軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

136話 エルトリア国王アルバート・レイ・エルトリア

アルバート・レイ・エルトリア。

それがこのエルトリア王国の国王の名前である。

先代国王とゴルト王国から嫁いだ王妃との間に生まれた、ただ一人の正統な後継者だ。

幼いころに先代国王が亡くなるとすぐに即位をしてエルトリア国王となったものの、実際に王国の舵を取るのは難しく、後見として王太后が執務を請け負っていた。

それは国王が成人してからも変わらず、エルトリア王国の実権は今もなお、王太后が握っている。

そのため、エルトリアの王宮に王太后ゆかりのゴルト王国のものが増えてきているのは、国王の弱腰のせいだと不満に思うものも多い。

その国王が唯一母に逆らったのは、十七年前のレナリアの母エリザベスと親友であるクリスフォード・シェリダンの結婚の許可である。

エリザベスの母は先代国王の愛妾で、王太后が先代国王に嫁ぐと横やりを入れなければ結ばれていた、かつての恋人だった。

先代国王は政略で強引に結ばれた王妃を愛することはなく、後継であるアルバートが生まれてからは体を壊すほどに政務に没頭した。

ついに倒れた先代国王を見かねて、侍女としてかつての恋人クレア・シモンズを王宮へ迎えた。

侍女という名目ではあるが、実質は愛妾だ。

そして生まれたのがエリザベスだ。

だが産後の肥立ちが悪く、その上王太后の悪意にさらされ続けたクレアは、エリザベスがまだ一歳の時に亡くなってしまう。

そして不幸なことに先代国王も愛する人の後を追うように一年後には亡くなってしまった。

残されたエリザベスは、先代国王の寵臣と、そして兄であるアルバートの尽力により王宮の奥深くで大切に育てられた。

だが美しく成長したエリザベスに深く嫉妬した王太后は、何度もエリザベスを亡きものにしようと企んだ。

そこで国王は、王宮から遠く離れた辺境の修道院へとエリザベスを隠した。

その修道院で、レナリアの両親は運命の出会いを果たすのである。

当然、その二人の結婚に王太后は猛反対をした。

だが日頃は王太后の言いなりになっている国王が、二人の結婚の許可に関しては頑として譲らなかったのだ。

そのおかげでエリザベスとクリスフォードは結ばれ、アーサーとレナリアが生まれた。

つまり、レナリアにとって初めて見る国王は恩人なのだ。

「へ~。じゃあボクも王様には感謝しとこーっと」

レナリアの説明を聞いたフィルは、頭の後ろに手を当ててパタパタと飛んでいて、とても感謝しているようには見えない。

「よく分かんないけど、チャムもー。王様、ありがとー」

チャムはしっぽをユラユラさせながら、国王に手を振っている。

「その、おうたいごーって人は、今日は来ないの?」

「どうなのかしら……。まだいらしていないということは、来ない可能性が高いと思うんだけど……」

例の食事会でも、レオナルドとセシルから国王夫妻が来るとは聞いているが、王太后の話は出ていない。

多分、今までも観戦しにきたことはないのだろう。

「ちぇーっ。来たらコテンパンにしてやろうと思ったのに」

「そんなことしちゃダメよ、フィル」

レナリアが苦笑すると、フィルは悪びれずに新緑の目を瞬く。

「だってレナリアの敵はボクの敵だからね。容赦はしないよ」

「チャムも、戦うー!」

「敵じゃないから、戦わなくていいのよ」

フィルとチャムをなだめながら、レナリアは精霊ってみんなこんなに好戦的なのかしらと首を傾げる。

でも物語でも精霊は契約をした守護者を大切にしているから、きっとどの精霊も同じようなものだろうと思いなおす。

……実際は、フィルたちの愛はかなり重いが、比較する対象がないのでレナリアは気づいていない。

「あ、そろそろ開会式よ」

開会式では、学園長が開会の宣言をする。

入学式でその姿を見て以来だが、中肉中背の特徴のない男で、学園長のローブを着ていなければ誰も学園長だと気づかないと思われるほど威厳がない。

声にも目立つ特徴はなく、なぜ彼が魔法学園の学園長となったのかは謎だと言われている。

「これよりエレメンティアードを開催する。生徒諸君は無理をして怪我をしないように。以上」

学園長はそれだけ言うと、さっさと壇上から降りた。

あっさりとした開会の宣言に、初めて観戦しにきた一年生の保護者たちは戸惑った。

だが二年生以上の生徒たちの親は、去年もまったく同じ宣言を聞いたので、気にせず拍手をする。

レナリアがちらりと両親のほうを見ると、二人とも笑顔で拍手をしていた。

(フィル、私がんばるわ)

せっかく領地からあまり出ない両親が応援にきてくれたのだ。

全力で頑張らないように頑張って、少しでも喜んでもらいたい。

「そうこなくっちゃ! 風魔法クラスで優勝めざそう!」

「チャムもがんばるー!」

精霊たちの頼もしい応援も受けて、レナリアはぐっと手のひらを握りこんだ。