軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十話 新たな切り札

そしてもう一匹――ミサキの技能で速度の低下したもう一匹のモグラが、今度はシオンに狙いをつけて地中から襲いかかろうとする。しかし、シオンはその時を狙いすまして身構えていた。

「――グガォォォォッ!」

(今度は違う状態異常で……『混乱』でどうだ……!)

◆現在の状況◆

・『グランドモールA』の攻撃

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 → 支援内容:『フォースシュート・コンフューズ』

・『シオン』が『テールカウンター』を発動 → 『グランドモールA』に命中

・『支援攻撃2』の効果により『グランドモールA』が混乱

「グガ……ガ……」

シオンが宙返りするようにして繰り出した尻尾を受け、地上に引きずり出されたモグラは、今までと違う動きを見せる――『混乱』が効いたのだ。

「――みんな、シオンちゃんが作ってくれたチャンスを生かすよ!」

「「「はいっ!」」」

イブキの気合いの一声を受けて、四人は機を逸さずに連撃を繰り出す――まずはカエデの打ち込みからだ。

「やぁぁぁーーーーっ!」

「――いきますよっ!」

◆現在の状況◆

・『カエデ』が『気剣体』を発動

・『カエデ』が『グランドモールA』を攻撃 クリティカル

・『リョーコ』が『アクアボール』を生成

・『アンナ』が『アクア・フラットサーブ』を発動 →『グランドモールA』に命中

「ガルルォォォォッ……!!

カエデの木刀による打突が完全に入ったあと、アンナはリョーコさんが水筒の水で作り出した水球をトスし、サーブを放つ。唸りを上げてボールがモグラに着弾した途端に、水柱が発生した――彼女たちはこんな合体技を持っていたのだ。

「あとは私が……っ!」

「――あかん、イブキ!」

◆現在の状況◆

・『グランドモールA』が緊急回避行動

・『グランドモールA』が『地団駄』を発動

「くっ……!」

このまま一気に畳み掛ければ倒せる、そう思った瞬間だった。モグラが突然暴れ始めるが、攻撃を仕掛けたイブキは止まることができない。

「ガァォォォォォッ!」

「――神様っ……!」

イブキを『支援防御』で守らなければ――そう考えた瞬間だった。

――攻撃こそ最大の防御であると提案する。マスター、私を使って『支援攻撃2』を試みてほしい。

背中に背負っているムラクモが、俺に呼びかけてきた――迷うよりも先に、俺はムラクモを抜き放っていた。

「――イブキ、『支援する』!」

「っ……くらえええええっ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『アザーアシスト』を発動 → 対象:『イブキ』

・『イブキ』が『波動突き』を発動

・『アリヒト』が『機神アリアドネ』に一時支援要請

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 → 支援内容:『ガードブレード:天地刃』

モグラが地面を揺らして攻撃を遅らせたにもかかわらず、先に仕掛けていたイブキは、一瞬速くモグラに打撃を叩き込んだ――そして。

俺が刀を振り下ろすと同時に、モグラの足元の地面が『割れた』。

モグラの頭上から叩き降ろすように発生した斬撃が、地面までもえぐり取った――しかし衝撃が貫通しただけで、モグラのヘルメット状に変化した頭部は割れていないようだった。

◆現在の状況◆

・『グランドモールA』に命中

・『ガードブレード:天地刃』による追撃 → 『グランドモールA』に命中

・『グランドモール』を1体討伐

ズズン、と地響きを立ててグランドモールが仰向けに倒れる。

「やった……うちら、やったんか……?」

「あ、あたし、やられるかもしれないって思ったのに……なんでこんな、地面が割れたりして……」

「……ミスター・アリヒトの声がして、イブキの攻撃と同時に、何かが起こって……つまり、これは彼が……?」

「す、凄いわね……こんな職業の人がいたなんて。無職かもしれないなんて、私なんて失礼なことを……」

前にもグランドモールを討伐しているはずだが、『フォーシーズンズ』の四人は全員無事で倒せたことに安堵しているようだった。

そして、俺たちも。エリーティアが受けた擦り傷は、俺の『支援回復1』が働いてきれいに完治した――彼女は剣を収めると、俺に向けて微笑む。

「アリヒトはどんな武器でも支援ができるのね……スリングの時もそうだけど、そんな刀まで使いこなして……」

「――後部くんっ……!」

『支援攻撃2』を使うと、俺は攻撃技能一回分の魔力を消耗してパーティ全員に追撃を乗せられる。それが分かったのは良かったが――『天地刃』は一度発動しただけで消耗がかなり大きく、魔力を削られて意識が持っていかれそうになる。

「っ……」

「あ、ああ……悪い、テレジア。いつも心配かけてるな……」

「…………」

テレジアが咄嗟に駆けつけ、倒れかけたところで支えてくれる。退避していたマドカも駆け寄ってきて、俺の状態をライセンスで確認して目を見開き、青いポーションを出してくれた。

「お兄さんっ、こんなに魔力が減ったら、身体がいくらあっても持ちません……っ」

「すまない、今後は気をつける……この刀は切り札にしたほうが良さそうだな」

ムラクモが自分を使うようにと提案してくれたのはいいが、彼女も消耗のことは計算に入れていなかったようで、おとなしくなっている。貴重なものだが背に腹は変えられず、俺はマドカに貰った青いポーションを飲んだ――半分ほど飲んだだけで、魔力が完全に回復する。

