軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百四十二話 君臨する愚視

ラザールの右小手の外側には盾が装着されていて、右手で掴むこともできるが盾を守備に使うこともできるようだ。そして、失われたように見える左腕は透明で、見えない剣を握っている。

「みんな、あの騎士の見えない左腕に気をつけてくれ。ほとんど視認できないが剣も持っている」

「左腕……何もないように見えるけど、勘でよけるしかないってこと……?」

「…………」

「『愚視』はあの騎士を倒さないと私たちの相手をしないっていうことね」

「分かんないよーエリちゃん、急に気が変わったって攻撃してくるかも……ひぇっ、め、目が合った……!」

『愚視』は高く浮かび、俺達を見下ろしている――その目が、俺には笑っているように見えた。

◆現在の状況◆

・『☆隻眼の愚視』が『罪過の嘲弄』を発動 →『ソウガ』『リンファ』が『激昂』状態に変化

「俺たちの相手をするまでもないってことか……舐めんじゃねえ……っ!」

「私も……あいつ、絶対に許せない……!」

(急に二人の様子が……『愚視』が何かしたのか……!)

「待って、ふたりとも! これは罠よ……っ!」

◆現在の状況◆

・『リンファ』が『雷電針』を発動

・『ソウガ』が『ハイジャンプ』『アクスドライブ』を発動

・『★片腕の使徒ラザール』が『アトラクトガード』を発動 →『リンファ』と『ソウガ』の攻撃を引き付け 無効化

リンファとソウガは『愚視』を狙っていたはずだった――だがその狙いがラザールに強制的に変えられたように俺には見えた。そしてラザールは盾を使い、リンファの放った暗器を弾き、高くから打ち込まれるソウガの斧さえ受け止めてしまう。

「――セラフィナさん、頼みます!」

「っ……!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『アザーアシスト』『支援防御2』を発動 →支援内容:『オーラシールド』

・『★片腕の使徒ラザール』が『剣のタクト』を発動 →『ソウガ』に命中 被害軽減

俺には『鷹の眼』で辛うじてラザールの攻撃が見えていた――まるで 指揮棒(タクト) を振るかのように剣を振り、ソウガに無数の斬撃を繰り出している。

「ぐぁぁっ……ぁ……ああ? な、なんだ……!?」

「ソウガ、アトベさんの支援でダメージを押さえてくれてるわ! ルチア、『鎮めの歌』をお願い!」

「はいっ……!」

◆現在の状況◆

・『ルチア』が『静寂と安らぎの歌』を発動 →『リンファ』『ソウガ』の『激昂』を解除

ルチアという人の技能は歌によるもので、二人の状態異常を見事に回復させる。ただ聞くだけでも冷静になれる、澄んだ声だ。

『罪過の嘲弄』という技に反応したのはリンファとソウガ――確定とはいえないが、特定の条件を満たした人物の感情を操作するような技だと考えられる。もしくは対象を二人に絞ったかだが、

「――アリヒト、私がまず仕掛けるわよっ……!」

◆現在の状況◆

・『エリーティア』が『瞬星眼』を発動 →『★片腕の使徒ラザール』の『★是空刀』を視認

・『エリーティア』が『コメットレイド』を発動 →『ソードバリア』付与

・『アリヒト』が『支援攻撃1』を発動

・『エリーティア』が『スターパレード』『ブレードロンド』を発動

・『★片腕の使徒ラザール』が『剣のタクト』を発動 『ブレードロンド』を二段相殺 支援ダメージ26

エリーティアが見えない剣の対策として選んだのは、『スターパレード』で攻撃回数を増やした『ブレードロンド』による範囲攻撃――回転しながら斬撃を放つ技。その試みは正しく、ラザールが受けきれなかった斬撃が二回当たる。

(このダメージ量じゃほとんど効かない……何十段と当てて効くかどうかだ。魔法銃を使うか、スリングか……それとも『支援攻撃3』を使うか……!)

