作品タイトル不明
話し合い②
なんでもキャロライン・ド・サーベルトは王妃殿下が所有する装身具やドレス、私財など価値のある物すべてを管理していたという。
「もしやそれを手にするために、双子の姉妹を入れ替えたと?」
「どうでしょう?」
ミュラー男爵が知るキャロライン・ド・サーベルトという女性は、王妃殿下への忠誠心が厚く、真面目な人物という印象だったらしい。
「ただ、野心というものを巧妙に隠していた可能性も否めません」
真実へ一歩近づくためには、やはり彼女からも話を聞く必要があるようだ。
「では、王妃殿下に成り代わっているという、妹君ソーレ様についてはどう思いますか?」
「彼女については――わかりません」
常にメイドキャップを深く被っていて、顔などは見ていなかったという。
「普段の立ち振る舞いから、キャロライン・ド・サーベルトよりも立場が低い人物だと思っていました」
筆頭侍女はキャロライン・ド・サーベルトで、王妃殿下の妹であるソーレは命令に従って動いている印象しかなかったという。
「すみません、彼女についてよく把握していなくて」
ミュラー男爵は彼女らよりも、国王陛下の動向について気になっていたらしい。
「もしも陛下がソーレと関係し、入れ替えを画策していたとしたら」
「それは絶対にない」
ここで初めてレヴィアタン侯爵が口を挟む。
「国王陛下は長年、何者かに命を狙われ、毒のようなものを盛られていた」
「なっ――!?」
ミュラー男爵は長年、国王陛下も事件に関わっているのではないか、と疑念を抱いていたらしい。
「それに国王陛下はレナハルト殿下が女性であると、ご存じないそうです」
「そう、だったのですね……」
もしも国王陛下が事件に関わっているのであれば、ミュラー男爵は迷わず制裁を与えるつもりだったという。
レヴィアタン侯爵は 瞠目(どうもく) しつつ、ミュラー男爵に物申す。
「あなたは、危険な御方だ」
「ええ、なんとでも言ってください。危険な思想を抱いていたことは、百も承知でしたから」
彼を仲間に引き入れることに成功できてよかった、と心の奥底から思ったのだった。
「調査によると、キャロライン・ド・サーベルトは王都にいるそうで」
その中で、ミュラー男爵が怪しいという情報を聞いてしまったのだ。
まさかこうして協力関係になれるなんて、夢にも思っていなかったわけである。
「その、ちなみにミュラー商店が人身売買をしているという噂があったのですが」
「ありえません」
「海賊や犯罪者と取引していたのも?」
「謂われのない噂かと」
ただ、刑期を終えて出所してきた者を雇用することはあったという。
傍に仕えていた、闇魔法を使っていた魔法使いもそうだったらしい。
「彼らについてはまっとうな人生を歩かせているので、どうかご心配なく」
人身売買については、誰かが勝手にミュラー男爵を騙り、やっていたことかもしれない。現に、叔父という前科者がいるから。
「いろいろと疑ってすみませんでした」
「それは私も同じですよ。エアさんを大事に思うあまり、危うくあなたとの仲を引き裂いていたかもしれなかったので」
わかっていたが、私はずっとエアにまとわりつく悪い虫扱いをされていたようだ。
直接聞かされると、なんとも説明し難い気持ちになる。
「ひとまず、一度戻って、気持ちの整理をしてきます」
「ええ、お願いします」
ミュラー男爵はくたびれたような表情で一礼し、帰っていったのだった。