軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58話 王朝の終焉

「国王陛下まで捕らえられてしまったのですか?!」

魔女狩りが行われた翌日。

私は学院のお昼休みに、いつものカフェテラスでユベール様から魔女狩りの顛末の概要を知らされました。

「国王陛下は王妃様を庇ったので、魔女の手先であるとされたようです」

ユベール様は皮肉っぽい微笑を浮かべて、小さく肩をすぼめました。

そのお話を聞いて、昨日、父が王宮に緊急招集された理由が解りました。

「それで昨夜、王宮で緊急会議があったのですね」

「そうです。国王が不在となったため宰相が緊急会議を主催しました」

「私が昨日、学院で平穏に過ごしている間に、王朝が終焉していたなんて……」

ちょっと信じられないような、魔法で騙されたような微妙な気分です。

「あっけないものですね」

「実質、教皇庁と帝国が相手ですから結果は見えていました。負けは確定として、どれだけ上手く立ち回って損失を少なくできるかが国王陛下の政治手腕によるところでしたが、大損害を選択なさったようです」

ユベール様は皮肉っぽい微笑を浮かべました。

「では、我が国は今、国王不在なのですね……」

「そういうことになります」

「ユベール様が王太子になる予定でしたのに。ユベール様は国王になってしまうのですか?」

「いいえ、まだ私は立太子されていませんので、現時点では王太子も不在です。私の父が国王に即位するようですので、私の立太子はその後になるかと」

「ユベール様の立太子式の前に、ヴェルニエ公爵の戴冠式ですか」

「そうです」

そう言い、ユベール様は少し遠い目をなさいました。

「試験で首席をとるための勉強が、全て無駄になりました……。首席になって優秀さを宣伝する必要がなくなりましたから……」

「そうですね。ヴェルニエ公爵が即位なさるなら、ユベール様はもう王太子に確定ですものね」

「フェリシア嬢、今日は帰りに、久しぶりにカフェに行きませんか?」

「良いですね。行きましょう」

お昼休みのカフェテラスでいつものようにじゃれあっている私たちを、周囲の生徒たちが伺うようにチラチラと見ています。

宰相が主催した緊急会議に、親が招集された者たちの中には、すでに王朝が終焉したことを親から聞いている者たちがいるのでしょう。

今日は学院の雰囲気がいつもと微妙に違い、不安そうな顔をしている生徒があちこちに見受けられました。

私やユベール様を伺い見ている者たちは、次の国王がヴェルニエ公爵に決まったことをすでに親から聞いているのかもしれませんね。

私の父は、王宮から帰宅するなり眠ってしまった役立たずですので、私は何も教えてもらえませんでしたけれど……。

「フェリシア様、ユベール様……」

私たちのテーブルに近付き、そう声を掛けてきたのは才女アメリ様でした。

アメリ様はヴェルニエ公爵が即位なさることをすでにご存知のような雰囲気で、怪しい笑顔を浮かべて内容をぼかして言いました。

「このたびは誠におめでとうございます」

「アメリ様、ありがとうございます」

「ご丁寧にありがとうございます」

アメリ様の祝辞に、私とユベール様は感謝を述べました。

「我がエルマン伯爵家はもとより忠誠を誓っております。今後もどうぞよしなに」

素早く情勢を呼んで、権力に 阿(おもね) るその処世術。

さすがは才女アメリ様です。

(そうだわ。アメリ様のご実家は商家でいらっしゃるから……)

私はルシアン殿下がこの先、セリーヌ様と駆け落ちした場合の将来について、アメリ様に相談することを思い付きました。

あ、もうルシアン殿下ではなく、修道士ルシアン様ですね。

「アメリ様、早速ですが少しご相談したいことがありますの。よろしければ、お掛けになりませんか?」

私はアメリ様に席を勧めました。

「はい。ありがとうございます。何なりとお申し付けください」

恭しく礼を取り、私たちのテーブルに同席したアメリ様に、私は早速相談しました。

「例えばの話なのですけれど。貴族の令息と令嬢が駆け落ちしたとします。お金の心配はありません。それで二人は平民になって、毎日何をして暮らして行けは良いのでしょう」

「え、まさか……」

アメリ様は顔色を変えて、私とユベール様を交互に見ました。

「アメリ嬢、誤解しないでください。私とフェリシア嬢のことではありません」

ユベール様が半目になって、片手をひらひらと振って「無い無い」のジェスチャーをしながら言いました。

「フェリシア嬢が最近気にしている二人のことです。彼らは家の事情で別れることになりそうなのです。フェリシア嬢は二人の恋愛を応援していて、駆け落ちを提案しているのです。今のところ二人には、駆け落ちの意思はないようですが……」

「でも、本当に別れることが決まったら、駆け落ちする気になるかもしれないでしょう?」

私はユベール様に言いました。

「だからお二人のために、市井の生活について調べておきたいのです。備えあれば憂いなしと言いますから」

「もしかして……」

アメリ様が考えるような顔をして言いました。

「それは『ル』から始まる名前の男性と、『セ』から始まる名前の女性のことですか?」

「え?!」

大当たりで、私はびっくりしてしまいました。

「その通りです。アメリ様、すごいです。どうして解ったのですか?」

「先日、フェリシア様が『セ』から始まる名前の女性とお話をしていたので、もしやと思いました。この状況なら、彼女はおそらく婚約解消するでしょうから条件に当てはまります」

「すごいです!」

私は思わず拍手をしてしまいました。

「あの二人は、駆け落ちはしないと思いますよ」

アメリ様は冷めたお顔でおっしゃいました。