(体力や魔力の最大値は、ほぼレベル×10の値だと考えていいはずだ。俺の魔力最大値は『機知の林檎』を食べた分を入れて、60くらいになっている。つまり、『アザーアシスト』『フォースシュート』は一回で5、『天地刃』は20ほど消費したってことになるか……)

『支援攻撃2』を使う場合は、技の内容次第で消耗が激しくなる。『支援攻撃1』がいかに便利なのかと思うが、状態異常を付加したことで戦況が有利になることもあり、使い分けが肝心ということになりそうだ。

「あっ……こ、これ、箱が落ちてる! アリヒトさん、箱、箱が落ちてますよ!」

「久しぶりね、箱が出てくるなんて……けれどこれは、アリヒトさんたちに取得権があるわね。私たち、とても助けられていたし」

「ああいや、せっかくなので持っていってください。もし俺たちが欲しい装備が入っていたら、その時は交渉させてもらえますか」

彼女たちが倒したモグラのほうが箱を持っていたので、当然持っていってもらっていいと思ったのだが――なぜか四人とも、信じられないものを見る目で俺を見ている。

「は、箱ですよ? 箱から出て来る装備とか、魔石とかを使わへんと、装備って基本的に良くならへんやないですか。他の人達、みんな目の色変えて飛びつきますよ?」

「あはは……あたしたちもそうだよね。でも、今回魔物を倒せたのはアリヒトさんたちのおかげだし」

「私たちのほうこそ、もし欲しいものがあったら交渉させてください。今回の収穫はあなたたちのものです、ミスター・アリヒト」

ギャンブラーのミサキがいると、箱が出やすくなる――というのは、極秘にしておいたほうがよさそうだ。それほど箱が貴重ということだと、ミサキの能力が知れ渡ってしまったら、他のパーティから引き抜き攻勢を浴びてしまう。

「収穫の分配については、持って帰ってから考えるとするか。俺たちも全部を独占したいわけじゃないので、そこは相談しながら決めていきましょう」

「ありがとうございます。ああ、本当に恥ずかしいわ。私、アトベさんのこと、見かけだけで判断しておとなしそうだとかって……」

最初は俺のことを「アリヒト君」と呼んでいたリョーコさんだが、俺のほうが年上ということを踏まえてだろうか、呼び方が敬称に変わる。今回の戦闘で見直してもらえたということなら、素直に嬉しく思うところだ。

「すごい男らしい声が後ろからするもんやから、心強かったわ。ありがとな、アリヒト兄さん」

「あ、あたしも、ありがとうございましたっ……アリヒト先生!」

「……ミスター・アリヒトに対して、いろんな呼び方をするのが流行りなのですか?」

なぜ先生なのかと思うが、イブキを支援して地面を割ったからだろうか。ムラクモの威力が高いのであって、俺の攻撃力は高くないのだが、どうも勘違いされている気がする――しかし秘神がらみの情報を簡単に明かすこともできないので、訂正ができない。

ともあれ、倉庫の鍵を箱に当てて転送する。モグラ自体の素材は、これもカエデたちと話した結果、メリッサの貯蔵庫に送ってもらうことになった。

「一体は部位破壊されてなくてまるまる無事だから、いい素材がとれると思う。壊した部分は素材にならないから、今後は気をつける」

「メリッサさん、すごい度胸だったわね。私とエリーがもう一度仕掛ける前に、どすーん! って包丁を振り下ろして……」

「ええ、びっくりしたわ。レベル3でこんなに攻撃力があるなんて」

「この包丁のおかげ。父さんが、母さんを助けるために準備したものだから」

メリッサの母親は亜人で、彼女も呪いを解くために他のパーティで探索を続けているという。あるいはライカートン氏が、自身で奥さんを救うために、探索用の武器を準備していたのかもしれない。

その意志はメリッサに引き継がれた。テレジアも、メリッサの母親も、できるだけ早く元の彼女たちに戻れればいいと願わずにはいられない。

デミハーピィたちの魔力も無尽蔵ではないので、牧場に戻って休んでもらう。『フェイクビートル』のほうが彼女たちよりレベルが高いので、もし空で襲われたら危険だということもある。

「……と言ってるうちに、出てきたぞ。あれが『フェイクビートル』か?」

「あっ……向こうに『グランドモール』もおる。戦いになったら、さっきみたいにこっちに来てしまわへんやろか」

「じゃあ、手分けして戦うか……ミサキ、一旦こっちに戻ってきてくれるか」

「はーい! 私、ちょっとだけお役に立てた感はありますよ!」

「ほんとに助かったわ、ミサキさん。またよかったらうちらと一緒に戦おな」

年が近いこともあり、順調に友情が育まれているようだ。ミサキは感謝されて照れ照れとしつつ、こちらに戻ってきた。

「後部くん、私には『群狼の構え』があるから、今度はシオンちゃんと一緒に行ってきてもいい?」

「はい、くれぐれも気をつけてください。俺も可能な限り支援します。『みんな、頑張って行こう』」

『はいっ』

大きな声を出しすぎると魔物に気付かれるので、俺たちは2パーティ合同で円陣を組み、適度な大きさで声を合わせた。同時に支援高揚を発動し、士気を確実に溜めていく。

二階層で羊の魔物と戦うまで、士気解放は温存しておきたい――今のところは順調なので、気を抜かずに進みたいところだ。