軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

夕食会

クーラタルの迷宮ではデュランダルなしでボス戦を繰り返すことになった。

限界を早めに察知するという点で、悪いやり方ではないだろう。

それに、今日から二日間二十七階層のボス戦を繰り返すことにすれば時間を稼げる。

転んでもただでは起きない。

「ロクサーヌ、近くに魔物がいるか。いれば戦ってもいいし、いなければ下へ戻る」

「こっちですね」

いたんだ。

Lv28の魔物とも戦ってみる。

サイクロプス三匹を風魔法と雷魔法で翻弄し、倒した。

問題はないようか。

「魔法だけで戦うので、ボス戦は二十三階層からやってみよう」

ボス戦を中心にやっていくなら、いつもいつもデュランダルを出すことはできない。

デュランダルなしに戦うのだから下の階層から試してみるのがいいだろう。

ボス部屋に出てくる魔物の数が増える二十三階層からが適当だ。

「分かりました」

ロクサーヌも素直に従ってくれるらしい。

二十三階層に移動して、ボス部屋に向かう。

途中の魔物は問題なく蹴散らし、待機部屋に到着した。

準備を整えて突入する。

ボス戦では今まで、デュランダルだけでなくセブンスジョブまで使っていた。

さすがにセブンスジョブまで使うとボーナスポイントのやりくりが大変なので、これもなんとかする。

かといって博徒を使わないのは怖いので、魔法使いをはずした。

博徒と魔法使いなら、ボス戦で役に立つのは博徒だろう。

ボスを石化して無力化できれば大きい。

魔法使いをはずすことで戦闘時間は多少延びるだろうが、戦闘時間が長くなれば石化もそれだけ出やすくなるはずだ。

「詠唱中断はセリー頼みになる。ミリアは待ち受けずに魔物の相手をしてくれ」

「はい、です」

「まずは一匹だけを相手にしてくれればいいから」

現れたゼリースライム、グミスライム、クラムシェルの三匹に雷魔法と風魔法を撃ち込む。

遊び人のスキルは、いちいち変更するほどの時間はないから下級雷魔法のままだ。

クラムシェルの弱点の土属性はスライム二匹の弱点ではないので使えない。

ミリアがグミスライムに突っ込んだ。

クラムシェルとグミスライムならグミスライムを先に石化させたいので、この選択は正しい。

かどうかは分からない。

クラムシェルの方が簡単に石化できるとしたら、クラムシェルをすぐに石化させてボスに向かうという作戦もありうる。

分からないから指示もしなかったし、ミリアの好きにすればいいだろう。

ロクサーヌも指示は出していない。

ミリアの初撃は、状態異常耐性ダウンをかける前に行われた。

待ち受けずに突撃させるのにはこういう問題もあるのか。

失敗したな。

雷魔法もあるのだから、最初に状態異常耐性ダウンをかければよかった。

「やった、です」

状態異常耐性ダウンをかけると、二撃めには早くもミリアがグミスライムを石化させる。

ボスにも状態異常耐性ダウンをかけた。

耐性が下がったおかげか、ボスは俺の雷魔法で麻痺する。

動かなくなったボスと残ったクラムシェルは、ミリアがあっさりと石化させた。

「うーん。なんか簡単に終わってしまったな」

石化した三匹を片づける。

「いつもはもっと上の階層で戦っているのですから、このくらいは当然のことでしょう」

「それもそうか」

「二十三階層で戦っていたのはそんなに昔ではありませんが」

ロクサーヌの意見に賛同したら、セリーから突っ込まれた。

獲得経験値二十倍の恩恵か。

どうなんだろうか。

それほどレベルは上がっていないと思うが。

「まあ二十三階層で戦っていたときもそんなに苦戦した覚えはないしな」

「そうでしたか?」

「この分なら大丈夫だろう。順次上がっていこう」

適当にごまかして、上の階層に行く。

ボス戦をこなしながら、二十七階層まで進んだ。

二十七階層のボスも問題なく倒す。

「二十八階層の地図は持ってきていませんが、どうしますか?」

