軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

順次

ニートアントを倒すのにウォーターストームを三発放った後、ニードルウッドLv9はファイヤーボール四発で沈んだ。

火魔法だけなら六発かかるはずだから、水魔法三発で火魔法二発分。

Lv8までは魔法五発でよかったことを考えると、おそらくウォーターストーム三発で火魔法一.五発分くらいのダメージを与えているのだろう。

水魔法はダメージが半分ということか。

クーラタルの迷宮九階層は、出てくる魔物の半分くらいが九階層の魔物ニートアントで、八階層の魔物ニードルウッドもアリの次によく出てくる。

ニートアントは水魔法が弱点で、ニードルウッドは水魔法に耐性がある。

なかなかうまくいかないらしい。

とはいえ、ニートアントの方が九階層の魔物でよかった。

逆だったら大変だ。

ニードルウッド三匹とニートアント一匹が出てきたら、ウォーターストーム三発でニートアントを屠っても、まだニードルウッドが三匹残ることになる。

クーラタルの迷宮九階層では、ニートアントがたくさん出てくることの方が多いだろう。

ニートアントは、毒攻撃をしてくるらしいので先に倒すべきだ。

水魔法を使えば三発で倒せるので、攻撃を受ける前に倒せている。

現状では、ニートアントの毒を受けることはあまりないだろう。

ニードルウッドの方は、レベルが上がっているし戦闘時間も延びているから魔法を使ってくる回数が増えてもおかしくないが、戦う絶対数が八階層よりも減っているので、そうそう撃ってはこない。

