軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これまでの話と、全校集会

国の辺境にある雪国ラウライフ出身の私、ミシャ・フォン・リチュオルは、婚約者ルドルフから婚約破棄された。なんでも真実の愛に目覚めたらしい。

真実の愛を教えてくれたというのは、従姉のリジーだったのだ。

リジーはルドルフの子を妊娠しているという報告だけでも驚きなのに、彼はリジーの子を次期当主として育て、さらに私を第二夫人として扱いたいと言ってきたのだ。

さらに私がせっせと働いて貯めた結婚資金までも渡すように言ってくる始末。

その衝撃で私が前世で日本人だったことを思い出す。ありえないことに前世でも私は婚約者からセカンドパートナーになってほしい、と言われたのだ。

話を聞いているうちに苛立ちが頂点となり、前世の怒りも相まって、私はルドルフに向かって握った拳をお見舞いしてしまった。

当然ながらルドルフとは婚約破棄し、私は晴れて自由の身となる。

前世の記憶が戻った影響なのか、私にある望みが生まれた。

それは王都にある魔法学校に通いたいということ。

妹クレアや妹の婚約者マリスに後継者の役割を押しつけてしまう形になるけれど、せっかく魔法がある世界に生まれ変わったのだ。夢を叶えるため、私は受験を希望した。

その後、トントン拍子にとは言わないけれど、なんとか魔法学校に合格できた。

楽しみにしていた使い魔の召喚に応じてくれたのは、宝石スライムのジェム。

レアな存在らしいが、見た目はただのスライムだ。

そんなジェムはさまざまな能力で私を助けてくれる。

性格はなんと言えばいいのか、とにかくユニークな子だ。

それ以外にも受験時に出会った下町出身のエアと仲よくなったり、睨まれていた公爵令嬢アリーセと猫を通じてわかり合えたり、誘拐されかけていた男装王太子レナ殿下と秘密を共有したり、とさまざまな出来事があった。

その中でもヴィルとの出会いは特別なものだろう。

魔法学校の中庭で出会った彼は、誰かから毒を盛られていた。そんな彼に魔法薬を渡したことがきっかけだった。

彼の苦しみや悩み、葛藤などに触れていくにつれて、いつしか傍にいて助けてあげたい、と思うようになる。

そんな彼と婚約を結んでしまったのも、思いがけない出来事だろう。

もちろん、大公家の嫡男である彼の父親が自信を持って立てた婚約者ではない。

隣国ルームーンの王女エルノフィーレ殿下との婚約話が浮上したために、急遽結んだ婚約である。

いつ解消されるかわからない関係だが、しっかり婚約者役を務めたい。

ヴィルの弟であるノアからも、最初は不仲だったが、最近は認められつつあるのか友達認定してもらえた。今後も仲を深めたい。

楽しい魔法学校生活をエンジョイしたいのに、さまざまな事件が降りかかってくる。

エルノフィーレ殿下の従兄であり、サーベルト大公家の三男であるジルヴィードが接触してきたり、そのジルヴィードとリジーが婚約したり、リジーが魔法学校に入学してきたり――。

真面目に授業を受けないどころか出席すらしないリジーを魔法学校から退学させ、ジルヴィードとの婚約も解消させた。

それらの働きが認められて、エルノフィーレ殿下の信用を勝ち取ることができたのだ。

もう邪魔者はいない。今度こそ楽しい魔法学校での毎日が送れるだろう。

そう信じて疑わなかったが――私達の身に新たな問題が降りかかってしまった。

どうして毎回こうなるのか。天を仰いだのは言うまでもない。

◇◇◇

ある晴れた日の朝、急に全校集会が行われるので講堂に集まるように、という放送が流れたので、エアと一緒に講堂へ向かった。

「なんだよー、朝から自習だから、ホームルームまで参考書を読んでおこうと思っていたのに」

「本当に」

一週間後、私達は中間試験なのだ。

魔法学校では大きな試験が実施される。冬期にある中間試験、夏休み前にある期末試験、学年が変わる前にある学年末試験の三回だ。

入学して初めての中間試験で、就職のさいの内申にも響くので、皆気合いが入っているのだ。

試験前は自習が多くなるので助かる、なんて話をしている中での全校集会だった。

一分、一秒でも勉強したいので、皆、しぶしぶといった感じで講堂までの廊下を歩いていた。

「それにしても、変なタイミングで集会があるのね。何かあったのかしら?」

「また貴賓扱いの転校生とか!」

「もうそれはこりごり!」

そうだったとしても、うちのクラスはノアとエルノフィーレ殿下が入ったばかりだ。

もうこれ以上増えることはないだろう。

校長先生からのありがたい話があったが、風邪に気をつけるようにとか、中間試験を頑張るようにとか、なんてことのない内容だった。

これだけのことで呼びださないだろう、なんて思っていたら新しい先生がやってきたと告げられる。

また変なタイミングでやってきたものだ。

「彼は珍しい宝石魔法の使い手で、特別教師としてお迎えしました。紹介します、ジルヴィード先生、こちらへ!」

聞き覚えのある名前に我が耳を疑う。

けれども登壇してきた男性を見て、「あ!!」と声をあげそうになった。

他の生徒達もざわつく。無理もない。その男性はヴィルと顔がそっくりだから。

「みんな、初めまして、サーベルト大公次男のジルヴィードでーす」

明るく挨拶する彼の背後に、さらに見覚えのある姿を発見してしまった。

「――っ!!」

慌てて口を塞ぐ。

「ミシャ、どうしたのか?」

エアが心配そうに顔を覗き込んでくる。大丈夫という視線を返したが、心臓がバクバクと高鳴っていた。

叫ばなくてよかった、自分の反射神経に感謝する。

どうしてこのように動揺しているのか。

その理由は、元婚約者のルドルフがジルヴィードと一緒にいたからだった。