二十八階層に移動すると、ロクサーヌが訊いてきた。

「今日と明日は二十七階層のボス戦で様子を見ればいいだろう」

「二十七階層はもう問題ないと思いますが」

「魔法だけで繰り返し戦うのは初めてだからな」

「それもそうですね。分かりました」

ロクサーヌも納得してくれたらしい。

よかった。

二十七階層でボス戦を繰り返す。

しかしこうして改めてボスと戦い続けると、通常の魔物よりボス戦の方が楽な気がするな。

ボスとは部屋の中で戦うから、最初からかなり近づいた状態で戦闘が開始される。

全体攻撃魔法を受けることがほぼない。

通常の魔物の場合は洞窟の端に見つけるから、そこにたどり着くまでに魔法を浴びてしまう。

接近してからでも数が多いと二列めに回った魔物が魔法を放ってくるし。

二十七階層のボス戦なら相手は三匹限定だ。

ボスの物理攻撃は、ロクサーヌが全面的に請け負って避け続ける。

その分ロクサーヌには負担がかかっているはずだが、本人がいいと言うのだからいいのだろう。

セリーは、ボスの魔法を防ぐ役割があるので神経は使うかもしれない。

ミリアとベスタは、負担にあまり違いはない。

魔物の数が限定されることを考えれば、ボス戦の方が楽ということもありうる。

とりわけミリアは大活躍だ。

状態異常耐性ダウンのおかげもあってびしばしと魔物を沈黙させていった。

石化させてしまえば、後はMPに余裕があるなら魔法で倒してもいいし、デュランダルを出して片づけてもいいし、好き放題だ。

ダンジョンウォークで移動できるボス部屋近くの小部屋からボス部屋までの道中、ボス部屋を抜けて二十八階層の入り口近くに魔物がいた場合、また待機部屋に人がいたときの時間つぶしなど、通常の魔物との戦闘も随時行っている。

抜かりはない。

問題があるとすれば、他のパーティーと無接触というわけにはいかないことか。

ハルバーの迷宮を探索中に人と出会うことはまずなかった。

クーラタルの迷宮でも、二十七階層までくればボス部屋へのルートをはずれた洞窟に人がいることは少ない。

ボス部屋近くでは、やはりどうしても人は増える。

今のところ、これもロクサーヌがうまく避けてくれているが。

ロクサーヌ様様だ。

「そろそろ夕方ですね」

「じゃあここまでにするか」

「分かりました」

いつものとおりロクサーヌの正確な生体時計で狩を打ち切る。

腹時計かどうかは知らない。

「ロクサーヌは疲れてないか」

「いえ。いつもと変わりませんが?」

ボス戦の繰り返しで疲れていないかどうか尋ねたら、何故今日に限って、みたいな顔で返された。

「あー。ボス戦ばかりでいつもとはちょっと違ったから」

「お気遣いありがとうございます。特に違いはありません」

ロクサーヌにとっては通常の魔物の攻撃もボスの攻撃も変わりがないようだ。

どっちも楽にかわせるからだろう。

「みんなも大丈夫か?」

「問題ありません」

「はい、です」

「大丈夫だと思います」

他の三人にも聞いてみるが、問題はないようだ。

ロクサーヌ以外は大丈夫だろう。

無理に引っ張る話題でもない。

さっさと家に帰ることにする。

「今日の夕食はハルツ公爵から呼ばれている。一度家に帰ってこの間買った服に着替えてから行こう」

ワープと念じて、黒い壁を出した。

クーラタルの迷宮から家に移動する。

家に帰ると、ルークからのメモが残っていた。

「ご主人様、ルーク氏から伝言です。羊のモンスターカードを落札したそうです」

ロクサーヌが確認する。

羊のモンスターカードか。

「セリー、羊のモンスターカードは何のスキルになる?」

「武器につければ睡眠付与、防具につければ睡眠防御のスキルになります」

「睡眠か」

状態異常系ならミリアの装備品につけるのがいいだろう。

硬直のエストックにつければいい。

「睡眠は比較的かけやすい状態異常だそうです。コボルトのモンスターカードも使って催眠のスキルにするならなおさらでしょう。ただ、攻撃すると解除されてしまいます。最初はロクサーヌさんの剣につけるのがいいと思います」

