軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七話 迷宮を知る者

「っ……!!」

地面を削りながら放たれた『ラビットトルネード』を、セラフィナさんが受け止める。その鎧が変化する――アリアドネが召喚したフォギアが、力を貸してくれている。

◆現在の状況◆

・『アリアドネ』が『フォギア』を召喚

・『フォギア』が『アーマーチェンジ』を発動 → 『セラフィナ』の『ガーディアンズメイル+4』が『★星機甲フォギア』により強化

・『セラフィナ』が『オーラシールド』『ディフェンスフォース』を発動

・『フォギア』が『コンストラクト』を発動 → 防御技能使用数ごとに防御力強化

「くぅぅっ……うぅ……!!」

せめぎ合う一瞬が、まるで時間が止まったように永く思える。

俺の防御力くらいでは助けにならないかもしれない。それでも、ほんの少しでもいい――セラフィナさんを支えられたなら

「――セラフィナさん、『支援』します!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援防御2』を発動 支援内容:『ガードアーム』

・『ラビットトルネード』が『セラフィナ』に命中 『アリヒト』の耐性適用 ダメージ軽減

(俺の防具が輝いている……『ダンピールのマント』も。そうか……アリアドネの力によるガードアームも、俺が持っている耐性も、『支援防御2』に適用される……!)

「――あぁぁぁっ……!!」

「「きゃぁっ……!」」

◆現在の状況◆

・『セラフィナ』の『★鏡甲の大盾』が『ラビットトルネード』を反射

・『★彷徨う嵐の鬼兎』が『アームフォーム』『旋風掌』を発動 『ラビットトルネード』を無効化

・『★鏡甲の大盾』の耐久度低下

・『★星機甲フォギア』の着装解除

・『★彷徨う嵐の鬼兎』がブレスのチャージ開始

セラフィナさんが『ラビットトルネード』を弾き、方向を変える。それでもミサキとスズナが風圧で吹き飛ばされるが、なんとか後ろから抱きとめた。

『――技能発動時の消耗が想像以上に大きい。補助を考慮する必要がある』

「フォギア殿、恩に着ます……っ!」

この一撃を防ぐことができただけでも幸いだが、やはり瞬間的に高い防御力を発揮するには、代償も大きかった。変化していたセラフィナさんの鎧から光が剥がれ、元の形状に戻る。

『鏡甲の大盾』の効果に『確率でブレスを反射する』というものがあったが、反射した『ラビットトルネード』を鬼兎は腕を回転させて気流を発生させ、相殺してしまう。あれはブレスにあたる攻撃で、再度使用するには溜めが必要らしい。