「――上のあいつから何か来るよっ!」

「アリヒトさん、何か来ますっ!」

カトリーヌさんとスズナが同時に声を上げる。『愚視』が左手をかざした先の空間が歪み、そこから姿を現したのは――見覚えのある、巨大な蠍の九本の尾だった。

◆現在の状況◆

・『カトリーヌ』が『占術師の素養2』により『☆隻眼の愚視』から『凶兆』を察知

・『スズナ』が『託宣』により『☆隻眼の愚視』の予備行動を察知 内容:『スティングレイ』 対象:全弾『アニエス』

『愚視』は探索者が過去に遭遇した強敵を再現する――ならばこの事態も想定はできたはずだった。

ただ、出鱈目が過ぎるというだけで備えなかった。こんなところに、それほどの強敵が、今まで誰にも知られずに存在しているはずがない――『愚視』の力を目にしてなお、そんな思いがどこかにあった。

「みんな、私から離れてっ……!」

アニエスさんは悟っている――蠍の女王『ザ・カラミティ』の尾から放たれる光線が持つ殺傷力、そして破壊力がどれほどのものかを。

「それは私の役目ですよ、アニエスさんっ……!」

駆け出すノイマン――彼は何らかの技を使って、『スティングレイ』の標的を自分に向けることもできるだろう、しかし。

「いいえ……っ、私たちはこれを受けたことがある……! ここは任せてください!」

「セラフィナさん、俺も『支援』します! 五十嵐さん、俺に『デコイ』を!」

「っ……絶対死んじゃ駄目よ、後部くんっ!」

◆現在の状況◆

・『セラフィナ』が『プロヴォーク』を発動 →『☆隻眼の愚視』の『セラフィナ』への敵態度が上昇

・『キョウカ』が『デコイ』を発動 →対象:『アリヒト』

二つの技能を重ねて、標的が俺に変わる――これでもう逃げられない。パーティの皆が後ろにいる状態ならば、『殿軍の将』が発動できる。

「セラフィナさん、『オルタネイトボディ』を!」

「はいっ……必ず受け止めてみせる……っ! はぁぁぁっ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『アリアドネ』に一時支援要請 →対象:『アリヒト』

・『アリアドネ』が『ガードヴァリアント』を発動

・『セラフィナ』が『オルタネイトボディ』を発動 →魔力の半分を最大体力に付加

・『セラフィナ』が『ディフェンスフォース』を発動

・『セラフィナ』が『オーラシールド』を発動

・『アリヒト』が『支援防御2』を発動 →支援内容:『ディフェンスフォース』『オーラシールド』

・『 殿軍(でんぐん) の 将(しよう) 』により『オーラシールド』が強化 →『オーラスクトゥム』に変化

「――アリヒトッ!」

◆現在の状況◆

・『★片腕の使徒ラザール』が『飛転』『鎧貫き』を発動

セラフィナさんの後ろに立ち、『スティングレイ』を受け止める――その意識の外で動いたラザールが、俺の背後に現れていた。

◆現在の状況◆

・『テレジア』が『モードチェンジ:サンドクラッド』を解除

・『テレジア』が『アサルトヒット』を発動 →『★片腕の使徒ラザール』に命中 ノックバック小 行動をキャンセル

(テレジア……!)

「っ……!!」

地面が砂地であることから、自ら判断したのだろう――テレジアがラザールの攻撃を阻止してくれた。

彼女がいなければ死んでいた――それでもまだ、生きるか死ぬかの境界に立っている。

女王の尾の先端が赤熱し、光が放たれる。その威力は、以前戦った『ザ・カラミティ』を上回っていた。

(それでも……っ!)