セリーがアドバイスをくれた。

ロクサーヌの剣につけた方がいいのか。

コボルトのモンスターカードは予備の分もちゃんと手に入れている。

芋虫のモンスターカードも最近二枚入手した。

いつでも売却できるように身代わりのミサンガを作成している。

睡眠は、攻撃を受けると解除されるらしい。

ビープシープに俺が眠らされたときも、攻撃を受けたら目覚めた。

魔物が睡眠状態に陥っても同じことなんだろう。

ミリアが魔物に睡眠を与えても、すぐ解けてしまうなら石化が出るまで攻撃を繰り返すことになる。

石化を狙って再度攻撃するとその攻撃で目覚めてしまうのではしょうがない。

いずれ俺の魔法攻撃で解除されるだろうし。

「魔法では睡眠が解けないというようなことは?」

「ありません」

ですよねー。

魔法では解けないなら石化とほぼ同様になるが、そこまで甘くはないか。

暗殺者のミリアがたくさん睡眠状態に陥らせても、そのたびに自分で目覚めさせるのではほとんど意味がない。

セリーのアドバイスは理路整然としている。

硬直のエストックはすでに複数のスキルがついているから融合したくない、というわけでもないようだ。

ロクサーヌなら、通常の戦闘では魔物二匹を相手にすることもあるから、一匹を睡眠にできれば大きい。

すぐに俺の魔法攻撃で解除されてしまうとしても。

セリーのいうとおり、ロクサーヌの剣につけるのがいいか。

ロッジで何か出物があったときの売却候補と考えてもいいだろう。

「分かった。まあいずれにしても明日だな」

商人ギルドへ行くのは明日にして、今日は公爵のところへ出向く。

コハクのネックレスも用意して、ロクサーヌたちが着替えるのを待った。

眼福眼福。

着替えたらボーデの城に飛ぶ。

公爵のところでの晩餐会は、前回と同様の通常の夕食会だった。

前回と違ってロクサーヌの試合もないし、本当にただの食事会だ。

多少は警戒していたが、変な要求もなさそうか。

最後まで気は抜けないが。

ただし、なにげに公爵とカシアの距離が近い気がする。

さっきは手も握っていた。

くっそ。

見せつけやがって。

「ミチオ殿にはハルバーの迷宮駆除でも助勢たまわった」

食事の終わりに、公爵がワインをたしなみながら改めて謝辞を述べる。

俺はハーブティーだ。

ドワーフ殺しも用意されていたようだが、セリーもハーブティーを選んでいた。

「いえ。こちらもよいところで戦えたので」

ちょうどよい、安全な迷宮で。

公爵のために魔物のいる部屋の掃討が行われていることを公爵が認識しているのかどうかは知らない。

苦労人のゴスラーが裏で手を回しているだけという可能性はある。

「ハルバーでは世話になりました」

ゴスラーが耳ざとく口を挟んできた。

余計なことを言わせないためだろうか。

やっぱり公爵は知らないのか。

「騎士団では、祝勝会などは?」

「そういったものは特には」

ゴスラーに聞くが、否定される。

町をあげての祭りとか祝勝会などはないとセリーも言っていた。

迷宮を倒したパーティーが軽く祝杯を挙げるくらいらしい。

迷宮はいたるところにいるので、一つ二つ倒したところで安全になるわけではない。

公爵領内にだって入り口の開いた迷宮がまだ二つある。

入り口を開けるまで成長していない迷宮はもっとあるだろう。

「余としても当然の義務だからな」

もう一つの理由は、公爵の言うとおり迷宮を倒すのが貴族に課せられた義務だからだ。

税金を徴収し、騎士団を保有するのはすべてそのためである。

領内の迷宮は倒して当然、という感覚らしい。

「なるほど」

「いや、そうか。祝勝会か」

公爵が何か思いついたようだ。

変なことでなければいいが。

「何か?」

「四日後だ。ミチオ殿、四日後にささやかな祝勝会を開きたいと思う」

「閣下、そのようなことは」

ゴスラーが止めようとする。

公爵が意志を込めてはっきりと大きく首を振った。

ゴスラーの制止もむなしいほどの決意らしい。

「ミチオ殿、四日後は泊りがけで来てほしい」

「泊りがけ?」

「もちろん部屋は用意させよう。夕方、少し遅くなってもいい。あまり大げさに騒ぐことでもないので、人には言わず、五人で来てくれればいい」

公爵が熱弁を振るう。

何をするつもりなのか。

まさか呼び出しておいて後ろからバッサリとか。

さすがにそれはないか。

やるなら今やればいいわけだし。

「分かった」

ここまで熱心だと断るのも心苦しい。

誘いには応じておいた。

一応、いろいろと世話にはなっている。

余計なお世話だったりするが。