老を使ったサラダとか」

「海老は輸送が難しいわ…考えないと…」

「お魚のサンドイッチも良いですわね」

「オープンサンドにしてお野菜をたっぷり添えても良いですわね」

「カナッペとかいいかもですわ」

「あ、良いわね!それ色んなものをちょっとずつ食べられるわ」

「ケーキも小さくしてたくさん選べるのは?」

「素敵ですわ!」

「そうですわ…ケーキも夢のある名前にしてはどうですか」

「良いですわ。そのケーキもお土産に購入できるのはどうでしょう」

「かわいい箱に入れたら家に帰っても楽しめますわ」

「良いですわねー。オイルサーディンとかもかわいいラベルのついた瓶に詰めたら良いですわよね」

「ほんとね。カゴ付きだったらそのまま持っていけるわね」

「レナード様…、あれで会議になっているのでしょうか?」

「………」

「言いたい事を言っているだけにしか見えませんが…」

女子の熱のある話に押されて、後ろでアルトとレナードとグスタフがボソボソと話していた。

「じゃ、1度まとめましょうか」

アデライーデが、ぽん!と手を打つと皆が賛成してアメリーの描いた紙の束を見つめた。

え?今のでまとまるのか?!

男達の声にならない驚きをほったらかして、アメリーが話しだした。

「飲み物は紅茶とコーラと、レモネードとお酒はワインと蜂蜜酒の炭酸割やライムモヒート等数種類。定番のケーキ数種類とホットケーキをメインにソースや季節のフルーツでバリエーションを持たせて…サンドイッチは卵焼きとオイルサーディンのオープンサンドイッチに、カナッペ…アンチョビのチーズパン…。フライドポテトと唐揚げやとんかつ、ハニーマスタードチキンはディナーメインに…ですわね。たい焼き…ですか…それは中身によって変わりますわね」

メニューの1品1品の素描を描いた紙をアメリーは並べていく。アメリーは今まで離宮で食べていたアルトの盛り付けをアレンジして絵を描いていた。

なんて事だ…纏まっている…。

しかも、絵まで描いているとは!

「スーベニアコーナーには、かわいいラベルのオイルサーディンやアンチョビ…蜂蜜の瓶詰めに巣蜜…ですわね…」

「巣蜜はガラスの箱に入れるのはどうかしら…綺麗だから」

「こんな感じでどうでしょう」

そう言うとアメリーはサラサラと、猫足と蓋のつまみにはバラの蕾がついた四角いガラスケースに巣蜜が入っている絵を描いた。

「まぁ…素敵だわ。ケースは後で使えそうね」

「お土産のカツサンドとかケーキもこのコーナーで買えるといいわね」

「このコーナーだけ、お茶や食事をしなくても買えるようにしますか?」

「そうね…その方が色んな人に楽しんでもらえるわね…。こんなところかしら…。ねぇ、レナード。アルトは料理人としてどう思う?」

アデライーデが、各メニューの紙をめくりながらそう言った。

「あら…どうしたの?」

「いえ…何も…。そのメニュー構成でよろしいかと…」と言ってアルトはにっこり笑うがどことなくぎこちない。

レナードが、こほんと咳払いをした。

「アデライーデ様、喉が乾かれたのでは?お飲み物をご用意いたしましょうか」

レナードの提案に、皆は一も二もなく賛成しメニューに加える予定の飲み物で喉を潤した。

アルトはアメリーが描いたメニューの紙を借りると、そそくさと厨房に行き絵を見ながらひと通りのメニューをこしらえ始める。

1人食堂に残されたグスタフは、エマ達に囲まれ「どう思いますか」と笑顔で聞かれ「素晴らしいです」としか答えられなかった。

男達3人は別々にいたが、同じ事を思っていた。

どうしてあれで、話がまとまるんだ!と…。