「――こっちを見なさいっ!」

「シュゥゥ……ッ!」

◆現在の状況◆

・『エリーティア』が『コメットレイド』を発動 『ソードバリア』付与

・『★彷徨う嵐の鬼兎』の攻撃 → 『エリーティア』が回避

エリーティアがこの機を逃さずに、鬼兎の気を引く。振り抜かれた巨大な腕を、エリーティアは地に這うような低い姿勢で加速して回避した。

「瞬くように散りなさい……っ!」

「――シャギィィィッ!!」

「エリーティア、『支援』するっ!」

今重んじるべきは手数――攻撃を当てることさえできれば固定ダメージを通せる『支援攻撃1』で、確実に削りに行く。

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援攻撃1』を発動

・『エリーティア』が『アルティメイタム』を発動 → 『エリーティア』の攻撃力、速度が上昇 『残紅』付与

・『★彷徨う嵐の鬼兎』が『シールドフォーム』を発動

・『スターパレード』の効果により『エリーティア』の攻撃回数が上昇

・『エリーティア』が『ルミナスフラウ』を発動

・『★彷徨う嵐の鬼兎』が『マシンガンブロック』を発動

「シャラララララッ!!」

恐るべき速さで、腕を変化させた盾でエリーティアの攻撃を受ける鬼兎――ヒットさえすれば支援ダメージが発生するはずが、そのヒットしたという判定すら無効化されている。

「――ラララララッ!!」

「っ……!」

「――エリーさんっ!」

◆現在の状況◆

・『キョウカ』が『サンダーボルト』を発動 → 『★彷徨う嵐の鬼兎』に命中 感電付与

このままではエリーティアの技を全て防がれ、彼女に隙が生まれる。しかし五十嵐さんがギリギリのところで、魔法でエリーティアを援護した。

「――はぁぁぁっ!」

「シャギィィィッ……!!」

◆現在の状況◆

・『★彷徨う嵐の鬼兎』の『マシンガンブロック』が中断

・『ルミナスフラウ』が『★彷徨う嵐の鬼兎』に17段命中 『残紅』を17回付与 支援ダメージ221

・『エリーティア』の追加攻撃が発動 12段命中 『残紅』を12回付与 支援ダメージ156

・『★彷徨う嵐の鬼兎』の『感電』が解除

「ギャギャッ……!」

エリーティアの斬撃は全て防がれることはなく、鬼兎の身体から桃色の飛沫が上がる―そして、畳み掛けるようにメリッサとシオンが肉薄する。

「通った……このまま押し込む……っ!」

「――アォォーンッ!」

闇弾石を魔法銃に装填し、支援を発動する。雷が通じるならば、『ダークネスバレット』による黒い雷も通じるはずだ。

「――喰らえっ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が魔法銃に『闇弾石』を装填

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 支援内容:『ダークネスバレット』

・『シオン』が『拘束攻撃1』を発動 → 『★彷徨う嵐の鬼兎』に命中 拘束・感電付与

・『メリッサ』が『切り落とし』を発動 → 『★彷徨う嵐の鬼兎』に命中 部位破壊

感電付与

・『エリーティア』が蓄積した『残紅』を解放 29段斬撃発生 支援ダメージ377

「シャギャァァァッ……!」

シオンとメリッサの連携が決まる――そしてエリーティアが剣を納めると、その瞬間に『鬼兎』が無数の斬撃を受けて仰け反った。

部位破壊――メリッサが振り抜いた大型の包丁は、鬼兎の何を破壊したのか。宙を舞って飛んできたものを、セラフィナさんが手に取る。

『――封印角。切り落とされることにより、さらに魔物は形態を変化させる』

俺の位置からでは死角になり、『それ』を視認することはできなかったが、アリアドネが教えてくれた。

(形態変化……まさか……!)

「お兄ちゃん、次は私が……ひぁっ!?」

「――みんな、そいつから離れるんだ!」

攻撃に出ようとしたミサキを引き止める。角を折られた『鬼兎』が、血のように赤い球のようなものに包まれる。

その中から、再度生まれ落ちるように球を割って飛び出したのは――人間のものに近い四肢だった。

◆現在の状況◆

・『★彷徨う嵐の鬼兎』が『知性の封印角』を喪失

・『★彷徨う嵐の鬼兎』が『★流浪のストラダ』に変身

ただでさえ強力な『名前つき』が、形態を変えた――それも人型に。まだ動き始めていない今のうちに攻撃するか、それとも全力で撤退すべきなのか。

『……っ!!』

直接頭の中に伝わってくる『彼女』の息遣い――それは『アクティブステルス』で透明化したテレジアのものだった。

◆現在の状況◆

・『テレジア』が『アサルトヒット』を発動 →『★流浪のストラダ』に対して攻撃力2倍

・『テレジア』が『蝶の舞い』を発動 攻撃回数増加

・『テレジア』が『アズールスラッシュ』を発動

蒼い炎に包まれた『レイザーソード』による一撃。ここで仕留めなければならない、テレジアはそう判断したのだろう。

「っ!?」

◆現在の状況◆

・『★流浪のストラダ』が『小心者の聴覚』を発動 → 『テレジア』の『アクティブステルス』を看破

・『★流浪のストラダ』が『白刃取り』を発動 → 『アズールスラッシュ』を無効化

鬼兎が変化した存在――ストラダは、テレジアの接近に気づいていた。それでも振り返ることすらせず、指二本だけでテレジアの剣を受け止める。『蝶の舞い』による攻撃回数の増加も意味をなさなかった。

ミサキがこちらを見ている。言葉にしなくても分かる、テレジアが反撃を受ける前に守れる手段の一つは、ミサキが持っている――しかし。

「――はぁぁぁぁっ!!」

◆現在の状況◆

・『セラフィナ』が『怒涛の進撃』『シールドスラム』を発動

・『★流浪のストラダ』が『ショックアブソーブ』を発動 → 『シールドスラム』によるノックバックを無効化

「くっ……!」

セラフィナさんがストラダに体当たりを仕掛ける――それでも微動だにせず、隙は生じない。テレジアもセラフィナさんも距離を取ろうとするが、容易に間合いの外には出られない。

「……※α≠Ω」

確かに、それは言葉のように聞こえた――ストラダが、何かを言った。だが、その意味は全く理解できない。

「――後部くんっ、お願いっ……!」

◆現在の状況◆

・『★流浪のストラダ』が『月 穿(うが) ち』を発動

・『キョウカ』が『ブリンクステップ』を発動 →攻撃を回避

五十嵐さんが飛びかかったのは攻撃するためではない、ストラダの攻撃を回避するためだった。

――その一瞬に何をすべきか。もはや考える間は無かった。

「――エリーティア、 あ(・) れ(・) だ!」

エリーティアはストラダが技を放った直後を狙って動き出していた――続けての大技だが、彼女はそれをすべきだと考えた。

(伸るか反るか……この場さえ切り抜けられれば、それでいい……!)

