軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

135話 エレメンティアードの始まり

魔法学園におけるエレメンティアードで、レナリアたち一年生は属性のクラスごとに分かれ、競技場でリッグルに騎乗して直線コースを走る。

コースの左右に的があり、円形の的は、中央の黒い丸を起点にして五つの輪が描かれている。

その的に魔法を当てて得点を競うのだが、中央に近いほど得点が高く、また、的に当たる魔法の範囲が小さいと加点される。

つまり大きな魔法で的全体に魔法を当てるよりも、小さな魔法で中央を狙ったほうが得点が高くなるのだ。

また的の位置も、手前にあるものよりも遠くにあるもののほうが得点が高い。

二年生は競技場を一周する。もちろん的の数は多くなり、遠くに設置される的の数も多くなる。

三年生になるとリッグルの羽が成長して空を飛べるようなので空中戦で競う。

風魔法で固定された的が空中に設置され、それを打ち落としていくのだ。

四年生になるともう少し大きな競技場での戦いとなる。

四年生は文官専攻・魔法専攻・騎士専攻でクラス分けがされているので、専攻や属性を考慮したバランスのよいチームを作り、空中や地上にある的に当てる。

三年時までとは違い的も動くので、得点を重ねるのは難しい。しかも特定の属性でなければ落とせない的もあるので、チームでの協力が必要だ。

最終学年の五年生は個人戦となるので、自分の属性の的を瞬時に見つけて落とすという、個人の技量が必要となる。

それゆえに、個人優勝をしたものは学園で最も優秀な生徒という評価になる。

今年はレナリアの兄のアーサー・シェリダンと王太子レオナルドの一騎打ちになると予想されていて、例年になく観客が多かった。

「凄い人ね……」

これから開会式が始まるので、生徒たちは会場の手前で待機している。

そこから見る観客の数は、レナリアが見たこともないほど多い。

シェリダン侯爵家は王太后に疎まれていることから、王都での社交からは距離を置いている。

だからレナリアは、今までに一度も、これほど大勢の人が一堂に会するような催しに参加したことがなかった。

今まで領地での収穫祭くらいしか見たことがないレナリアは、大勢の観客に目を白黒させていた。

レナリアと同じく、生まれて初めてこんなにたくさんの人間を見たチャムも、気後れしてレナリアの背中に張り付いている。

「どこからこんなにいっぱい人が沸いたんだろ」

さすがにここまで人が大勢いると思っていなかったフィルが、会場を見回す。

レナリアもフィルに負けないくらいきょろきょろと競技場の中を見回している。だが人が多くて、誰が誰だかまったく分からない。

「レナリア、誰か探してるの?」

「探してるのー?」

フィルとチャムがそんなレナリアの様子を見て、尋ねてきた。

「お父さまたちがいらしてると思うのだけど……」

レナリアは背伸びをしてみたが、やっぱり見つからない。

「ダメね、どこにいるのか分からないわ。……後で会えるからいいけれど……」

開会式の前に久しぶりに会いたかったが、家族との合流はエレメンティアードが終わった後と決められている。

その時だけは、寮の自室に男女を問わず家族を迎えられるので、両親とアーサーにはレナリアの部屋へ来てもらうことになっていた。

その前に一目でも見たかったが、どうやら両親との再会はそれまでお預けだ。

あきらめかけたところに、フィルがレナリアの制服の袖を引っ張った。

「ねえねえ、あそこじゃない?」

「えっ、どこ?」

フィルが指を差したほうを見ると、確かにレナリアたちの両親がいるのが見える。

二人はなぜか高位の貴族たちの座る席ではなく、平民に近い、下位貴族の座る席にいた。

向こうも会場内でレナリアとアーサーの姿を探している様子だが、気づいていないようだ。

「遠くて気がつかないみたい……」

しょんぼりと肩を落とすレナリアだったが、父のクリスフォードはどうやらレナリアを見つけてくれたようで、すぐに隣のエリザベスに教えて二人で手を振ってくれた。

「お父さま、お母さま……」

レナリアも胸元で一生懸命手を振り返す。

まだ学園に入学してそれほど経っていないというのに、もうこんなにも懐かしい。

思わず涙ぐみそうになるが、必死にこらえる。

シェリダン家の娘として、こんなところで泣く姿など見せられない。

きゅっと唇をかみしめたレナリアだが、周りの友人たちも涙ぐんでいるのを見て、寂しいのは自分だけではないのだと心をなぐさめた。

そろそろ会場内に入場する時間だ。

レナリアは気持ちを改めて前を向く。

その視線の先にセシルの姿が映った。

そういえば、セシルさまのご両親もいらっしゃるのかしら……。

セシルの両親とは、つまり国王夫妻だ。

エルトリア国王はレナリアの伯父であったが、王家とシェリダン家の間に確執があることから、今までに一度も会ったことはない。

正面を見ると、屋根つきの観覧席に何人かの人影が見える。

もしかして……。

そこには王太子レオナルドとセシル王子の活躍を見に来た、王族たちの姿があった。