軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61話 エルマとミア

エルマは半信半疑ながらも、自分のエアリアルに頼んでみることにした。

「ミア、魔素を私の右手に集めてくれない?」

何も変化があるようには見えない。

だけどもしかしたら魔法を発動できるかもしれないし、と期待して杖をふるう。

エルマの選んだ杖の材料はケヤキだ。特に特徴のある木ではないが、とても丈夫なので平民には人気がある。

ひび割れ対策にオイルを塗らなくてもいいし、そうそう壊れないから一年生の時に作った杖を馴染ませて、一生使うことができるというのも人気の一つだ。

反対にレナリアの持つ桃の木は、特製のオイルを塗ってお手入れをしてあげないとすぐに表面がひび割れてしてしまう。姫君のように繊細なのだ。

「ダメみたいだね」

エルマは何も変化のないロウソクの火を見て、肩を落とした。

レナリアは、どうしてダメだったのだろうかとフィルに尋ねる。

(ねえ、フィル。どうしてエルマさんのエアリアルはお願いを聞いてくれないの?)

「そりゃあ、いきなり命令なんてされても、手助けしようって気持ちにはならないよね?」

フィルは「何をそんな当たり前のことを聞くの?」と逆に不思議そうにしている。

(エルマさんは自分のエアリアルに話しかけたりはしなかったのかしら)

「してないんじゃない? ミアっていうのが自分の名前だっていうのは分かってるみたいだし、それは嬉しかったようだけど、それからずっと無視されてるからね。どうしても必要なら助けるって感じかもしれないね」

なるほど。

ではフィルの言うようにエアリアルとあまり仲良くなっていない状態だと、なかなか魔法が発動しないということだろうか。

確かに姿の見えないエアリアルに一方的に話しかけるというのは、なんとなく気恥ずかしさがある。

見えなくても愛しそうに話しかけるポール先生のほうが例外なのだ。

フィルによると、ポール先生のエアリアルは、違う方向に話しかけられたら急いでそちらに飛んでいくのだそうだ。

お互いに信頼しあっているのが良く分かる。

そのうちポール先生にもエアリアルの姿が見えるようになるかもしれないということだから、そうなったらポール先生のエアリアルのポポは狂喜乱舞するに違いない。

もっとも、ポール先生のほうが大喜びして大変かもしれないけれど、とレナリアは微笑ましく思った。

「エルマさんは、エアリアルとまだ仲良くなるのが足りていないのかもしれないわ。たとえば朝起きたらおはようの挨拶をしたり、話しかけたりしている?」

「……見えないんだから、そんなの、したってしょうがないじゃない。それに、同室の子に変な子だと思われるもん」

魔法学園には、精霊の守護を得ているものならば必ず通わなくてはいけない決まりになっている。

基本的に授業料などは無料だが、寮の部屋に関しては四人部屋が基本で、希望するものは部屋代を払って広い部屋に移ることができる。

平民の場合はよほどの豪商でない限り、裕福な家の子供でも二人部屋だ。

エルマも二人部屋で生活していて、同室の子はエルマと同じBクラスで、土の精霊の守護を受けている。

ゴツゴツとした石のような土の精霊のノームを可愛いとは思わないが、それでもちゃんと姿が見えるというのは羨ましい。

話しかけている時に優越感のにじむ目で見られると、実家が魔石を扱う商家だからエアリアルの加護を得られて良かったと思ってはいても、やっぱり少し悔しい気持ちになる。

そんなルームメイトの前で、何も見えない場所に話しかけるというのは、なかなかできなかった。

「でもエアリアルの加護を受けているのは確かなのだし……。姿が見えなくても、話しかけてあげればきっと喜ぶと思うわ。エルマさんだって、仲の良いお友達からお願いされたら、何とか力になってあげようという気持ちになるのではないかしら?」

確かにレナリアの言うことももっともだ。

何もいない場所に話しかけるのは恥ずかしいが、このクラスにはエアリアルの守護を持つものしかいないのだ。

今さら恥ずかしがっても仕方がないと、エルマはきゅっと口を引き締めた。

「ミア。今まで全然お喋りしなくてごめんね。あたし、がんばって話すようにするよ。それで、お願いがあるんだけど、右手に魔素を集めてくれないかな」

エルマの話しかけた方向に、エアリアルはいない。

だがレナリアの耳には「うわぁ。めちゃくちゃ喜んで跳ねまわってるよ」というフィルの声が聞こえた。

ならば、絶対に成功するに違いない。

魔力が見えるマリーにもその変化が分かった。

エルマの魔力はそれほど強くない青だ。

その青い色が、少しずつ右手の先に集まってきているのが見えた。

「あ……。なんだかできそうな気がしてきた」

エルマは右手が熱くなるような感覚を覚えた。

本当に、エアリアルのミアが力を貸してくれたのだろうか。

「エルマさん、その魔力を杖に流すのよ。がんばって」

レナリアが応援すると、マリーも手を握りしめて何度も頷いている。

「風よ吹け!」

エルマが杖をふりかぶると、そこから一陣の風が吹いた。

そよ風のような小さな風だったが、それは真っすぐにロウソクの火へと向かう。

そして……。

「やった! できた!」

ロウソクの火は、見事に消えていた。