作品タイトル不明
5 国王陛下、これは正装なんです
サラがすれ違う人の心を読みながら進んでみると、誰もが選民意識が高く、おかしな服装のサラの事を見下している事が分かった。
(こうなると、少なくとも皆が聖女が何か知っていて、必要としてるって訳じゃなさそうだな。皆が知っていれば伝説とか残ってて、ここで見るはずの無い服装の女が王宮を堂々と歩いてたらピンとくるはずじゃない?)
サラのその予想は、騎士の守る謁見の間にたどり着いた時確信に変わった。
サラが到着したと聞いて迎えに来たルーカスが、制服のまま現れたサラを見てひどくうろたえ、心の声を響かせたのだ。
『こんな格好で王宮を歩いてきたのか⁈貴族達に不審を抱かれて素性を詮索される!』
やはり自分達が聖女を召喚したのを発表する気はないんだな、とサラが納得していると、ルーカスはエイヴァを責め始めた。
「なぜ聖女様にドレスを着せなかった!」
激しい口調で責められ、エイヴァは弱々しく抗弁した。
「聖女様が、殿下の用意されたドレスを不服とおっしゃられて…」
「なんだと⁈」
ルーカスに視線を送られたのでサラは事実を答えた。
「だって、あのドレス全部小さかったんです。あのサイズじゃ、私が小学生の頃じゃないと無理よ」へらへらとして見せると、ルーカスの方から大きな感情の塊がほとばしって、サラに迫って来た。
『あれは、わざわざ前の聖女のサイズをイーサンに調べさせて作ったんだぞ。あいつが嘘を教えたのなら、ただじゃおかない。また脅して痛めつけてやる』
自分の失敗を人のせいにした上、物騒な事を考えているルーカスに、サラは教えてあげる事にした。
「ルーカスが、わざわざ前の聖女の事を調べて作ってくれたって聞きました。
でも、その聖女って百年も前の人なんですよね。きっとその人には、あのサイズでピッタリだったんでしょうけど、百年の間に私の世界の人の平均身長は伸びてるの。その中でも私は背が高い方だから、あれじゃ全然丈が足らないんですよ。あと、リボンとかフリルも子ども達は大好きだけど、私くらいの年齢だと、そういうのが特別好きな人以外は付けないです」
サラがニコニコして話すと、ルーカスはグッと言葉を飲み込み、「そうだったんですか。確かに百年も経てば変わる事もありますね」と表情を和らげてみせた。
サラはその上「それにこれは学校の制服なので、日本では正式な場所にも着て行って良い服なんですよ。結婚式やお葬式でも両方着て良いんですから。王様に会うのも大丈夫です」と明るく付け加えた。
ルーカスは「いや、しかし、その服は」とまだモゴモゴと言っていたが、広い謁見の間の向こうに立ってこちらを見ていたレイモンドから「ルーカス。もう陛下が到着される」と声をかけられ、仕方なくサラを玉座の前までエスコートした。
程なくして謁見の間に入って来た国王は、サラの制服姿を見て一瞬絶句したが、さすが王様というべきかすぐに気を取り直し、「私がこのアンジェラ王国の王だ。聖女様、この度は我らの求めに応じてこの地に来て下さり、深く感謝する」と述べた。
サラは(いや、求めとか知らんけど。何で呼んだのかさっさと話して欲しいですわ)と思いつつ、「どういたしまして」とだけ答えた。
国王のこめかみに青筋が立ったので、心を読んでみると『何が聖女だ。おかしな服で恥ずかしげもなく足を出して、小娘が良い気になりおって。このわしに無礼を働いた報いは用が済んだら必ず受けさせる』と息巻いていた。
(うわ。この王様も最悪。考えてることは日本のオヤジとあんま変わんないけど)
「しかし、聖女様にドレスの一枚も用意せんとは。ルーカス、お前の失態か」
王様がルーカスを責め始めたので、サラはもう一度この服について説明した。
「いいえ、王様。ルーカスはちゃんとドレスを用意してくれたんだけど、私には小さくて着られなかったの。でも、安心してください。これは制服って言って、日本では正装だから。どこの場所にも着て行っても良い、素晴らしい服なのよ」
サラはにっこりと笑って見せた。