軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百八話 ピックロトリー

ストラダの技で地盤が緩くなっているので、慎重に急な坂を降りていく。そして岩窟の入り口までは、壁に張り付くようにして移動していく。

「はー、下の方見ると生きた心地が……キョウカお姉さん、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……何とか、慎重に進めば……」

「みんな、『気をつけて行こう』」

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援高揚1』を発動 → パーティの士気が13上昇

「アリヒトさん、ありがとうございます。『士気』が上がると、気持ちが落ち着くみたいですね」

ミサキとスズナは家族でボルダリングをした経験があるそうで、二人とも落ち着いている。心配なのは五十嵐さんだが――と思っていると。

「――きゃぁっ……!」

(っ……!!)

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『バックスタンド』を発動 → 対象:『キョウカ』

・『アリヒト』が『八艘飛び』を発動

「っと……大丈夫ですか、五十嵐さん」

「え、ええ……ありがとう……ごめんなさい、不注意で」

「そんなことはないですよ。俺も高いところは苦手ですし……」

五十嵐さんが体勢を崩してしまったのを見て、一も二もなく受け止める。そのまま『八艘飛び』で空中ジャンプをして、五十嵐さんを岩窟の入り口に降ろした。

「んっ……!!」

今度はセラフィナさんが、装備の重さに耐えきれず、足場が崩れてしまう――どう助けるか考える間もなく、セラフィナさんの後ろに転移し、『八艘飛び』を連発する。

「アリヒト殿、申し訳ありません……っ」

「い、いや……装備の重量がありますから、分担して持つべきでしたね」

「重装備での登攀訓練はしていますので、問題ないと思ったのですが……油断は禁物でした」

一気に魔力を使ったせいか、結構疲労してしまった――すると、後からやってきたテレジアが、ポーチからポーションを出して渡してくれる。

「…………」

「ありがとう、テレジア」

「少し休んでから中に入った方がいい。思ったより広い」

「バウッ」

後からやってきたメリッサとシオンに気遣われるが、ポーションを飲むと徐々に疲労感が和らいでいく。

ストラダは少し離れたところからこちらを見ている。『ホーリーストーン』が見つかるまで様子を見ているということか。

初めはハーピィに頼んで運んでもらうことも考えたのだが、ストラダに怯えていたのですぐに召喚を解除した。俺たちよりも、ハーピィたちの方がストラダの恐ろしさを肌で感じてしまったようだ。

「『震える山麓』の『震える』というのは、地形を壊すほどの彼女の攻撃を指していたのでしょうか」

「それは考えられますね。地下にある洞窟の存在を示唆していたのかもしれない」

「想像してた以上に広そうね……あれ、ヒカリゴケって言うのかしら」

「薄暗いですけど、普通に中に入れそうですね。私、さっきは何もできてないので、活躍の場を求めちゃってるんですが」

「焦らなくても大丈夫だ。暗いところで光るって話だったから、まずはそれらしいものを探してみよう」

◆現在の状況◆

・未踏領域に侵入

・魔物出没確率:不明

・地形効果の有無:判定技能なし

・注意:砂地あり

入り口はそれほど広くはなかったが、入ってすぐに下り坂になっており、そこを十分ほどかけて降りきるとかなり広い空間に出た。

苔の胞子などが何らかの状態異常をもたらさないかと少し気になったが、それは全く問題ない――それどころか、どういう原理なのか、ひんやりとした空気には清々しささえ感じる。

「はぁ~、こんなふうになってるんですね。えっ、向こうのほうに同じような岩がごろごろしてるんですけど、全部光ってません?」

「ヒカリゴケが生えちゃって、それで光ってるのね……全部ホーリーストーンってことはないでしょうし」

「ミサキ、ここで『ピックロトリー』を使ってみるか」

「やっちゃいます? じゃあ、あの岩の近くまで行ってみますね」

「私も同行します。皆さんは安全が確認されるまで、ここで待機していてください。アリヒト殿、先程のマトックをお預かりします」

セラフィナさんに『小人のマトック』を渡す。すると、シオンがやってきてミサキの周りをぐるりと回った。

「バウッ」

「え、乗せてくれるの? やばっ、背中めっちゃふわふわなんですけど」

シオンはミサキを乗せて、幾つもある形の似た岩に近づいていく。

(敵の気配はない……だが魔物出没確率は『不明』だ。いつ出てきてもおかしくはない)