「≠Ω……ッ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 支援内容:フォースシュート・ドールズ

・『エリーティア』が『スターパレード』『ルミナスフラウ』を発動

・『★流浪のストラダ』が『マシンガンブロック』を発動

「――はぁぁぁぁっ!」

恐るべき速度の攻防――剣と拳がぶつかり合うたびに大気の振動が伝わってくる。

『マシンガンブロック』の発動中は『支援攻撃』は入らなくなる。だが、同じことを繰り返しはしない――エリーティアにはそれが分かっていた。

「解き放て、『アンタレス』!」

◆現在の状況◆

・『エリーティア』が『リベレイション』を発動 『アンタレス』の性能解放: 緋影刃(ひえいじん)

・『ルミナスフラウ』が『マシンガンブロック』を一部貫通

・『ルミナスフラウ』が『★流浪のストラダ』に27段命中 『残紅』を27回付与

・『エリーティア』の追加攻撃が発動 18段命中 『残紅』を18回付与

エリーティアの斬撃が『マシンガンブロック』を上回る――剣の軌跡が緋色に染まり、ストラダの技を凌駕し、貫通する。

「――ッ!?」

ストラダが声なき声を上げる。斬撃が入ったということは、俺の支援もまた発動するということだ――回数を重ねることで意味がある『操作石』の効果が、一瞬にして累積する。

◆現在の状況◆

・『支援攻撃2』が45回発動 →『★流浪のストラダ』の操作値累積

・『エリーティア』が蓄積した『残紅』を解放 45段斬撃発生 『★流浪のストラダ』の操作値累積 交渉可能

・『操作石』が破壊

「アリヒトさん、敵の様子が……っ!」

(今まで使役に成功したときとは違う……敵のレベルが高いからか……!)

このまま戦いを続ければ、『猿侯』との戦いを前にしてパーティメンバーが負傷するかもしれない。ここで戦いを終えられるなら、その可能性に賭ける。

「――ここから立ち去ってくれ、ストラダ!」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『★流浪のストラダ』に『戦闘放棄』を要請 → 『★流浪のストラダ』が承諾

「……あ、あれ? あの人……人? ピタッと止まっちゃいましたけど……」

「対話が、成立している……あれほどの魔物と……」

セラフィナさんはライセンスを見て、事態を理解する。

ストラダは剣と盾を構えたテレジアを見やる。そして、もう一度何かを言った。

「…………」

ストラダが言っていることを、テレジアは理解しているのか――それは分からないが、何かが伝わっているようには見えた。

テレジアがこちらにやってくる。そして、ストラダを指し示したあと、今度はセラフィナさんの方を見た。

「あの魔物……ストラダが何か言ってるのか?」

テレジアはこくりと頷く。セラフィナさんが持っていた角を出すと、ストラダがそれを見ているのが分かる。

「角を返せってことか……?」

「返したら元の凶暴な感じに戻っちゃうんじゃ……でもこのまま帰ってもらうのも駄目ですよね、きっと」

「後部くんの力で、対話ができる状態になってるのよね。角を返したら、代わりに何かあるんじゃないかしら」

「アリヒト殿、ライセンスを見てください。新たな表示が出ています」

◆現在の状況◆

・『★流浪のストラダ』が『知性の封印角』を要求 → 提示された条件:『★流浪のストラダ』の提示できる全て

「全て……っていうと、仲間になれっていうのもいいんですか?」

ミサキの発言が聞こえていたのか、ストラダは首を振った。操作値が累積したとはいえ、使役することはできないということだ。

こうして見ると、ところどころが『鬼兎』の名残りを思わせる毛皮で覆われているが、ほとんど人間の女性に近い姿をしている。角を失ったばかりで額に小さな傷が残っているが、すでに塞がりかかっていた。

「『ホーリーストーン』の場所が分かるなら、教えてもらいたい……俺たちはこの迷宮に、それを探しに来たんだ」

この迷宮のことは、迷宮に住む魔物に聞くのが一番だ――なんて、対話できる機会にしか試せないことだが、一か八かで尋ねる。

ストラダは何も答えずに、俺たちに背を向けて歩いていく。そして、尾根伝いに歩く道の方に向かうと、急に斜面を滑り降りていく。

◆現在の状況◆

・『★流浪のストラダ』が『ラビットトルネード』を発動 → 地形破壊

聞こえてきたのは大きな破壊音――地面が揺れるほどの衝撃に驚かされるが、ストラダはけろっとして崖を飛び上がってくると、俺達の方を見ている。

「これは……ヴァネッサたちが探しても、なかなか見つからないわけね」

エリーティアは嘆息しながら言う。リーネさんは一層で見つかることもあると言っていたが、それは可能性の話で、容易に見つかるということではなかったということか。

ストラダが滑り降りた急な斜面の途中に、大きな岩窟がある。『ホーリーストーン』の在り処を示してくれたのか、それとも――。

罠ということはないらしく、ストラダはセラフィナさんが角を渡そうとすると、首を振って拒否した。ホーリーストーンが見つかるまでは受け取らないようだ。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず……っていうけど、あの洞窟も一筋縄じゃ行かないでしょうね」

五十嵐さんの言う通りだが、迷っている時間はない。俺たちはストラダが示してくれた道なき道を行き、崖の途中にある洞窟に向かった。