◆現在の状況◆

・『アリヒト』『セラフィナ』が『スティングレイ』を九段反射

・『オーラスクトゥム』による反射威力強化

九本の光が反射し、『愚視』に向けて襲いかかる――だが。

『愚視』は両腕を広げる――反射した光はまるで避けるように飛び、『愚視』に一本も当たることはないかと思われた。

◆現在の状況◆

・『銀の車輪』の合計カルマ値による命中判定 →『☆隻眼の愚視』に『スティングレイ』が命中

最後の一本だけは、『愚視』の身体を避けることなく、その中心を貫いた。

(当たった……いや、当てられたのか……!)

ライセンスに視線を走らせ、状況を確認する――俺たちのカルマは全く上がっていないはずで、それが何らかの影響をもたらし、『愚視』に攻撃を届かせた。

◆現在の状況◆

・『★片腕の使徒ラザール』が『血の聖痕』を発動 →『☆隻眼の愚視』の傷を『★片腕の使徒ラザール』に移動

しかし『愚視』の傷はすぐに塞がり、まるで傷を請け負ったかのようにラザールの甲冑が砕け、血飛沫を上げる。

◆現在の状況◆

・『☆隻眼の愚視』が『護衛送還』を発動 →『★片腕の使徒ラザール』が転移 ドロップ:『★無の剣』

・『☆隻眼の愚視』が『双対のパラドクス』を使用 →『?天秤』の非破壊時に特殊効果発動

「あの甲冑野郎にダメージを押し付けて、また俺たちを分断する気か……っ!」

ソウガが叫ぶ――だが、ここまでは事前に話していたとおりだ。一度目の交戦時とは違う属性の攻撃をすることで、『時紬ぎの糸車』による影響を元に戻す。

「ウダウダやってるヒマはねえっ……加減はこっちでさせてもらう!」

加齢による影響か、常に疲労しているように見えたソウガが弾かれたように動く――この機会を逃すことはできない、それは誰もが同じだ。

「セレスさん、エリーティア、二人の技を借してくれ!」

「むぅっ……わしの力で足りるのならば……!」

「いつでもいいわよ、アリヒト!」

「みんなも仕掛けてくれ、まずは『順転』……一度目に物理攻撃をした組だ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援統制1』『支援攻撃3』を発動 →支援内容:『セレス』の『カオティックワード』

・『ソウガ』が『撫で斬り』を発動 →『?天秤』に命中 追加発動:カオティックワード

・『ミサキ』の攻撃が『?天秤』に命中 追加発動:カオティックワード

・『シオン』が『フリッカージャブ』を発動 →『?天秤』に命中 追加発動:カオティックワード

・『スズナ』の攻撃が『?天秤』に命中 追加発動:カオティックワード

・『エリーティア』の攻撃が『?天秤』に命中 追加発動:カオティックワード

物理攻撃の威力を抑え、『支援攻撃3』で付加する魔法の威力を大きくして天秤を狙う――そして『順転』組で最後の一撃を入れたエリーティアが、すかさず次の技に移る。

「――みんな、支援する!」

「はぁぁぁぁっ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援攻撃3』を発動 →支援内容:『エリーティア』の『スラッシュリッパー』

・『セレス』が『カオティックルーン』を発動 →『?天秤』に命中 追加発動:スラッシュリッパー

・『カトリーヌ』が『マジックスフィア』を発動 →『?天秤』に命中 追加発動:スラッシュリッパー

・『ルチア』が『ファストノート』を発動 →『?天秤』に命中 追加発動:スラッシュリッパー

『逆転』組が魔法で攻撃したのちは、独力で必要な攻撃を繰り出せるメンバーが、次々に『天秤』に攻撃を重ねていく。

◆現在の状況◆

・『キョウカ』が『サンダーボルト』を発動 →『?天秤』に命中

・『テレジア』の攻撃が『?天秤』に命中

・『アニエス』の攻撃が『?天秤』に命中

・『リンファ』が『トリックナイフ』を発動 →『?天秤』に命中 スタン無効

・『アリヒト』の攻撃が『?天秤』に命中 クリティカル

(っ……クリティカルが出るとは……だが、これくらいの誤差なら……っ)