クーラタルの迷宮九階層でもちゃんと戦えるようだ。

迷宮から帰って、朝食を作る。

今日の朝食は、焼きそばならぬ焼きマカロニだ。

兎の肉と野菜をオリーブオイルで炒め、ゆでたショートパスタを入れた後、ワインをかけて焼き、火が通ったら魚醤で味をつける。

先日夕食の一品として試しており、味も問題ないことは確かめていた。

この世界にはフォークがないらしい。

ロクサーヌもセリーもナイフと木の匙を器用に使う。

俺は自作の菜箸があるからいいとして、焼きそばを作ったらロクサーヌとセリーはどうするのかということだ。

ちなみに、スパゲティのような長いパスタもある。

こちらの人はそれをどうやって食べるのかというと、素手でつかみ取りだ。

肉や野菜をナイフでぶっさすくらいはいい。

しかし、さすがに焼きそばを素手で食べることは、ロクサーヌやセリーにはやってほしくない。

だからショートパスタを使う。

ショートパスタならスプーンですくえる。

俺が朝食を作っている間、ロクサーヌは洗濯、セリーは掃除をしている。

洗濯機も掃除機もないから、負担は大きい。

朝食くらいは俺が作らないとばちが当たる。

焼きマカロニを食卓に持っていった。

甘辛い焼けた魚醤の香りが食欲を誘う。

二人ともすでにいた。

「待たせたか?」

「いいえ。大丈夫です」

セリーがイスに座り、ロクサーヌが後ろから髪をといている。

この前の休日に買ってきたブラシだ。

しかし何かが足りないような。

ロクサーヌがブラシを置き、俺の対面のイスに座った。

「ロクサーヌさん、ありがとうございました」

「じゃあ食うか」

「はい、いただきます」

違和感についてはおいておき、焼きマカロニの盛られた皿を配る。

焼きマカロニは、味の方は十分だが、こちらも何か物足りない気がした。

麺じゃなくてマカロニだからだろうか。

いや、青ノリがないからか。

さすがに青ノリと紅ショウガまでは調達できなかった。

まあそれくらいはしょうがない。

ロクサーヌもセリーも美味しそうにほおばっている。

地球基準で考えることはせず、これで満足すべきだろう。

物足りなさについて考えていて、さっき足りないと感じていたものの正体も分かった。

鏡だ。

ロクサーヌもセリーも鏡を見ずに髪をといていた。

俺はどうせ鏡なんか見ないが、必要は必要だろう。

俺がこの世界に来てから一ヶ月くらい経過している。

最近は髪の毛も伸びてちょっとうっとうしくなってきた。

いずれロクサーヌにでも頼んで切ってもらうことになるだろう。

鏡もないよりはあった方がいい。

「やっぱり鏡って必要か?」

マカロニを咀嚼しながら訊いてみる。

「あるに越したことはありませんが、どうしてもというほどでは」

「あんまり映りがよくないんだよなあ」

この世界の鏡は、分厚い金属の表面を磨いただけのものだ。

くっきりはっきりと映るものではない。

雑貨屋に置いてあるのを見たが、高い割には質がよくなかった。

「鏡の映りはどれも同じだと思いますが。ひょっとしてペルマスクの鏡を持っておられたのでしょうか?」

「ペルマスク?」

「帝国とカッシームとの間にある都市です。ロクサーヌさんから、カッシームより遠くの出身だと聞きましたので」

うん。

なんかそんなような会話をロクサーヌとした気がしないでもない。

正確に何と発言したかは覚えていないが、似たようなことは言った。

カッシームから来たのなら、間にあるというペルマスクについて知っていてもおかしくはないだろう。

「な、なにしろカッシームより遠いからな。カッシームのことも知らない」

などとごまかす。

これでいいのだろうか。

いい加減なことばかり言っていると詰む可能性があるな。

「そうですか。ペルマスクはガラス製品を作ることで有名な都市です。ガラスを使った鏡は大変に映りがよいそうです。貴族や大金持ちの間でも贈答品としてやり取りされるほどの高級品です」

