軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2 おあいこですよね?

気がつくとレイモンドはいつの間にか仲間の所へ戻り、忌々しそうにこちらを見ていたが、目が合うとサラににっこり笑って見せた。

(あの笑顔が胡散臭い。あいつにそっくりだわ)大嫌いな奴の事を思い出していると、もう一人の貴族っぽい男が入れ替わりに近づいて来た。

その男は金髪碧眼で、サラの前に立つと「聖女様。突然こんな形でお呼びしてしまい、驚かれたでしょう。私はこのアンジェラ王国王太子、ルーカス・アンジェラです。あなたをいつまでも、このような冷たい床に座らせておく訳にはまいりません。どうぞ私の手をお取りください。城へご案内します」と、優雅な笑みと共に手を差し出した。

こちらも銀髪緑目レイモンドに負けず劣らずナルシストっぽいな、と思いながら、

サラはその手を取るか悩む振りをして、残り二人の女の様子をうかがった。

ちょうど二人ともこちらを憎々し気に見ていたところだったが、目が合うと張り付けたような笑みを浮かべ取り繕った。

その時、またサラの頭に声が響いてきた。

(ルーカス様に手を差し出されて、まだもったいぶるなんて何様のつもり!)

まだはっきり声を聞いていないので、女のどちらなのか分からないが、視線から考えて紺髪の様だった。もう一人のピンクは、早くも飽きたようにそっぽを向いている。

(あの紺髪はこの王太子が好きなのかな。しかし、小説通りほんとにピンクっているんだ。あの二人感じ悪いから、ちょっとからかってやろうかな)

「私、初対面の男性と手をつなぐなんて嫌です。 女性なら…」

自分でも意味不明だと思いつつ、二人を見ながらサラが言うと、紺髪もピンクも分かり易く目が吊り上がり口元から笑顔が消えた。

「お二人は、私を助けるのは嫌みたいですね…」悲し気な口調で諦めたように目を伏せると、差し出した手を引っ込めたルーカスが「聖女様は恥ずかしがり屋なんだろう。君たちが聖女様に手を貸してやってくれないか」と二人に仕方なさそうに頼んだ。

(なんなんだ、この面倒な女は。後でジャネットとマリアンに埋め合わせをしなければならない)王太子の心の声がして、聖女様を助けるのに埋め合わせって何よ?と、サラは早くもこいつらに手助けしない方法を考えようと決心した。

王太子に頼まれた二人が近づいてきて「聖女様。どうぞ私たちの手にお掴まりください」と渋々手を差し出したところで、サラは「ありがとう!」と笑顔で思い切り二人の手を掴み、勢いよく立ち上がった。

サラを助け起こす意欲のなかった二人は、力の入っていない手をいきなり強い力で引っ張られ、履いている靴がヒールだった事もありバランスを崩した。

そのまま派手に転んだ二人は、サラが召喚された時同様、したたかに身体を床に打ち付ける事になった。

(何するのよ!この女!)口汚く罵る心の声を聞きながら、サラは二人を困ったような顔で見下ろして言った。

「ごめんなさい。助け起こしてくれると思って、しっかり握りすぎちゃったかな…。

私がこの床に叩きつけられた時とても痛かったけど、あなた達は大丈夫ですか。この床、石だから固いですよね。

そうだ、これっておあいこって事で許してくれますか。あ、おあいこって日本の言葉なんですけど、分かります?」

走り寄って二人を助けようとしているレイモンドとルーカス、助けられながらサラを睨みつけてくる女二人を見下ろして、他意の無さを装い謝ってみせるサラの頭の中に、(ざまあみろ)という男の声が聞こえた。

憎しみのこもったその声に気を取られているうち、二人を助け起こして再びサラの前に来たルーカスが「おあいこか、それは聖女様の国の言葉なんだね。私たちの国には似た言葉がないみたいで、うまく理解できなくて残念だ。

それより、さっき床に倒れて痛かったと言っていたが、今は大丈夫かな。

身体を痛めているなら、なおさら女性同士のエスコートは無理だろう。抵抗があるかもしれないが、どうか私の手で我慢してくれ」と再度手を差し出した。

その姿を見ているレイモンドと女二人が、笑顔のまま冷たい目つきをさらに冷たくし、サラも今度は「そうね。ありがとう」とその手を取った。

(最初は情報収集が必要なのに、ちょっとやりすぎちゃったかな)

今まで読んできた小説たちを思い起こしながら、サラは少し反省してエスコートを受け歩き出した。

これからどうするにしても、まずはここの状況や、呼ばれた理由をきちんと知る必要がある。心の声はサラへの罵倒がいっぱいなのに、表面上チヤホヤしているのは、本当に何か必要な事があって自分をこの世界へ呼びつけたのだろう。

今のところこの国の為に何かする気は皆無だが、きちんと事情を把握して自分を守らなければと、サラは思った。