軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話 幼馴染たち

「レナリアさんは風魔法のクラスなのよね? じゃあランス・エイリングもいたと思うんだけど……」

その名前を聞いて、レナリアの表情が曇ったのを見たアジュールは「やっぱり、やらかしてる……」と呟いてフレーゲルを見た。

アジュールと顔を合わせたフレーゲルは、肩をすくめる。

「あの、もしかしたらなんだけど……。レナリアさん、ランスに言いがかりをつけられなかったかしら……?」

レナリアが肯定とも否定とも取れるあやふやな微笑みを浮かべると、アジュールは眉を下げた。

「ランスも私たちの幼馴染みなんだけど、ちょっと、というか、かなり最近荒れていて……。誰彼構わず突っかかっていっちゃうの。私が言う事ではないと思うんだけど、ごめんなさい」

軽く頭を下げるアジュールを、フレーゲルは呆れたように見る。

「お前が謝る事じゃないだろ。まあランスの気持ちも分からなくはないけどさ。守護精霊がハズレで……。おっと、レナリアさんも同じだったよね。ごめんごめん」

一般的にエアリアルの評価はハズレなので、今さらレナリアは気にしない。

フィルが怒りださないかどうかだけが心配だが、エアリアルの加護を持っているわけでもない人間が何を言おうと気にならないようだった。

さっきからずっと楽しそうに窓の外の景色を見ている。

「いえ。お気になさらないで。気にしてませんから」

むしろ目立ちたくないから、守護精霊がエアリアルで本当に良かったと思っている。

もしシャインが守護精霊になっていたら、今世でも聖女への道をまっしぐらだ。

「ランスは僕たちの中でも魔力が高くて期待されてたからなぁ。ほら、魔力熱で寝こんだ時もあいつが一番ひどかったし。……だから守護精霊がエアリアルだった時の失望が大きかったんだと思う」

魔力熱というのは、体内の魔力が大きくなるとかかるもので、魔力を持つ子供は大抵五歳頃にかかる。

たまに魔力熱にかからない子供もいるが、その時の症状で大体の魔力の大きさが計れるようになっていて、症状が重いほど魔力が多いと言われている。

レナリアも五歳の頃に熱を出したが、それほど重かった記憶はない。

「エイリング家といったら、騎士団の魔法部隊で活躍している一族だものね。ランスのお父さまと同じで、攻撃に特化しているサラマンダーの加護を受けたかったんだと思うわ」

「うちみたいに代々ドリュアスの加護を受ける家なら気が楽なんだけどな」

その属性の加護を受けやすい家、というのはある。

王家なら代々ウンディーネの加護を得るし、フレーゲル・ガンシュの家はドリュアスの加護を受けやすい。

シェリダン家は多様な加護を得る事が多い一族で、過去には存在しないと言われている闇属性の加護を得た者すらいると言われているが、定かではない。

「それに人数の関係で特別クラスに入れなかったのも荒れている原因なの」

確かにそう言われてみれば、アジュールたちと幼馴染という事は、彼らは同格の家だという事だ。それなのにランスだけが違うクラスになっている。

「そうなの?」

「この学年は生徒の数が多いから……」

そう言って、アジュールは視線をセシル王子の席に向ける。

確かに王族が生まれる年は、男子なら側近に、女子なら妃にと、将来の為に子供を作る貴族が多い。

レナリアの場合はたまたま同じ年になってしまっただけなのだが。

「ランスは自分の守護精霊がエアリアルだから、特別クラスに入れなかったんだって思い込んでて。それが本当なのかどうかは、分からないんだけれども」

確かにその可能性はある。

同じくエアリアルを守護精霊とするレナリアが特別クラスにいるのは、王族の血を引くからに他ならない。

さすがに侯爵家の娘を下のクラスにする事はないだろうが、あり得ない話ではない。

特別クラスでは、他のクラスと違って、常に護衛の騎士が扉の前に立っている。

もちろん学園の中には不審者が入れないように厳重な警備をしているのだが、万が一という事もある。

だから王族でも安心して学べるように専属の騎士が交代で教室の外に待機しており、まさに特別なクラスだ。

「えー。だったらさぁ。僕が隣のクラスに行きたかったなぁ。王子様と同じクラスとか、緊張しちゃうよ」

アジュールたちの会話を聞いていたノエルが、頬杖をついたまま口を開く。

「まあ、ノエル君。不敬ですわよ」

トレイがたしなめるように言うと、ノエルは「だってさぁ」と唇をとがらせる。

「僕だって幼馴染みと同じクラスが良かったよ……」

レナリアも、できれば王子とは別のクラスになりたかったと思ったが、なってしまったものは仕方がない。

そろそろ他の生徒たちも戻ってくるのだろう。

教室の外が騒がしい。

扉を開けて入ってくるのはセシル王子だ。

なぜかレナリアを見て、にっこりと微笑んでいる。

とても嫌な予感がした。