ノイマンとセラフィナさんの二人を除いて、13人が『天秤』を攻撃した――だが、本当にこれで上手く行くのか。

天秤のバランスは、わずかに傾いている――やはり最初の時と同じ方向に。エリーティアの技の威力を押さえても、彼女の攻撃力がそれだけ突出しているのか。

◆現在の状況◆

・『?天秤』の破壊に失敗 →『双対のパラドクス』効果発動

・『☆隻眼の愚視』が『時紬ぎの糸車』を発動

(よし……っ、ここまではいい、問題はここからだ……!)

年齢が変化していた皆の姿が変わり始める――俺の身体も元に戻っていく。ちょうど元に戻れたのか、それとも技の威力を同じにしなければならないのか。それを確かめている余裕はない。

(テレジア、行くぞ……!)

「っ……!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『アザーアシスト』『支援攻撃3』を発動 →支援内容:『テレジア』の『リリーストラップ』

・『リリーストラップ』によりパーティ全員が『転移封じのトラップキューブ』を発動

・『☆隻眼の愚視』が『リロケーション』を発動 → 『転移封じ』により無効化

(くっ……まずい、魔力の消耗が大きすぎる……!)

「防いだ……っ、これでまともに戦えるわね……っ!」

エリーティアは直ちに攻撃に移ろうとする。狙うのは天秤ではなく『愚視』本体だ。

「罠の対象を広げるだと……一体何なんだよ、あんたの職業は……っ!」

ソウガの姿が元に戻っている――他のメンバーも。

だが、胸の端に過ぎる違和感が拭えない。この方法で突破することで、本当に先に進めるのか――勝つことができるのか。

「っ……待って……何か、様子がおかしい……!」

『隻眼の愚視』の割れた仮面から覗く目――常に俺達を見下ろしていたその目から、今は愉悦の感情が消えている。

(何が変わった……何が起きてる? これから奴は、何を……)

◆現在の状況◆

・『☆隻眼の愚視』が『バーディクト』を発動 →『☆隻眼の愚視』の形態変化

自ら仮面を掴み、剥ぎ取り――その下から姿を現したのは、全身が淡く発光した、人間に近い姿をしながら明らかに人でない何者かだった。

◆?×▲※$%◆

☆【Ⅵ】閉眼の未来視 レベル15 中立 ドロップ:???

形態が変化すると同時に、背中に大きな翼が開く――その姿を見て連想するのは『天使』という言葉だった。

『愚視』の開かれていた目が閉じている。ライセンスの表示はめちゃくちゃに乱れている――状態表示は『敵対』ではなく『中立』だが、それが信用できるのかも分からない。

「なんだ……ありゃ……」

「私たちがここに来た時に、何かの条件を満たしていたの……?」

秘神と契約した二つのパーティ。それがアニエスさんの言う『何かの条件』なのか、それとも本当に、偶然に出会ってしまったのか。

「こんなところで……『宝石の魔女』の次は、『位階つき』に出会うなんて……」

「団長……ヨハンが言っていたのはこのことだったの……?」

カトリーヌさんはこの『未来視』について何かを知っている。アニエスさんも――だが、それを尋ねる前に。

◆現在の状況◆

・『☆閉眼の未来視』が『告知の福音』を発動 →対象:全員

(また、音だ……音が聞こえる……何かが回っている音……)

音を介した攻撃か、それは魔法なのか――分からない。

ただ、成すすべもなく意識を奪われる。奴を倒さなければならない、それなのに、どうしても抗うことができない。

両膝を突き、俺は降り注ぐ光を見上げる。

(……これほどに遠い。俺たちが進んできた道は……まだ……)

皆が倒れていく中、一人だけが抗っている。セラフィナさん――彼女が俺に駆け寄り、何かを叫んでいる。それでも意識を繋ぎ止めることはできなかった。