軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第020話 実は超名馬

俺達は準備を終えたので店を開き、仕事をしていく。

とはいえ、魔石の加工も終わっているし、通常業務だ。

「ジェフ爺のところはどうなっているのかしら?」

アンジェラが聞いてくる。

「さあな。あれから何の連絡もない。親父さんやおふくろさんから何か聞いてないか?」

ジェフ爺さんの店はアンジェラの家の近所なのだ。

「何も。昨日の帰りと今朝、店を覗いてみたけど、馬車はなかったわね」

ということはキースはまだ帰ってないわけか。

「さすがに今日帰ってこなかったら何らかのトラブルだぞ」

往復で4日なのにもう7日だ。

王都での仕入れなんかを考えてもさすがに時間がかかりすぎている。

「キースさんは王都で遊ぶような人じゃないしね」

真面目な男で嫁さんも2人の子供もいる。

酒も飲まないし、タバコもやらない人間だ。

「まあな。今日は早めに閉めて、アーヴィンに話を聞いてくるわ。部品のことよりもキースが心配だ」

「私もギルドに行ってみる。ヴィオラに聞けば何かわかるかもしれないし」

「頼むわ」

俺達はちょっと心配になりながらも仕事をしていく。

そして、16時前ぐらいには店を閉めるために片付けをし、外の【営業中】の看板をひっくり返し、【準備中】にした。

「エリックさーん」

声がしたので振り向くと、ヴィオラが手を上げて、こちらに歩いてきていた。

「おー、ヴィオラ。店はもう閉めたぞ」

「いえ、客じゃないですよ」

そうなのか?

「まあ、ちょうど良かった。ちょっと話があるんだ。入ってくれ」

「私もです」

そりゃそうだろうなと思いながらもヴィオラと店に入る。

「てんちょー、これは……あれ? ヴィオラじゃん。どうしたん?」

機材をしまっていたアンジェラがヴィオラに気付く。

「アンジェラさん、こんにちは。ちょっと話がありまして……」

「ふーん……お茶、いる?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「そう? いや、もうちょっとしたらあんたの所に行こうと思ってたんだよね。キースさんのことで何か知らないかと思ってさー」

うん、それ。

ちょうど良かった。

「私もその件で来ました。キースさんはいまだに帰ってきていません」

やっぱりか。

「そっか……その報告?」

「それもですけど、ちょっとエリックさんの耳に入れた方が良いかなーっという件がありまして」

俺?

「何だ?」

「ホートリー総合商店のジェフさんから捜索依頼が出ました。それをメアリーちゃんが受けたんです」

捜索依頼か。

「あいつ、最低のFランクだろ」

「ええ。ちょっと難易度が高めなんですが、もし、馬車に何かがあって動けないという場合は修理ができるメアリーちゃんが適しているんです」

あー、あいつは器用だし、ウチで慣れているから馬車の応急的な修理くらいならできるな。

「それはわかるな。メアリーとカトリーナ、それにシャーリーか?」

「はい。3名で王都方面の街道に行きました。ただ、泊まりはなしで18時までに帰るという条件付きです」

カトリーナに門限があるからな。

「ルーキー3人か」

「はい。本当はベテランの方をサポートにつけたいんですが、今日は皆さん、仕事に出ていまして、誰もいないんです」

いつも遊んでいるくせに今日に限って、真面目に仕事か。

まあ、良いことだし、文句を言うことではない。

「それでわざわざ来てくれたのか」

「はい。エリックさんには報告した方が良いだろうと思ったので……どうします?」

「どうもせん。あいつの仕事だ。ちゃんとやるだろう」

それぐらいの見極めはできる子だ。

「あ、そうですか……では、お知らせはしましたので」

「ああ。わざわざありがとうな」

「いえ……それでは」

ヴィオラが頭を下げ、帰っていった。

「よし。アンジェラ、今日はもう帰っていいぞ」

「あ、やっぱり行くんだ……」

「ちょっと様子を見てくるだけだよ」

キースも心配だし。

「まあ、私も心配だし、晩御飯でも作って待ってる」

「すまんな」

「ううん、いいの。待つのも良い女の条件だから」

良い女だな。

「行ってくる」

俺はリビングに行くと、腕輪のボタンを押し、正義のダークヒーローに変身した。

そして、リビングに置いてある鏡を見る。

そこには漆黒の服とマント、さらにはフルフェイスで顔を隠す謎の男が立っていた。

「ふっ、漆黒の使者、フルフェイス・マスクマン」

「さっさと行ったら?」

良い女が冷たい声でそう言いながら後ろをすたすたと歩き、キッチンに向かう。

「い、行くよ」

そういえば、アンジェラは料理を作るんだから一緒にこっちに来るわな……

ちょっと恥ずかしいと思いながら裏口から庭に出た。

そして、白馬のラシェルを撫でる。

「おー、よしよし。今日も美人だなー」

ラシェルは嬉しそうにすり寄ってくる。

こいつは美人と言うと喜ぶのだ。

「よし、ラシェル、ちょっと外に行こうか。しかも、白馬のお前とこの漆黒の使者の組み合わせはかっこいいぞ……こら、どこに行く?」

後ずさりするな。

「いいから行くぞ。お前の好きなメアリーのピンチかもしれないんだぞ」

そう言うと、ラシェルが大人しくなったので馬具を取り付ける。

「よし」

準備ができたのでラシェルに跨ると、裏道を通り、表に出た。

「行くぞ」

足で合図を送ると、ラシェルが走りだし、徐々にスピードが上がっていく。

馬が走り、その馬上にはフルフェイス・マスクマンが乗っているので住民達から注目を浴びるが気にせずに進んでいった。

そして、ラシェルが自慢の脚を見せつけるように走っていき、あっという間に北門を抜ける。

「ラシェル、このまままっすぐだ」

ラシェルに指示を出し、平野を駆けていく。

誰か遠くから写真でも撮ってくれないかなと思いながら猛スピードで進んでいった。