作品タイトル不明
10話 婚約者が恋人
「フェリシア嬢、何だか妙な縁ですが……。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
私はヴェルニエ公爵令息ユベール様と婚約しました。
婚約者同士で親睦を深めるために、今日はユベール様をお招きしました。
二人でお茶を飲みながらお話をしています。
「学院で噂を止められなかったことは、本当に申し訳なかったと思っています」
「ご心配にはおよびませんわ。私は気にしておりませんので。それにセリーヌ様は天使のようにお優しいお方です。ブランシュ様も」
「フェリシア嬢は、何と言うか……いつも寛大ですね。恐れ入ります」
それから私は、ユベール様と色々なお話をしました。
王妃教育のことや、王妃教育のことや、王妃教育のことを。
「私の母はフェリシア嬢のことを実はずっと気に掛けていたんです。王妃教育を三年もやっているなんておかしいと不思議がっていました」
「ヴェルニエ公爵夫人が?!」
「はい。公爵家の娘なら、王妃教育は今まで習った事の復習ばかりだから、すぐ終わるはずだと。王妃様が直々に教えるのもおかしいと言っていました。専門の講師が教えるはずだと」
「もしかして、本物の王妃教育って……宮廷作法と、公用語と、歴史かしら?」
「私には解りませんが、母なら解ると思います。今度我が家に遊びにいらっしゃいませんか? フェリシア嬢は多分、私の母と話が合うと思います。王妃様の件で」
「ぜひ、ぜひ!」
「母も昔、フェリシア嬢のように、王妃様に発言を流用されたことがあるそうです」
「ヴェルニエ公爵夫人も?!」
「それで母はずっとフェリシア嬢のことを気にしていて、王妃教育のことも疑っていたのです。フェリシア嬢の王妃教育が始まると、王妃様やルシアン殿下が急にご立派な発言をなさるようになったことも怪しんでいました」
「ご慧眼なお母様ですわね。ぜひお話をうかがいたいわ」
ヴェルニエ公爵夫人のようなお母様がいらっしゃるユベール様が羨ましいです。
私の母なんて、王妃様を疑うどころか、私より王妃様を信じていましたから。
(でもユベール様と結婚したら、ヴェルニエ公爵夫人が私のお 義母(かあ) 様になるのよね。楽しみだわ)
私はユベール様とすっかり意気投合しました。
「実は私もフェリシア嬢のことはずっと気になっていたんです」
「まあ! お上手ですわね!」
「本当のことです。一学年の最初の試験でフェリシア嬢は首席でしたよね」
「ご存知でしたの?!」
「はい。実はそのときの二位は私だったんです。ご存知ないですよね……」
「あ、そうだったのですね……」
「次の試験では絶対に抜かしてやろうと思っていたのです。それが、フェリシア嬢は急に成績を落とされてしまって、どうにも不自然で気になっていました」
「王妃教育でしたのよ……」
「おいたわしい……」
政略による婚約で結ばれた私たちですが。
古い友人同士のようにまったりしてしまいました。
「次の試験では勝負できますか?」
「ええ、次は全力ですわ!」
「楽しみです」
でも結局、私たちどちらも首席にはなれませんでしたの。
二人でおしゃべりしたり、お出掛けしたりするのが楽しくなってしまって、学業がおろそかになったからです。
「中央劇場のチケットが取れました。ご一緒にいかがですか」
「まあ、素敵!」
私たちまるで恋人同士のようになってしまいましたが。
婚約者同士ですから何も問題ありませんよね。
――第1章・完――