この世界にもガラスを使った鏡がちゃんとあるらしい。

結構進んでいる。

帝都に行けばあるだろうか。

「高そうだな。まあいつか探してみるか」

「ペルマスクは遠いので、高くなってしまうのはしょうがありません」

「ご主人様なら、直接ペルマスクへ行けばいいのではないですか」

ロクサーヌが指摘した。

確かにペルマスクに行って直接買い付けるという手もあるか。

現地で買えば少しは安いだろう。

「ペルマスクがあるのは直接飛べるような近い場所ではないそうです。だからこそ高いのです」

「なるほど。確かにそうか」

冒険者が気軽に飛べるような距離にあるなら、特産品が高くなることはないだろう。

大きなものはともかく、手鏡やスタンドミラーくらいならフィールドウォークで運べる。

簡単に行ける場所にあるなら誰だって安いところで買うし、もっと差額があるのなら転売して儲ければいい。

ペルマスクが遠くにあるから鏡が高いということは、ペルマスクは気軽には行けないような距離にあるということだ。

フィールドウォークは遠くの場所へ行くほど大変らしい。

「ご主人様なら行けるのではないですか」

ロクサーヌの中で俺はどんだけすごいことになってるんだ、と思ったが、違った。

俺はペルマスクの向こうのカッシームよりもさらに遠いところから来たことになっているのだ。

ペルマスクくらいならひとっ飛びだろう。

そうじゃなきゃおかしい。

いい加減なことを言うんじゃなかった。

「ど、どうだろうな」

「何日かに分ければ行けるでしょうが、直接飛べるとは限らないのでは」

そう。セリーのいうとおり、何日かに分ければいい。

別にカッシームの向こうから一日で来たというわけではない。

大陸がつながっているなら、徒歩でだってカッシームからここまで来れる。

何年かかったとしても。

「まあ試してみる価値はあるか」

「帝都の向こう側にドホナという都市があります。ご存知ですか」

「行ったことはないな」

「ドホナの向こうにドブロー、ドブローの向こうにサボージャ、その向こうにアイエナ、アイエナの向こうに……」

セリーがいくつもの地名を挙げる。

もちろん俺が知っているはずもない。

カッシームからここまで順々に来たのなら、どれか知っていなければおかしいはずだ。

悪かったな。

やっぱりカッシームからここまでひとっ飛びで来たのだ。

飛び飛びで来たのではない。

「どれも知らないな」

「そうですか。多分別ルートでいらしたのでしょう」

そう、別ルート。

何も道が一つだけとは限らない。

「そうなんだろうな」

「ペルマスクにはどこの冒険者ギルドからでも一気には行けないと思います。今挙げた都市を小刻みにつないでいくことになるでしょう」

少しずつ行ってみるとしよう。

朝食を食べてから、セリーにミサンガを作らせた。

ミサンガを作る個数は少しずつ増やしている。

ミサンガ アクセサリー

スキル 空き

全部で三個めとなる空きのスキルスロットつきミサンガが完成した。

ミサンガは当面このくらいでいいだろうか。

三つあれば三人分の身代わりのミサンガができる。

壊れて必要になったら、また作ってもらえばいい。

「ミサンガの次に鍛冶師が作る装備品は何だ?」

「ミサンガで修行を積んだら、次はダガーです」

「ダガーか」

短剣とはいえ剣を作るとなれば、いよいよ鍛冶師という感じがするな。

「えっと。最低半年から一年、人によっては二年以上もミサンガを作る修行をするそうですが」

「ミサンガを作る修行は朝夕一個ずつだろう」

「は、はい」

「セリーはもう何個も作れるのだから、次の装備品にいってもおかしくない」

「……そ、そうですね」

鍛冶師の修行として聞かされたことの感覚がまだ抜けないようだ。

「大丈夫。できなければできなかったときだ」

「ダガーを作るときにはブランチを使います。ブランチは、できてもできなくてもなくなってしまうそうです」

なるほど。

失敗したときのデメリットがあるらしい。

「失敗したとき、他に不都合があるか?」

「他にはありません」

「ブランチ程度なら全然問題ない。大丈夫だ」

「わ、分かりました。ダガーを作る素材としては、コボルトが残すジャックナイフが二本、ブランチと皮が一つずつ必要です」

結構複雑だ。

大丈夫なんだろうか。

いや、大丈夫かとは聞けないが。

俺が大丈夫だと言ったくせに。

「なんかいきなり増えるんだな」

「複数の素材を使うのは、そんなに難しいことではないらしいです。もっといろいろな素材が必要な装備品もあります」

「そういうものなのか。ジャックナイフが二本と、ブランチはいいとして、皮は何だ?」

ジャックナイフを素材として使うらしい。

完成品をさらに進化させる感じなんだろうか。

あんまり鍛冶師らしくはない。

銅貨の原料にもなるジャックナイフは金属だから、ブランチは必要なのだろう。

金属加工にはブランチが必要だ。

残るのは皮だが。

「皮で鞘を作ります」

「便利だな」

装備品を作るとき、鞘まで一緒に作ってくれるらしい。

剣を打って鞘を別に用意してとなると、確かに大変だ。

そういう心配はいらないようだ。

午後の探索で、コボルトの出るベイルの三階層にも寄って狩を行う。

コボルトはジャックナイフだけを落とすのではないから、めんどくさい。

十匹も狩ってしまった。

最後は二匹のコボルトを倒したら二匹ともジャックナイフを残したし。

ギルドで買うべきか。

いや。別にダガーが必要なわけではない。

ダガーを作るのは一回だけにして、さっさと次の装備品に移ってもらうか。

次の装備品を作るのに必要なのが鍛冶師のレベルなのかMP保有量なのかは知らないが、できなくはないはずだ。

ひょっとしたら実際に作った経験が必要なのかもしれないが。

まあなんとかなるだろう。

「それでは作ります」

夕食前、ジャックナイフ二本とブランチ、皮をセリーに渡した。

セリーがスキル呪文を唱える。

手元が光った。

結構長く光っている。

光っているせいで、何をやっているのかはさっぱり分からない。

手が動いているのは、卓上に置いた素材を取り込んでいるのか。

これはもう明らかに難易度が上がっている感じがする。

ダガー 片手剣

やがて光が薄れると、一本の剣が残った。

皮の鞘に収まった一品だ。

「おお。成功だ」

「やりました」

セリーの方も大丈夫そうか。

「気分の方は問題ないか」

「はい。まだ大丈夫です。もう一つ作れそうです」

「まあ無理をすることない。さすがにミサンガよりは疲れただろう」

「そうですね。そんなような気もします。ダガーを作るのはミサンガよりもかなり疲れると聞きました。むしろその次に作る装備品である皮装備の方が疲れないそうです。その割にはそれほど疲れた感じはしませんが。どうなっているのでしょう。ダガーを作るのは疲れるし、朝夕一個ずつミサンガを作る修行が長い間必要だと私に教えてくれた人は、やはり嘘をついていたのでしょうか」

セリーの中で鍛冶師について教えてくれた人に対する不信感が高まっているようだ。

なんかまずい方向だろうか。

レベルに加えて、俺の英雄の効果であるMP中上昇もある。

多少の齟齬が出るのは仕方がない。

「まあ個人差もあるだろうし、嘘とまではいえないんじゃないか。それだけセリーが優秀ということだろう」

「ありがとうございます。そうですね。ダガーは作るのが大変なので、量産が難しく、売値が高いと聞きました。実際そのとおりになっているはずです。それを考えると、嘘とまではいえないのでしょう。不思議な話ですが」

「売値が高いのか。じゃあダガーはこれからたくさん作ってもらおうかな」

話をそらす。

あまり突き詰めて考えない方がいいことも世の中にはある。

「はい。がんばって作ります」

「ダガーの次は皮装備なのか」

「皮のミトン、皮の帽子、皮の靴ですね。どれも皮一つでできる装備品です」

なるほど。

皮一つで作るなら、難易度は変わらないということか。

「皮ならいっぱいあるから、次はそれを作ってもらうことにするか」

「はい。ブランチを使わないなら、失敗しても大丈夫なはずです」

失敗したときのデメリットがないせいか、セリーが元気よく応えた。