軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59話 賭けごと

「男性のほうはともかくとして、女性のほうは恋愛をしているのか疑問です」

アメリ様は困ったように眉を下げて笑いながら言いました。

「彼女は彼の優秀さと身分に魅力を感じていたようですから、彼の優秀さがハリボテだと解り、身分もなくなった今、彼に対して気持ちが残っているかどうか……」

小さく肩をすぼめたアメリ様に、私は先日カフェでセリーヌ様のお話を聞いたことを話しました。

「私は彼女とお話をして、気持ちを確認したのです。彼女は、彼に身分がなくなったとしても結婚したいと言っていました」

「それは、一昨日より以前のお話ではないでしょうか」

「ええ、そうです」

「その時点では、彼女は、彼が身分を失うことはないと心のどこかで安心していたと思います。口では身分がなくても良いと言っていても、いざ本当に身分を失ったら、気持ちが変わってしまう人は世の中に大勢いますわ。状況がかなり大きく変わりましたので、もう一度、彼女の気持ちを確認したほうが良いかと存じます。それに……」

アメリ様は少し皮肉っぽい微笑を浮かべて言いました。

「結婚は神に誓うもので、教会が取り仕切るものですから、神に背く異端者は結婚ができません。もし彼女が望んだとしても、彼が神に許されるまでは結婚できませんわ」

「彼は異端者ではありません。悪魔祓いが成功したので今は修道士なのです」

「修道士も結婚はできないかと」

「ええ、そうなのですけれど。魂の浄化が終われば還俗できます。還俗すればご結婚は可能ですわ」

私はセリーヌ様と修道士ルシアン様は真実愛し合っておられると信じています。

でもアメリ様はそうでもないようで、曖昧に微笑むと言いました。

「そのときまで彼女が彼を待っているでしょうか?」

「私もアメリ嬢に同意です」

ユベール様も曖昧な微笑で言いました。

ユベール様は、セリーヌ様とは婚約者同士だったときに事実上の浮気をされていらしたので、セリーヌ様に対して良い感情をお持ちではないのです。

「彼女は……流行に流されやすいというか、皆が賞賛するものに流されやすい面がありました。彼はもう誰からも賞賛されませんから、彼女の気持ちも冷めるのではないでしょうか」

セリーヌ様が修道士ルシアン様に恋していらしたのは、皆に賞賛されるものに流された結果だという意味でしょうか。

つまり、皆が、王子時代の修道士ルシアン様を賞賛していたと?

「彼ってそんなに人気があったのですか?」

私のその質問にアメリ様がお答えになりました。

「女子生徒には人気がありました。身分が高く、美貌でいらっしゃって、そして政治がお出来になって王宮の重鎮たちにも一目置かれているということで、とても人気がありました」

(皆様、お目が高いわ)

私は、かつて王子だった修道士ルシアン様との婚約の解消を望んでいましたが、それは王妃教育が辛かったからです。

ルシアン様ご自身のことはよく知りませんでした。

話が通じないお方だとは思っておりましたが……。

でもルシアン様には大変な才能があったのです。

ええ、もちろん、私のことを悪魔憑きだと言ったあのアイディアのことです。

(ルシアン様の、王子時代の悪魔憑きのアイディアが実行されたら、あっという間に王朝が終焉してしまったのだもの)

あのとき私は、悪魔憑きのアイディアを名案だとは思いましたが。

まさか、ここまでの破壊力があるとは思っていませんでした。

(ルシアン様は王太子には向いていなかったけれど、天才だわ。話が通じなかったのも、彼が天才すぎたからで、私には天才の考えが理解ができなかったせいなのかも)

「フェリシア嬢、賭けをしませんか」

おもむろにユベール様は言いました。

「彼が還俗するまで彼女が待っていられるか、賭けをしましょう。負けたほうが、カフェで奢るということでどうでしょう。私は彼女の気持ちが冷めるほうに賭けます」

「受けて立ちますわ!」

これだからユベール様は面白いのです。

「私はもちろん、彼と彼女の真実の愛に賭けます!」

「アメリ嬢もこの賭けに参加しませんか?」

ユベール様はアメリ様にも話の水を向けました。

「私のような者がお二人の賭けにご一緒してよろしいのですか?」

アメリ様が遠慮がちにそう言うと、ユベール様は朗らかに微笑みました。

「もちろん」

「では私も、彼女の気持ちが冷めるほうに賭けます」

アメリ様もユベール様と同じく、セリーヌ様がルシアン様から離れるほうに賭けました。

(これは私の一人勝ちになるのではないかしら!)

私は自信満々に宣戦布告をしました。

「私は天使の愛を信じています!」