スリングを構え、何か起こればすぐに動けるようにしておく。ミサキがこちらを見て確認したあと、セラフィナさんがマトックを使って岩を掘る前に技能を発動させた。

「――行きまーす、『ピックロトリー』!」

◆現在の状況◆

・『ミサキ』が『ピックロトリー』を発動 希少素材の発見確率が上昇

ミサキが技能を使うと、セラフィナさんが幾つかの岩の中から一つを選んで『小人のマトックを振るう。

「っ……!」

◆現在の状況◆

・『セラフィナ』が『小人のマトック』を使用 → 『大きな岩塊G』を破壊

岩塊にマトックが突き立つと、魔道具というだけあって、一気に岩にヒビが入って破壊される――その中から、金属らしい塊が幾つか出てきた。

◆採掘の結果◆

・ヘブンスチル鉱石×3

・クリスダイト片×2

・真銀の砂×1

・ヒカリゴケ×10

「こうやって、どの岩がいいか分かっちゃうんですねー」

「アリヒト殿、見つかったものには『ホーリーストーン』が含まれていないようです」

「了解です。ミサキ、まだ魔力は大丈夫か?」

「はーい、じゃあもう一回やってみまーす。いきまーす、『ピック』……」

――その瞬間、何か視界に違和感を覚える。

ヒカリゴケの明かりは淡く、広い洞窟の中は薄暗い。苔むした大岩は幾つもあり、そのどれもが同じに見える――だが。

(あの岩……今、確かに……)

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『鷹の眼』を発動 →『?岩塊』の隠密技能を看破

「――セラフィナさんっ、ミサキ、その岩から離れろっ!」

「えっ……えええええっ……!?」

◆現在の状況◆

・『?岩塊』が『擬態解除』 →『?岩塊』の正体が『ディープイーター』と判明

・『ディープイーター』が『貪食の開口』を発動 →対象:『ミサキ』『シオン』

苔むした大岩が割れる――ミサキの目の前で口を開く。

(姿が見えない敵は前にもいた……こんな形もありうるのか……!)

「――ガァァァッ!!」

「ひぁぁぁっ……!」

「ミサキ殿、伏せてくださいっ!」

(――一瞬でいい、敵の行動を遅らせる……!)

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 支援内容:フォースシュート・スタン

・『ディープイーター』が『超反応』を発動 行動をキャンセル

・『セラフィナ』が『シールドスラム』を発動 → 『ディープイーター』が『岩石の剛性』を発動 『シールドスラム』をパリィ スタン無効化

・『セラフィナ』の盾装備解除

「くぅっ……!」

セラフィナさんが盾を構えたまま『ディープイーター』に突進する――しかし岩石のような身体に盾が弾かれ、スタンさせることもできない。

『鏡甲の大盾』が宙を舞う――セラフィナさんが盾を取り落とすことなど、今まで考えられなかった。

エリーティアが走り出している。五十嵐さんが詠唱する――スズナが弓に矢を番える。

「――セラフィナさんっ……!」

◆現在の状況◆

・『ディープイーター』が『アーマーブレイク』を発動 →『セラフィナ』の『ガーディアンズメイル』が破壊

「――っ!!」

(駄目だ、奴はっ……!)

「はぁぁぁっ……!!」

エリーティアは最速の技を選んで『ディープイーター』に攻撃を仕掛ける。だが奴の特性を見る限り、近接攻撃で一撃当てることさえ大きなリスクになる。

岩石のような魔物に凍結が通じるのか――分からない。しかし一瞬でも奴の動きを止めなければならない。

(――通ってくれ……っ!)

◆現在の状況◆

・『アリヒト』が『支援攻撃2』を発動 支援内容:バインシュート

・『エリーティア』が『コメットレイド』を発動 『ソードバリア』付与

・『エリーティア』が『スラッシュリッパー』を発動 →『ディープイーター』が『岩石の剛性』を発動 『スラッシュリッパー』をパリィ

弾かれる――エリーティアの『アンタレス』でさえ。しかし『リベレイション』を発動していたら、『ディープイーター』の攻撃はセラフィナさんかミサキに向かっていた。

「――ガァァァァッ!!」

『イーター』の名前通りに、魔物が恐ろしく巨大な口を開ける。動き出した大きな爪を持つ腕、巨体を動かすために異常に発達した四肢。

――だが、その前足が踏み出そうとした瞬間だった。

◆現在の状況◆

・『ディープイーター』が『蔓草』によって『拘束』 行動をキャンセル

「――今だ、離脱してくれ!」

「ワォーンッ!」

◆現在の状況◆

・『シオン』が『一撃離脱』を発動 →『ヒートクロー』が『ディープイーター』に命中

・『ディープイーター』の『蔓草』による『拘束』が延長

「グガッ……!!」

シオンが『ヒートクロー』の一撃を『ディープイーター』に浴びせる――爪だけでは岩石の身体に傷をつけられなくても、炎属性は通っている。

「申し訳ありませんっ……!」

「大丈夫、ここから立て直します。奴は近接攻撃に強い……なんとか遠距離から仕掛けていきます!」

敵の『超反応』は、前衛メンバーにとって脅威となる。これ以上装備品を破壊されてしまうわけにはいかない。

遠距離攻撃がどれだけ通じるか。奴が遠距離攻撃に反撃する手段を持たないとは限らない――ならば。

攻撃に反応される前に仕掛ける。俺たち自身も苦戦させられた、『あの魔物』の力を借りることで。